2009年12月11日金曜日

新卒の面接の作法:お金の事を聞かれたらどう答えるか?

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さて、今回はまた新卒の面接の話に戻ろう。
前回で「マネーは紙切れであり、概念に過ぎない」と言った事を書いたが、実際の所は面接の際に「幾らくらいの年収が欲しいですか?」と言った質問をされた際に迷う学生さんは多いと思う。今回はこの点について書いておきたいと思う。

○日系を受ける場合

この場合は答えは明確である。
そこが証券会社であっても、運用会社であっても、カネをしこたま稼ぎたいとか、40代位で引退したいとか言ってはいけない。会社員として馴染めない人物だと即キミは判断され、まず不採用になるだろう。証券会社/運用会社はマネーと言う「概念」を扱うのが仕事なので、マネーの探究が嫌いでも適性的にどうかとも個人的には思う面もあるのだが、これが現実である。

「御社で鍛錬を積む事でプロフェッショナルとして活躍出来るようになる事が大事なので、お金については特段頓着しておりません。」

と言った、教科書的な内容を答えておこう。


○外資を受ける場合

迷うのが外資系金融機関を受ける場合である。

「カネなんて要らない」と言うのでは、なぜ外資を受けるのかと言う志望動機が弱くなってしまうし、第一ウソを付く事になってしまうだろう。外資を受ける学生さんの過半は、高い年俸を貰いたいと言う下心が心の片隅位には最低限あるからこそ、リーマンショック等が起きてまで外資に行きたいんであろう。自分の心に素直になれないのは良くない。外資系金融マンの場合、教科書的な回答をする学生を「つまんねえなあ」の一言で即落とす面接官も居る。聞いている側からすると、確かに教科書的な回答はつまらないし印象には残らない。

一方で、外資系企業の面接のお作法の書籍など読んでいると、「外資系を受ける際であっても、露骨な金銭交渉は基本的には面接の最中はしてはいけません。金銭面以外で面接先企業に魅力を持った理由や志望動機を語りましょう。年俸交渉は最後の最後、オファーを出す事は決まって細かい条件面を詰める際だけです。」と言ったような教科書的な事も書いてある。

じゃあどっちなんですか、と言う所だろう。

・「ギラギラ系外資金融マン」が出て来たら、「稼ぎたい」と言うべき。

ギラギラした雰囲気があり、いかにも多少品がよろしくなさそうでスケベで女好きそうで、ボーナスと女の事で頭が一杯、と言う感じの、読者が外資系金融マンと言う時まっさきに想像するような典型的な「ギラギラべたべた外資金融マン」が面接官で出て来たら、マネーに対するグリーディーさをアッピールする必要がある(注1)。

「昨今ライフワークバランスとかひよってる事言う風潮がありますが、僕は/私はお金が大好きで、40代にはがっぽり稼いで引退してワイナリーの経営でもしたいんです。休日だろうが常に稼ぐ事に集中して、身を粉にして物理的にもハードワークして、頭に汗もかいてがっぽり稼ぎたいです。」

等と言うべきである。「外資系企業の面接のお作法」的書籍に書いてある、「お金の話は最後までしちゃいけません」なんてマニュアルはクソッくらえである。こう言う発言をするのに気が引ける程度に紳士淑女なかたは、そもそも外資系金融機関、特に米系投資銀行のフロントオフィスには行かない方がいい(外資系証券でも欧州系だとか、あるいは外資でも運用会社だと、もうちょっと紳士淑女でも居場所があるかも知れない)。

・女性や穏やかインテリ系、気の良さそうな面接官、若手が出て来たら、教科書的な回答が概ね無難。

一方で、女性面接官やインテリ系が出て来たら、教科書的な回答が無難だろう。
女性や穏やかインテリ系の場合、「給料高い方が良いに決まってるが、学生のみそらで初対面の人間に対して、”オラオラ稼ぎまくりたいんです”等と言うのでは品性に欠ける。建前でも多少の品性は持っていて欲しい。」と考えている確率が比較的高いと思われるからである。

若手だと、実際睡眠時間も土日も仕事のために公私ともすり減らして疲れており、「オラオラ稼ぎたい」なんて面接対策で口走って外資系投資銀行なんぞで始終仕事をして居る事に内心後悔しているような面接官の事もあり得る。また、稼ぎの少ない面接官に対して「稼ぎたい」等と言うと面接官の心情を逆撫でする可能性もある。


・どう言うタイプか読めない場合は、素直に思う所を話すか、臨機応変に話すかするしかない。

上記のどれにも属さないようなタイプの、キャラの読みづらい面接官の場合は、素直に思う所を話して後はなるに任せるか、臨機応変に話すしかない。

相手により発言を使い分けるなんて何だか姑息だと思われるかもしれないが、外資系投資銀行のフロントオフィスを、素直純朴なだけで生き残るのは結構大変である。外資系はクリーンでフェアだなんてのは、ただの幻想に過ぎない。高い年俸がかかっているだけに、政治争いもどろどろしがちである。

上記のような事を姑息だと思う場合、そこまでしてカネカネ言う事がバカバカしいと思う場合は、そもそも外資系金融のフロントオフィスで働こうとか、将来ヘッジファンドを目指そうとか考えないほうが良いかも知れない。外資系金融業界やヘッジファンドではやって行くのに苦労するかも知れないが、人間としてはそう思うあなたの感性はまっとうで価値のあるものだ。何しろマネーとはただの紙切れである。紙切れ相手に姑息な事もやり、ストレスも溜め、体を壊したり私生活無茶苦茶にしてまで魂を売るなんておかしい、人生の優先順位を間違えているのではないか、と言う考え方は本質を突いている(注2)。

○マネーに対するアグレッシブ度合い

概ね、米系証券>欧州系証券か野村證券>米系運用会社>欧州系運用会社>>一般日系証券/運用会社、とでも言った所であろうか。左に行く程、「ギラギラ外資金融マン」に遭遇する可能性が高くなり、右に行く程教科書的な回答をしておいた方が良い度合いが高くなるだろう。また、入社後に「短期でガツガツ稼いで政治闘争にも勝ち上がらないとクビ」的ないわゆる一般的なイメージでの外資系金融像は、概ね米系証券のカルチャーから来ていると思われる。外資でも、上記の不等号の右の方に行くと、比較的紳士淑女な社員が、ど派手なボーナス等は付かないけれども比較的長期のキャリアで地道にコツコツ働いている(あるいはアグレッシブではないがネチネチぼそぼそと政治活動に勤しむような者も現実としては居る訳だが、その位は金融業界に限らずとも組織には必ず居るものである)、と言う感じに近くなる。

この辺は、カルチャーが合わない所に入社してしまうと相当苦労すると思うので、面接の際に無理をし過ぎない事を個人的には薦める。

新卒の場合関係ないが参考までに述べておくと、ヘッジファンドについては、カルチャーは会社によってかなり異なる。ギラギラ外資金融マン的な所もあれば、修行僧のように運用に打ち込む事を重視している会社もあれば、色々である。

○筆者の場合

参考にはならないと思うが筆者の場合は、

「マネーと言う概念を探究する事は、中々に興味深い作業ですね。」
「フェアにまっとうに日々やれる事に集中して、結果として金銭面でも応分に報われたいですね。」

と言った所である。筆者が仮に今学生だったら(これで内定するかしないかは分からないが)そう答えるだろう。面接官に対する使い分けもしないだろう。筆者はこう言う価値観なのであり、いちいち相手に合わせる義務はない。あちこちで同じ事を言って、採用してくれる所に行くだろう。

観察対象としてのマネーと言う概念は色々な意味で中々に興味深いし、投入する努力に対して結果が出る方が嬉しいのは当然である。お金は汚いものだと言う日本人的な発想はどうかと思う。良きにせよ悪しきにせよ、マネーは中央銀行が刷った単なる概念に過ぎない。マネー自体がきれいだったり汚かったりする訳ではない。ユーザー側の心の持ちよう次第である。

一方で、マネーは人の心の虫眼鏡のような所があり、やましい気持ちを心の片隅に抱えたまま金持ちになりたいと突っ走ると、華やかな面も増える一方で心の隙間もまた拡大膨張される。自己の内面をきちんと直視しないまま、どっぷりマネーの奴隷、金銭的成功ありきになってしまうと健康や私生活面での副作用も強い。マネーとの距離感には結構気を遣うと言うのが正直な所である。


以前に新卒のキャリアステップの所で書いた「1社目は大手の有名所にしておけ」と言った「キャリア面ではずれの少ない戦略」と、上記の筆者のような「個人の考えを通す事を重視する事」をどの辺で折り合いを付けるかは、各人の判断である。

若いうちの3年位は多少自分の考えや間尺に合わなくても修行だと思って「使い分け面接」をして、大手からの採用と言ったキャリア面を優先させるのもまた考え方である。

一方で、ブランド大手から不採用になるリスクをある程度取って「言いたい事を使い分けずに言う」で採用されるようにして最初の3年と言えども企業カルチャーと自身の性格のフィットを重視するのもまた考え方である。これでも案外キャリア的に申し分無い会社からオファーが出る事も運が良くて先方との相性が合えばある。本音で話していて軸がぶれなくてよろしいと言う事で人事決定権のあるシニアに気に入られたりすると、思いがけない所からオファーが出るケースも場合によってはあると言う事である。しかし面接者の価値観によっては軒並み不採用と言う事も勿論ある。その辺はそう言うものだと考えるしかない。


更には、両者の中間程度を取り、ある程度は臨機応変に、さりとて余り露骨に相手によって言う事を全く変えるような事もしない、と言うのもまた考え方だろう。


(以下、注の解説)
注1:リーマンショックのせいなのか、メインの年代がバブル期に大学生あるいは若い社会人だったバブル世代から、株価下落とデフレが当たり前のポストバブル世代にシフトして来ているからなのか分からないが、昨今、こう言う外資金融マンも以前よりは減ったようにも思われる。あの適度に品がなくて、ちょっと適当で、アゲアゲな外資系金融特有のアノ感じは、それはそれで懐かしい気もするのだが。とは言え筆者もポストバブル世代である。

注2:最近逝去されたピーター・バーンスタイン著の以下書籍が興味深い。ゴールド(金)の歴史について書いた歴史の本だが、本の出だしが、船で航海中に遭難して海に飛び込んで逃げる際に、金塊を腰にくくりつけて逃げようとして海の底に沈んでしまった男の話から始まる。そして、最後の締めくくりは、この物語の最も賢明な主人公は、手持ちの金を手放して塩と黙って取り替えたジェンネとトンブクトゥの純真な先住民である、なぜなら塩があれば生活出来るからである、と言う締めくくりで終わる。マネーと言うのはそう言うものなのである。

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