2009年10月31日土曜日

外資か日系か:新卒で金融業界に入るなら?

(出所:http://www.publicdomainpictures.net/view-image.php?picture=enter&image=1817&large=1&jazyk=EN)

さて、前回で、ヘッジファンドに新卒で入ると言う選択肢は少なくとも日本においては殆どなく、まずは証券会社なり運用会社なりでキャリアを積んでから、と言う事を話した。

次に聞かれるのは大体、「では将来ヘッジファンドでやって行く事を考えた時、外資に入った方がいいですか?日系の方がいいですか?」と言った質問なので、この点について答えておこうと思う。実際の所、ベストなキャリアパスは人それぞれ、価値観による。あくまで、「将来的にヘッジファンドで運用の仕事をする事を当面のキャリアゴールにする価値観を持った場合の話」なので、そういう前提で読んで頂ければと思う。

○外資か日系か:日系の方が無難ではある。

新卒入社の場合、一般論としては日系の方が「無難」ではある。

理由は幾つかある。

1、大手であれば教育体制も比較的整っている所が多い。
2、また、入社後イキナリ即戦力になる事も期待されていないため、例えば証券アナリスト等の資格の勉強を仕事の合間にしたり、英語の勉強をしたり、じっくりとスキルアップ出来るようなある程度の猶予期間がある。
3、「入社後1年でいきなりリストラや東京オフィス閉鎖による解雇の憂き目に遭う」と言うような不幸な「将来有望な若者が、流れ弾に当たって討ち死に」的なアクシデントもほぼない。

この辺については、恐らく多くの外資系金融マンやヘッジファンド勤務者が上記のように答えるだろう。

まず1については、外資だと教育体制が整っていない可能性がかなり高いし、先輩や上司も部下に仕事を教えるインセンティブもヒマもないのである。先輩や上司も自分が生き残るのに一杯一杯であるし、後輩を育成しても将来ライバルになるだけと言う面もあるし、あるいは自身も部下もすぐ他社に転職して部下が変わるかも知れないので部下をじっくり育てるインセンティブも湧きづらい、と言う面は否めない。筆者の場合は新卒で外資に入ったが、上司の運がたまたま良かったので助かったが、上司運が悪かった同年代等は苦労していたように思う。たまに外資でも「若者をキチンと育てるのは年配の責務である」とか、「業界の将来を考えても若者が育つのは大事である」とか言う事を考えている上司も居る。しかし、「たまに」「時には」である。セルサイドなら野村等に入ってみっちり教えて貰う、バイサイドでも大手のほうがまともな教育を受けられる可能性は高い。

2についても、外資が最初だとかなり苦労する。特に外資系証券のフロントオフィスだとそうだと思う。きっちり勉強して、地道なスキルの底上げを図る、と言った事をするのが外資に居ると難しい面はある。勤務時間がやたら長い職種も多いし、その日暮らしで稼ぐ事が要求されるような面もある。外資でも運用会社側、バイサイドだと比較的資格取得等には理解がある事も多いが、その際は日本の証券アナリストではなくCFAを最初から受験しろと言う事になるので、英語が苦手なかたは注意が必要である。

3についてはリーマンショックの際のリーマン内定者の内定取り消し等も話題になったが、時折ある事なので注意が必要である。ビジネスが急拡大しているから新卒を採用したかと思ったら、急にマーケットが変わってしまってビジネスが無くなった、と言うような事が外資だと比較的起きやすい。部門別採用なので他部署に回したりしてくれる事も(原則)ない。日系ならこう言う事は殆どない。


ただし、日系の欠点もやはりある。

1、総合職扱いで入社すると、ヘッジファンドのファンドマネジャーに近い職種に就けない可能性がかなりある。
2、ヘッジファンドと言う競争も激しく実力ありきの世界でやって行く適性/耐性を付けるにはユル過ぎる。

1については、結構重要な問題である。ヘッジファンドでやって行きたいと言う事であれば、色んな職種を総合職で回るようでは難しい。マーケット関係の職種を専門的にやれる環境が必要である。逆に言うと、日系大手証券/運用会社で職種別採用で入れるような状況があれば、結構悪くないと思う。

2については、やや感覚的な話なのだが、実際こう言う面はあるように思う。

一部には日系運用会社のファンドマネジャー等でも辣腕の人も居るがそう言う人はやがて外資かヘッジファンドに転職していく事も多い。やはり全体としては、転職してヘッジファンドでアグレッシブに運用する、と言った雰囲気の人よりも、言い方は失礼にはなるが、会社に所属してまったりやっている、と言った人が多いと言う文化はあると思う。

まあ人生のありようは人それぞれだし、別にガツガツ仕事ばかりやってリスク取るのだけが人生じゃないので、まったりやるのが必ずしも悪い事では無いとは思うが、将来ヘッジファンドでやりたいと言うのがゴールであれば若いうちまったりしていてはまずい。

若いうちにゆっくりした文化になれてしまってヘッジファンドに行った場合、そのスピード感やプレッシャーの違い、解雇確率の高さがちょっと刺激が強過ぎるかも知れない。また、金融業界でしっかりやって行こうと思った場合に不可欠な英語力も、日系の会社に居るだけでは中々付かないのも問題である。日系に居るとどうしても「学ばなくてはいけないと思ってはいるんだが忙しくて」と言った感じになってしまう面はある。

そんな訳で、ヘッジファンドで運用者になりたいと言う場合、日系企業に所属するのは、例えば証券アナリスト資格や米国証券アナリスト資格(CFA)を取り、英語を独学あるいは可能であれば社内研修制度や社内留学制度を活用して学び、仕事を覚えるまでにしておく、と言う事になるかと思う。どこかの時点で外資系証券/運用会社に転職して、実力主義や解雇リスクにさらされながら仕事をする感覚に慣れたほうが良いと思う。ちなみに日系からいきなりヘッジファンドでは、刺激と言うかプレッシャーと言うかが、多分強過ぎると思う。

日系に入る場合は、周囲が多少まったりしていても、自分はこうして前に進むんだと言うモチベーションをいかに維持するかがポイントになると思う。

○外資系の善し悪し

外資系の場合、メリットデメリットは概ね日系の逆である。

メリットとしては、、、

・最初から実力主義や解雇リスクにさらされながら仕事をする事に慣れられる。
・部署にもよるが英語が出来ないと非常に肩身が狭いし仕事でも英語を使う事が多いので英語の環境にもすぐ慣れられる。
・2〜3年働けばヘッドハンターから電話が来てヘッジファンドのジュニアアナリスト等の形でヘッジファンド業界に入れる機会もある。

こんな所だろうか。
「流れ弾討ち死にリスク」等を取ってもいいのでヘッジファンド業界に少しでも早く入りたいと言うのであれば、外資系証券や運用会社のフロントオフィスで仕事をすると言うのは、比較的近道だと思う。

また、外資の方が一般的に新卒への教育体制がプアだと言うのは確かにそうだが、最近だと外資系でも大手だと日本に進出してから長く経っていて、かつある程度新卒の受け入れ体制が整っている所もある。景気が良くて比較的余裕のある時であれば、新卒採用された後何ヶ月かニューヨークの本社で集中的に研修を受ける機会がある会社もある。筆者も、景気循環末期に採用されて入社後には不況入りしていたため行き帰りの飛行機がビジネスでなくてエコノミーにされたのがちょっと残念ではあったものの、ニューヨーク郊外で、本社のシニアや大学教授によるAccountingやValuation等の研修を受ける事が出来た。英語も直ぐにビジネスで通じる位にはなった。会社から社費であてがわれた滞在場所は中庭にプール付きの、二人で住むのが丁度良い位の1LDKだった。今考えると何のスキルがある訳でもない学生の分際で、「えーエコノミーなんていやだー」等と不況の解雇局面入りの気配も漂っていたさなかで平気でぶぅぶぅ言っていた自分が恥ずかしいが(今考えると採用取り消しになっていなかっただけでも幸運だった位)、休日に中庭のプールサイドでバフェットやらオニールやらの本を優雅に読んでいた日々が懐かしい。まあ運が良かったと思う(運が良いのは大事である)。

更には、解雇リスクは確かにあるが、大手の一部の投資銀行では、さすがに「新卒採用後に半年や1年で不況のためリストラをする」と言った行為はよろしくないと言う事で、新卒入社後1〜2年位の間は可能な限りはある程度は新卒採用である事を考慮してリストラの対象にはしないように心がけると言った事をしている会社もあるようである。この辺は就職活動をする際によく情報収集を心がけて欲しい。選びようによっては外資も悪くない選択肢になりうる。


外資系に新卒で入るデメリットも、概ね日系のコインの表裏である。上記のように新卒で外資に入る事をフォローするような事を幾ら言っても、全体に教育体制がプアである面は否めない。上司の善し悪しや政治関係によって自らの運命が大きく左右されがちである面もある。好況期に大量採用された新卒学生がその後の不況で流れ弾に当たってしまいリストラの憂き目に遭い志序盤にして討ち死にすると言う不幸な例はやっぱり散見される。

また、入社後比較的間もないうちからアウトプット、結果を求められるようにもなるので、資格の勉強や英語の勉強と言ったような地道なインプットに時間を割く余裕が無い場合も多い。即戦力で仕事しながらスキルを付けて行く、と言う感はある。英語やファイナンスのバックグラウンドが元々ある学生はそれで大丈夫かも知れないが、全く英語も会計もファイナンスもダメですと言う状況で外資に入るとちょっときついかも知れない。新卒で外資系金融業界に入る際は、これらの点についてはリスクとして認識しておいたほうが良いとは言える。

○まとめ

以上をまとめると、ある程度時間をかけて着実にステップアップしたい場合は日系、多少リスクを取っても素早くキャリアアップして20代のうちにヘッジファンド業界に入って活躍したいと言う場合は外資、と言う事になるかと思う。

2009年10月24日土曜日

ヘッジファンドは儲かるのか?

(出所:http://nihongo.istockphoto.com/file_closeup.php?id=3129409&refnum=little_bobek
ヘッジファンドと言うと、非常に儲かり、年収も高く、アグレッシブに稼いでいるような印象がある。
ヘッジファンドに興味のある学生さんも、こう言う面に憧れる所もあるようであるので、まずは「ヘッジファンドって本当に儲かるの?」と言う、FAQの中でも最も多い質問に答えておこうと思う。


○「儲かる事もある」けれども、案外割りに合わないかも知れない

夢を醒ますようで申し訳ないが、実際の所はと言うと、「儲かる事もある」と言ったぐらいだろうか。
ディスプレイのクリック一つでびゅんびゅんトレードして大もうけ、だとか、ファイナンス理論を使ってスマートに大もうけ、と言った具合にそんなに楽なものではない。

細かい計算をした訳ではないが、雰囲気的には、単に年収面でのリスク/リターンを考えると、外資系証券でセールスなりリサーチなりの仕事をするだとか、外資系の伝統的な大手資産運用会社でアナリストでもする方が、リスクが少ない割に年収は安定して高いようにも思う。ベースサラリーもそこそこあるし、解雇されても美しい履歴書を維持している限りは転職先はどこかしらある。

ヘッジファンドだと中々こうはいかない。

外資系ヘッジファンドであれば、大手なら履歴書に書いても美しく、ベースサラリーも比較的高給な事もあるが、そうは言っても実績に大きく左右される。解雇の確率も外資系金融機関に輪をかけて高い。栄枯盛衰も極めて短期間で、2−3年前にはぶいぶい言っていたヘッジファンドが閉鎖とか大量リストラみたいな事になっているのは日常茶飯事である。マイナーなヘッジファンドに入ってしまうと不安定な度合いはさらに高い。

日本で独立しているヘッジファンドの過半は、AUM(Asset under management.運用資産額)の規模が、大きな利益が出るような段階、従業員を高給で雇えるような段階にない。無名ヘッジファンドに就職したは良いが閉鎖や解雇等の憂き目にあった場合、履歴書的にも美しくなくなってしまうし、その後のリカバリーは結構大変である。

実際の所は、「ほんの一部の勝者」が強烈に高い年収を総取りしていて、大多数は「結構やって行くので一杯一杯」な感じだと考えておいた方が良いと思う。

例えばヘッジファンドの年収ランキングを見ると、ジョージ・ソロス他有名なヘッジファンドマネジャーは年収(保有資産ではない、年間の収入)が1billion US$を越えていたりするが、これは自身の資産(ソロスなら保有資産自体が10Billion US$、1兆円以上はある)を自身のヘッジファンドに投資していて、ヘッジファンドで年率10%とか20%のリターンを上げているのでこう言う年収になる、と言う事である。こんな同業者は業界内でほんの、ほんのごくごく一部に過ぎない。

また日本人では、何年か前にタワー投資顧問の清原氏が「100億円部長」として有名になったが、こう言う事もごくごくまれで、業界のほんの一部、ほんの一時期に過ぎない。

大多数の人々は、「リスクの割にさほどでもないサラリーで何とかやっている」「ヘッジファンドで独立したり、独立したてのヘッジファンドにジョインしたは良いが中々軌道に乗らず、閉鎖の憂き目に遭う事も多い」と言うのが実情である。この辺の事情は、以下の書籍が参考になると思う。

ヘッジホッグ―アブない金融錬金術師たち (単行本)
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%98%E3%83%83%E3%82%B8%E3%83%9B%E3%83%83%E3%82%B0%E2%80%95%E3%82%A2%E3%83%96%E3%81%AA%E3%81%84%E9%87%91%E8%9E%8D%E9%8C%AC%E9%87%91%E8%A1%93%E5%B8%AB%E3%81%9F%E3%81%A1-%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%B3-%E3%83%93%E3%83%83%E3%82%B0%E3%82%B9/dp/4532352401/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1256408322&sr=1-1


○ヘッジファンドの魅力

それでもヘッジファンドになぜ居るかと言えば、筆者の場合は、「運用の仕事がなんだかだ言って結構好きだから」「社内政治等の面倒に煩わされず、フレキシブルに運用する事に集中したいから」と言う感じである。

詳細は以下の本を参考にして欲しいが、大手の運用会社に居ると、理想的な運用とは程遠い面倒さ、サラリーマン運用の悲哀と言うのがやっぱりあるものである。

僕はこうやって11回転職に成功した (単行本)
http://www.amazon.co.jp/%E5%83%95%E3%81%AF%E3%81%93%E3%81%86%E3%82%84%E3%81%A3%E3%81%A611%E5%9B%9E%E8%BB%A2%E8%81%B7%E3%81%AB%E6%88%90%E5%8A%9F%E3%81%97%E3%81%9F-%E5%B1%B1%E5%B4%8E-%E5%85%83/dp/416358580X

こう言う面倒から離れ、純粋に運用、投資、トレーディングに打ち込みたい、と言う事を追求していくと、ヘッジファンドに行き着く、と言う面はあるように思う(注)。

そんな訳で、学生の皆さんとしては、どのみち日本のヘッジファンド業界の状況では、新卒でヘッジファンドに入ると言う選択肢は無い(注)と言う事もあるし、ヘッジファンド業界に入る前に、まず一般の証券会社、運用会社に入ってみてから、本当にヘッジファンドでやって行くのが良いのかどうかを考えてみて頂ければと思う。ヘッジファンドに入るのはそれからでも全く遅くはないと思う。

注:そうは言っても、ヘッジファンドでも大手になってしまうと社内政治対応とかの面倒もある。2009年現在では東京からは撤退してしまったが、本社がシカゴにある大手ヘッジファンドCの東京法人辺りは「高年俸だがその辺の面倒がある事で有名」だった。

注:米国では10Billion US$(日本円で概ね1兆円)以上の額を運用する規模の大きいヘッジファンドもあり、そう言った大手のヘッジファンドだと、最近は新卒を雇っている所もあるようである。しかし日本ではそこまでの規模のヘッジファンドはないし、規模の大きくない所は新卒の育成等をしている余裕は全くない。このため、新卒採用はないと言うのが現実の所と言える。

2009年10月23日金曜日

ヘッジファンドに就職する方法

学生さんや同業者から、ヘッジファンドの運用者、ヘッジファンドマネジャーになるためにはどうすれば良いかと言う質問を受ける事が時折あるので、まずはこの点について少し書いてみようと思う。

まずは大学生、大学院生等のかたにヘッジファンドに入るにはどうすれば良いかと聞かれる事が多いので、学生向けに幾らか書いてみたいと思う。

実際の所、ヘッジファンドの運用者に、新卒学生がいきなりなれるものではないし、証券業界や運用業界に身を置いていても未経験者がいきなりなれるものではない。幸運な出会い等の運の要素もかなりある。筆者についても、実際の所は結構「成り行きとご縁」で今に至る面が多々ある。この点は最初に断っておきたい。

学生さんがヘッジファンド業界に入る一番の近道は、外資系の金融機関のマーケット関係の職種に就いて、何年か働く、と言った所だろうかと思う。実際、ヘッジファンド業界に居る人はそう言う人が多い。

そうは言っても、じゃあ日系金融機関はどうなのか、職種はどういった職種が良いのか、必要な勉強分野等はあるのか、ヘッジファンドって儲かるの?と言った疑問があるだろうしFAQとしてはこんな所だと思うので、筆者が書くのに飽きなければ、以後解説してみようかと思う。