2009年11月13日金曜日

ヘッジファンド(あるいはアナリスト、あるいはファンドマネジャー)でやっていくにはどんな勉強をすれば良いのか?


(出所:http://www.publicdomainpictures.net/
「アナリスト/ファンドマネジャーとして、ヘッジファンドで運用の仕事に携わるには、何を勉強すれば良いですか?金融工学ですか?ファイナンスですか?リアルオプションは出来た方がいいでしょうか?」

こう言う質問も、FAQとしてある質問である。
今日はこの点について少し書いてみたい。


○最初に一言:他人に答えを求める人は、運用の仕事は向いていない。


まず最初に一言言っておくと、こう言う質問を思わずしてしまう学生さんは、そもそも運用者向きではないので、運用業界には入らない方がいいかも知れない。特に、ヘッジファンドでやって行くには厳しい。この点は最初に伝えておきたい。

マーケットは学校の教室ではない。答えは自分で探すしかないし、必ずしも高度な分析をやれば報われる訳でもない(むしろ非常にシンプルで実務的にワークする方法の方が、実践的である)。本当に儲かる手法については誰も論文だの本だのにはせず、個人のノウハウとして、ブラックボックス化されてマーケットで静かに活用される(多くの人が同じ手法を使い始めると、機能しなくなるからである)。このため、大事なノウハウに限って中々表には出て来ないのである。


○勉強に必要な分野:相場で稼ぐために必要となる事なら何でも。


勉強に必要な分野は、マーケットの運用でリターンを上げる、つまり相場で稼ぐために必要となる全てである。

経済学が必要かも知れない。
しかし英米の一流大学で経済学のPh.dを取ったようなエコノミストでも予想はあんまり当たらない。エコノミストがヘッジファンドを始めると往々にして悲惨な結果に終わる事も多い。

数学、統計学を駆使したクオンツの分野が必要かも知れない。
しかしクオンツによる運用も、「結局は高度な方法を用いて、過去のデータにジャストフィットするようカーブフィッティングしてるだけの人も結構多い」ようにも思われ、ある意味袋小路の雰囲気もある。カーブフィットした運用戦略は実際に将来のデータで実運用すると機能しない。じゃあどうやったら儲かるのか?当たり前だがそれに直接答える論文は存在しない。クオンツのヘッジファンドとして恐らく最も儲かっていると思われる米国のルネサンステクノロジー等も、社員でさえアクセス出来る情報が限られていて、ブラックボックスの中核はごく少数の幹部しか知らないようだ。

株をやるなら会計やコーポレートファイナンスが必要?戦略論や経営学、企業分析等を学ぶべき?まあ必要なのは否定しない。
しかしそういう事をしっかり知っているはずの会計士やMBAホルダーを大勢集めて運用している大手運用会社の7割がたがサル以下、つまり市場をアンダーパフォームしている事実がある。そう言う知識はあって当たり前のものであって、運用で勝つための差別化の要素には必ずしもならないのである。

物理学からのアプローチをする研究者も最近増えている。
しかし、対象が宇宙や自然の摂理で、(量子論で観察者が観察対象に影響を与える旨の議論はここではひとまず脇に置いておいて)観察対象が基本的には人間の観察の影響を受けない自然科学と、観察者=参加者でもあり、観察対象を観察する事そのもの、観察対象と観察者(=実験の参加者)の相互作用によってどんどん状況が変化してしまう社会科学とでは、ちょっと根本的に異なる面もあるように思われる。経済物理学等の分野で、「この理論により、マーケットの崩壊タイミングが読めるようになる」等と言っている学者が居るが、事はそんなに単純ではない。皆が「その理論」を用いてリスク管理をし始めたら、その理論が「マーケットが半年後に崩壊する!」等とシグナルが出た瞬間に、半年後でなく今、皆手持ちのポジションを一斉に売却し始めてマーケットは既に崩壊してしまうという事になり、結局機能しない代物になる。と言うか、なぜこの学者は、崩壊タイミングが読める理論を考案したなら、マーケットで利用せずに、論文にして公表しまうのだろうか(注1)。

時にはキャバクラにでも行って、実地でお金がどうやって回っているかの社会勉強も必要かも知れない。
こう言う現実に根ざしたマネーに対する感覚と言うのは、結構重要である。頭でっかち過ぎてもマーケットの仕事をするのは難しい。

メンタル面も重要なので、滝行や座禅も良いかも知れない。学問分野でも行動経済学と言った心理学を取り入れたアプローチもある。

更には、運用は「運を用いる」と言う漢字の体の通り、運が良い事が非常に重要である(注2)から、運気を上げる方法だとか、たまに来る運を掴み取るトレーニングが必要かもしれない(注3)。

言ってみれば、掲題の質問に対しては、「これが儲かると思った分野を各自探して、頑張ってください。ざっついっと」と言う話になる。


○次回以降の予告

・・・しかし、そう言ってしまうと、それはそれで救いが無いかとも思うので、次回以降で、一般論として幾つか、「こうすればある程度の水準までは行くかな」と言う学習方法を、(筆者が書くのに飽きなければ)書いてみようと思う。

(以下、注の解説)

注1:とは言え、経済物理学の知見が役に立たないと言っている訳ではない。効率的市場仮説だのモダンポートフォリオセオリーだの新古典派経済学だのに比べれば格段に相場の現実とフィットしやすい分野でもあるし、興味深い知見が多数発見されている。ここで言いたいのは、そう言った学問分野も、「ただそれを学べば稼ぐために直接使えると言うものではない」と言う事である。こう言った理論面、学問分野面からの知見を、実際稼げるような形に落とし込めるかについては、各人次第だと言う事である。

注2:ナシーム・ニコラス・タレブ著の以下3冊を参照。

ブラックスワン(上)
ブラックスワン(下)
まぐれ

注3:冗談で言っているのではない。

3 件のコメント:

  1. はじめまして。

    来年から日系投資銀行で働く予定の者です。
    Anonymous investorさんの記事を興味深く読ませていただいております。
    当面は株式アナリストとして働き、機会があればヘッジファンドで働きたいと考えていますので、今後も記事を楽しみにしております。
    頑張ってください!

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  2. このコメントは投稿者によって削除されました。

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  3. ありがとうございます。
    来年からのお仕事、ぜひ頑張ってください。
    また時折遊びに来て頂けると幸いです。

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