2009年12月28日月曜日

内定後のトレーニング:何から始めれば良いのか?

(出所:http://www.istockphoto.com/




次は、内定後に行う「運用者を目指すトレーニング」について紹介したい。
費用対効果の高い順から紹介する。


○英語の勉強

先のブログでも書いたかも知れないが、金融業界、まずは英語。これが一番費用対効果も高く、手っ取り早い。
ジョブマーケットで定期的に人が切ったり採用されたり転職したりしていて流動性がある程度あるポジションは、殆ど外資だからである。つまり、英語が出来ないとヘッドハンターに連絡しても選択肢は極めて狭くなると言う事である。

英語だけ出来れば良いと言う訳ではないが、英語が出来るだけで、転職の機会はかなり広がり、ファイヤー(解雇)されました!と言う時もどこかしら仕事にありついて業界に踏みとどまれる可能性も高まり、従って運用者になれる可能性も高まる。

英語の勉強法まで細かく書いてしまうと長くなるので、詳細は割愛する。
以下書籍辺りを参考にして欲しい。


基本的には、日本人の場合読むのと文法は問題無いと思うので、聞くのと喋るのと書くのを鍛えればいい。上記書籍に書いてある通り、日常会話からでなく、ビジネス関連、特に内定後であれば金融関係のトピックや語彙に絞るのがポイントである。後は英語で幾つかのトピックについてスクリプトを書いて、自分の口を使って朗読する、それをボイスレコーダに撮っておいて聞く、と言うのを繰り返すと比較的上達は早いように思う。仕事で使う語彙や言い回しはそう多くない。

後は内定先の人事に相談して、研修制度、人材開発制度等を利用して、出来る限り会社負担で語学学校に通う費用等を出して貰うのが良いだろう。日系企業で、最初の配属で英語を必ずしも使わないような職種であっても、「金融業界は今やグローバルでありますから、英語は必須だと思うのであります!」等と適当に理由を付けて相談すれば、積極的だと言う評価にこそなれ、損する事は殆どないだろう。


○証券アナリスト資格、あるいは米国証券アナリスト資格(CFA)

「どの分野を勉強すればいいですか?」

と学生さんやジュニアのポジションのかたに聞かれた時には、大体は

「証券アナリスト資格か、CFAの勉強をするのが良いのではないかと思います。」

と答えるようにしている。
別にこう言う資格を持っていれば稼げると言う訳では断じてないのだが、プロフェッショナルとして必要な知識について、一通りの分野について適度にまとまっている。

大学や大学院で学ぶ内容は、昨今日本の大学も徐々に実務寄りになって来ている雰囲気も感じるものの、やはり日本の大学教育の現状では実務家になるには適切でないと感じる事はある。日本の場合実務の世界と大学の交流が余り盛んでないため、実務家をした事のない学者だと、どうしてもそう言う事になりやすい傾向はあるように思う。大して難しくない内容が妙に小難しく教えられているとか、実務の世界では重要な事が大学では「学問として美しくない」と言う理由で遠ざけられている、と言う面もあるようにも思う。また、学習内容のボリューム的にも絶対的に不足している感もある。

一方で実務だけで学ぶと、例えば株のアナリストだと企業分析だけに偏ってしまい、債券/金利やマクロ経済、統計等が全く分からない、と言う事になりがちであるが、証アナ試験もやっておくとこう言う事を防げる。運用をする段階になると企業分析の知識だけだと追いつかなくなるが、そう言う事態をある程度防げる。

また、教科書レベルの大した事ないアイデアを思いついた際に、これはコンセンサスレベルだと理解する事が出来るようになる。何か投資戦略等思いついた際に、俺って凄いとか一瞬思ってしまうものだが、過半は先人が既に教科書や論文にしていたりするものである。そこで俺って凄いと勘違いしないで済むようになる、と言う効果はある気がする。芸術にせよ何の分野にせよ、先人の知識の集積に対して、自らの発想など過半は無力なものである。先人の知識の集積に、ほんのちょっと自分なりのテイストを加える、と言う感じになろう。

もうちょっと現実的な話をすると、株のアナリスト等だと証券アナリスト資格が応募要件で必須の事も結構あるため、解雇された際等には幾ばくかのJob Securityにもなる。バイサイドだと特に、実務経験がかなり長いシニアでさえ、証券アナリスト資格がないと機械的に応募要件から外される事もあるそうで、たかが資格、されど資格で案外侮れない。

英語がある程度出来るかたは日本の証券アナリストのほうは省略して、CFAを受けてしまうのが早いだろう。海外でも通用するし、全体に日本の証券アナリスト資格より評価が高い印象を受ける。習得分野も日本の証券アナリスト資格よりもトピックが新しくバランスが取れている印象を受ける。グローバルマクロのファンドマネジャー等でも、CFA資格を推奨している者も居る。テキストも英語だと曖昧な表現が少なくストレートで、具体例も豊富なため、日本語ベースだと難度が高く感じやすい分野(統計、会計、デリバティブ等)も案外分かりやすい。金融/ファイナンス英語の勉強にもなる。ただし3次試験まであり、外人のネイティブが受けても全て合格するのに平均3−4年、日本人の場合4−5年程度かかる試験なので、覚悟は必要である。英語が全然だめのかたは、まずは日本の証券アナリスト資格を取得しておくのが良いだろう。日本で仕事するのであればそれで足りると言う面もある。試験も2次までであり、CFAよりは負担も少ない。

学生さんの内定者で時間のあるかたは、証券アナリストかCFAの1次試験の勉強を始めてしまうのは手だろう。社会人になって仕事をしながら勉強するのは、結構な負担である。


○投資/トレード関連の読書

マーケットの仕事をするとなると、まず最初にお勧めするのは、以下両者を読み比べる事である。筆者が最初に内定を貰った時、確か誰か外人のシニアがこれをする事を勧めてくれたように記憶している。


前者は「投資/トレードはスポーツや格闘技と同じで、鍛えれば上手くなるしアクティブにやって一貫して勝てるようになる」と言う考え方を代表している。

後者は、「マーケットに一貫して勝つ事は無理、あるいは少なくとも極めて困難である。インデックスファンドに投資しておけば、7割がたのファンドマネジャーに勝てる」と言う考え方を代表している。

どちらも一面の真理と言うかコインの表裏のように思うし、何より上記書籍位の知識前提が無いと、シニアや先輩、同僚と仕事の会話が成立しないようにも思う。

マーケットの魔術師は、以下の通り幾つか姉妹版がある。ジャック・シュワッガーがインタビュアーのものはどれも素晴らしい出来で、かなりの年数が経っている現在でも読み返せば含蓄がある。


その他、ブログで紹介した書籍は、右脇の参考書籍一覧の所に一覧にしてあるので、こちらも興味に応じて参照頂ければ幸いである。

さて、新卒面接対策編は、筆者が段々ネタ切れにもなり、飽きて来たので一休みしたい(質問がある方は、別途自己紹介欄にあるgmailにe-mail頂ければ、必ずとの保証は出来ませんが、可能な範囲でブログ上かメールで回答出来るようにしたいと思います)。

2009年12月22日火曜日

新卒面接のその他のTips

(出所:http://www.istockphoto.com/


今日は、今まで挙げた以外での新卒面接の幾つかのTipを紹介しておく。


○確率論の知識をテストされた場合はどうするか。
例えば、「競馬場に行きました。どう言うベットの仕方をすれば儲かると思いますか」「3つの箱があり、どれか一つに1万円が入っていますが外からは見えません。あなたが一番左の箱を選んだ所、司会者が一番右の箱を開けてこの箱には1万円が入って居ない事を示し、今から真ん中の箱に選び直す事も出来ると言いました。司会者はどの箱に1万円が入っているか知っています。あなたはどうしますか?」と言ったようなギャンブルや確率についての質問をして来る場合が、部署や面接官によってはありうる。クオンツやトレーディングの仕事だと特に、基本的な統計の素養は重要なので、しばしばこう言う質問が出されるのである。
前者については、「レースの序盤戦では穴馬にベットして勝ったら大数の法則が効いてしまう前に賭けるのをやめて勝ち逃げを狙います。最終レースでは皆穴馬に賭けて一発逆転を狙うためオッズが不利になると思うので、私は本命に賭けます。」と言った回答が取り敢えずは合格点だろう(ギャンブルと統計の世界は研究すると非常に奥深いので、もっと深い回答が出来るかたはより印象に残るとは思う)。競馬の期待リターンは概ね−25%程度であると言われている事、従って賭け回数を多くして行くと大数の法則により確実に損する方向に向かう事、最終レースは皆一発狙いに行くので穴馬のオッズが不利になりやすい一方で本命のオッズが有利になりやすいと言う考え方が出来るのではないかと言う事、この位を知っていれば良いかと思う。
後者についてはベイズ統計の基本的な知識で「真ん中の箱を選ぶ方が1万円が入っている確率が2/3で高いので、真ん中に変えます。」と言った回答をすれば合格点である。トレードをやる上では、情報が入って来る事でオッズが変わって来る、と言う思考は重要である。詳細を知りたい方は以下を参照して欲しい。
しかし一般的には、普通の学生がこの手の質問がどんな物が出て来ても即座に答えられるようにする、と言うのは中々に難しいものがある。分からない場合は素直に「現状分からないが、内定したら統計の素養をもっと付けるようにします」等と言って流すのが無難と思う。それで採用されないのであれば仕方無いと割り切るしかない(注1)。


○経済学、会計、デリバティブ等の専門的な質問をされたらどうすれば良いか?
これも先の確率論の場合と同様、分からないなら「分からないが、内定したら時間も十分取れるので勉強します。実務家の観点からも分かりやすくて参考になる書籍等あれば教えて貰えると助かります。」位で流してしまい次の質問に移って貰う事を期待する、と言う形で十分である。うろ覚えで間違った返答をしてしまった際の気まずさと比べるとよっぽどましである。
また、志望動機や自己PRで「金融工学専攻で〜」「投資サークルで運用を〜」と言った「御法度回答」をしてしまうと、面接官は学生の「専攻の本気度」「運用の本気度」がどの程度かを試すために、金融や確率について多少専門的な質問をして来ると言う流れになる事が多い。そう言う意味でも、「金融工学専攻で〜」「投資サークルで〜」等と志望者の学生の側から言うのは、本当に深く専攻していない限りは不利なのである。面接官はこの手の「相手の知識量を測る質問」は幾つか持ちネタとして持っている場合が多いし、大体は面接官の知識の多い分野から質問してくる。結果として、学生側が圧倒的に不利になってしまうのである。金融面の知識が不確かな場合、そもそも金融の専門的な話題を学生の側からあまりふらない事も重要である。


いきなりBloombergの株価チャートを見せられて、今後市場はどうなると思うか?と聞かれたらどうすれば良いか。


こう言う事も面接の中で時折あるが、これは質問する側も答えを知り得ない話なので、当たるかどうかは殆ど問題とはならない。上がるか下がるか、どた勘でも構わないので理由を思い浮かべやすいほうの結論を先に述べて、思いつく範囲で2、3の理由を説明出来ればいい。面接官は学生に対して、卓越した金融知識を基にしたプロフェッショナルな解説など求めては居ない。多少シロウト臭い説明でも構わないので、結論を最初に述べて、理由をある程度ロジカルに、自信を持った態度で述べられれば十分である。プロフェッショナルのエコノミストだってアナリストだって、皆自信満々に見通しをプレゼンテーションしては外していて、ファンドマネジャーだって儲かると思って色々Betしては損切りしているのだ。当たりそうにないからと言って萎縮する事はない。


○その他、分からない事を聞かれた場合どう対応するか。
一番重要なのは、最初に回答である「その点については分かりません。」と言ってしまう事である。学生さんで良くあるのが、分からないと言う事を隠そうとするために視点のズレた事を延々喋って、でも質問に対する答えになっていない、と言うケースである。これは歯切れが悪いので避けた方がいい。知的能力の面でも疑われるし、無知を認めず何とかごまかそうとする辺りの態度から、人生に対するスタンスも歯切れが悪い人なのかなと判断されるリスクもある。
「分かりません。」と結論を最初に言ってしまった上で、「多少質問内容からは話がずれるかも知れませんが、質問の内容と似たような経験としては過去○○のような事をした事があり、その時には△△のような結果で、××のように感じました。」「今は分かりませんが、内定後には時間があるのでキャッチアップしておきます。」と言った補足を入れる、と言うのがスマートだろう。
社会人になっても、顧客に分からない事を不意打ちで聞かれる事はある。そう言う場合に曖昧な理解/知識で論点のずれた話を延々してしまうより、「分かりません。持ち帰ってメールで折り返します。」とぱっと言える方がスマートである。分からない事を聞かれた場合は、そう言った事の前試験だと考えておくと良いだろう。

こんな所だろうか。就職活動も佳境と思いますが、読者の皆様の就職活動が素晴らしいものになる事を心より祈念します。

(注の解説)
(注1)興味のあるかたは、以下の書籍辺りが簡単に書いていて良いだろう。ブラックジャックのカウンティングのやり方等、金融マンの雑学として知っておいて良かろうと思う。
また、以下の書籍には、マーチンゲールの解説等が入っていて分かりやすい。
98年に破綻したヘッジファンド、LTCMのジョン・メリウェザー等はまさにマルチンゲールを地で行く感じだったと思う。無限に倍々の勝負が出来ればいつか勝てるが、弾が切れたらアウトである。中々Relative Valueのアービトラージは難しい。
その他、正規分布の概念を、パチンコの上から落ちて行く玉で表現する等、統計についての感覚的な理解を促してくれる以下も分かりやすい。
その他、期待リターンが極めて低い宝くじをなぜ皆買うのか、競馬の最終レースではそれまでカネをスッて来た多くの人がなぜ穴馬にベットしがちなのかと、オプションボラティリティのスマイル現象は基本的には、同様の心理的性質から来る。掛け金が極めて少額で、儲かると一発がでかいような勝負には、人間価値を感じるものだと言う事である。身の回りにある出来事を、こう言った形で金融と結びつけて考える癖を付けるのは良いと思う。
ちなみに、重ねて繰り返すが、上記書籍の知識位で「金融工学専攻で〜」等と言ってはいけない。筆者のやっている事は、金融業界で恐らく最もアナログな事である(企業に取材して、この経営者は何となく胡散臭いとか、信用出来るから投資出来るとか、そう言う事)。そう言う人間でも上記位は知っている、と言う事を知った上で面接にのぞむのがポイントである。

2009年12月20日日曜日

バイサイドとセルサイドの違いについて


(出所:http://www.istockphoto.com/

学生さんに良く聞かれる項目として、題名の件について書いていなかったので、この機会に書いておく。筆者の出身が株なので、主に株のアナリストと言う観点から書く事にする。


○ セルサイド(証券会社)アナリストの仕事

まず、セルサイドと言うのはいわゆる投資銀行、証券会社と言った、「株や債券を売る側」の事を指すと言う点は押さえておきたい。投資銀行部門は事業会社の株や債券の発行をアレンジして投資家側に販売するのが仕事。マーケット関連部門は投資家の株の売買を仲介するのが仕事である。


株のアナリストと言う観点で言うと、セルサイドアナリストの仕事は、調査に基づいてマーケット動向や個別企業の株価についての予想を行う事と、それをレポートやプレゼンテーションにまとめて顧客であるバイサイドの投資家(運用会社。〜投信、〜投資顧問と名の付いた会社やヘッジファンド等)に説明する事である。過去の日経金融新聞、今の日経ヴェリタスのアナリストランキングと言うのは、セルサイドアナリストのランキングである。新聞や時には経済関連のテレビ番組等への露出も比較的多いと言える。労働時間もかなり長く、深夜や週末を使って仕事をしているケースも比較的多い。


従って必要な適性としては、調査を行う事やレポートを執筆する事が好きである事と、プレゼン等で人に分かり易く説明する事が得意かつ好きである事、接客業的側面も強いので営業マインドがある事、長時間労働を厭わない事、等である。


その他、自らが執筆したレポートは取材先の事業会社や一般の人の目にも入る事になるので、これらに対する気遣いも重要である。質の低い企業だなと感じても、その通りにレポートを執筆してしまうと、例えば社内でその事業会社に営業をかけている投資銀行部門から「営業がやりづらくなる」と言ったバッシングを受けたり、(最近は売りレーティングだから出禁になると言うほど理解のない事業会社も減ったとは思うが)事業会社から出入り禁止になる、あるいはIR対応が貧弱になる等の悪影響を被る事になる。各利害関係者に対する気遣いも重要となる。


年俸としては、全体としてみればバイサイドのアナリストよりもセルサイドのアナリストの方が良いと思う。一方で、労働時間の長さやアナリストランキングで上位に入らないといけないと言うプレッシャーで換算すると、その給与増分が果たしてペイしているのかは微妙な面もあるかも知れない。


2000年代の前半に、コンプライアンスが厳しくなり、アナリストが投資銀行部門のディールに関与する事で年収を稼げなくなって以降、セルサイドアナリストのメシの種は機関投資家の売買による仲介手数料のみであり、個人投資家の分野でネット証券が台頭しているのと同様、機関投資家の株式売買手数料も価格破壊が進行している。この結果、セルサイドアナリストの給与ソースも減少傾向にあり、専門家としてのアナリストの対価をどのような形で担保するのかと言うのは業界としての問題となっている。


その他のトピックとしては、「調査の短期主義化」と言った問題も起きている点は押さえておきたい。

つまり、以前のアナリストは、産業構造、技術動向等を丁寧に調べて行って、産業や企業の中長期的な動向を調べるのが仕事であった。これは顧客が時にM&Aや資金調達をアレンジする投資銀行部門とその顧客である事業会社だったり、あるいは中長期投資の大手機関投資家が多かったと言う点が背景にある。ナイーブな学生さんが憧れるアナリスト像はこう言ったアナリストのようにも思う。

一方で昨今の現実においては、証券会社のマーケット関連部署の主な顧客がヘッジファンドであり、彼らの多くは短期売買を高速回転で行う事が多い(従って手数料も多く落とす傾向にある訳である)。このため、非常に短期の見通しを顧客から問われる事となり、レポートの内容も次の四半期業績と言った短期的な業績動向、細かいトピック等が中心になりがちである(注)。

また、大手の機関投資家についても昔はバイサイドアナリストと言う職種が日本になかったためセルサイドアナリストの役割は非常に大きかったが、昨今だとバイサイドアナリスト側が産業構造等の基本的な事柄は既にある程度押さえており、やはり枝葉末節や統計アップデートの役割をセルサイドアナリストが負う事になっていると言う面がある。

事業会社側でIRが充実する事で、セルサイドアナリストの中抜きも起きている。つまり、バイサイドからすると、セルサイドアナリストに聞くよりも事業会社に直接取材してしまった方が状況の理解を手っ取り早く出来る、と言う面があると言う事である。マーケットシェア、競合状況、最近のトピック等、昨今事業会社のIRに聞いてしまえば丁寧に教えて貰える。


以上を全体的に考えると、90年代は花形の職業であったセルサイドアナリストも、昨今その付加価値をどこに求めるかが問われている段階にあると言える。


学生のキャリアとしてのセルサイドは、最近中々大変かもしれない。以下のような傾向があるからである。

1、外資の場合ジュニアの若手は短期使い捨てに近い傾向がある。中々自分のレポートが書ける段階まで行かずに2年位で景気が悪くなると解雇、と言う事も多い。

2、日系の場合、使い捨てにはならないだろうが中々自分のレポートが書ける段階まで行かず、キャリアステップが非常にゆっくりで長くなる。その割に長時間労働・ハードワークが必要。

3、外資、日系問わず、若手には参入障壁が高い。特に重要度の高い業種(テクノロジー、自動車等)ほど、既にアナリストランキングの上位を、経験も長く知名度も高いシニアが寡占している。このため、この中で若手が自分なりの持ち味を出してランキング上位に食い込もうと思うと非常に大変である。

4、これも外資、日系問わずだが、上司となるアナリストとの相性の問題が非常に大きい。アナリストと言う職種は、若手を教育するとかチームをモチベートするとか言った適性が少ない人物がシニアになっているケースもかなり多いので、気難しい上司が付くと非常に苦労する。


筆者の個人的な考えとしては、名前を売る、ブランド大手でセルサイドアナリストと言うハードな仕事をやったと言う実績を作ると言う事で、キャリアの一時期セルサイドを経験するのは良いと思う一方で、今からセルサイドに本格参入しようとは、正直な所あまり思わない。


○バイサイドとは

一方で、バイサイドとは、〜投信、〜投資顧問、〜信託銀行、〜保険、ヘッジファンド等、最終投資家である年金基金、大学基金、富裕層個人、保険会社の場合保険の加入者等からお金を受託して運用する側の事を言う。


従ってバイサイドアナリストの仕事は、最終顧客の満足度向上のために運用パフォーマンスに貢献する事であり、ファンドマネジャーについては運用パフォーマンスを上げる事が主な業務となる。


勿論運用会社にも顧客は居るためプレゼンテーションや説明が必要な面もあり、顧客対応の質と言うのも顧客満足に関わる面もあるのでこれら作業もおざなりにして良いと言う訳ではないが、基本的にはパフォーマンスの善し悪しありきである。パフォーマンスさえ良ければ何を説明しようが説明が下手であろうが顧客からは満足されるし、パフォーマンスが悪ければ幾らプレゼンや説明が上手くても厳しい目を顧客から向けられる。こう言う面はやはりある。


外部にレポート等を公表する事は無いので各種利害関係者に対する気遣いはセルサイドよりは気にしないで済む一方で、どんなに理にかなった分析をしても運用パフォーマンスが悪ければ評価されづらいと言う難しさも伴う。コンサル出身者がアナリストをやる場合、バイサイドに来るとこの点で苦労しているケースが多い(そう言う意味では、コンサル出身者はセルサイドのほうがプレゼンスキル等も活用出来るし、やりやすいかも知れない)。


その意味では、セルサイドと比べて、「いかに運用パフォーマンスを管理するか」「損失をいかに小さくしながら、リターンのアップサイドを狙うか」と言う運用パフォーマンスの管理に関する重要性が増して来る事になる。これに付随して、確率統計に関するセンス、相場の上下に対して精神的にブレずに冷静に損切りや利食いを行う能力等が重要になる。業績予想に関しては、アナリストであれば一応行う事になるが、筆者の実感としては、業績予想の正しさそのものよりも、運用パフォーマンスをいかに出すかと言う方が重要である。


労働時間については、概してバイサイドの方がセルサイドよりは短い。セルサイドの作成したレポートや各種統計、基本データ等を活用しながら最後の判断の所をするのが仕事である事、レポートやプレゼン等のアウトプットについてはセルサイドよりも大概の会社では簡素なもので構わない事が背景にあるかと思われる。睡眠不足や疲労が溜まった状態で大事な判断をするのは必ずしも良いとは言えない面もある。


一方で、運用パフォーマンスに対するプレッシャーやストレスは(特にアグレッシブ系外資運用会社やヘッジファンドのファンドマネジャーだと)非常に厳しく、言ってみればこの点のストレスを請け負う代わりに最終投資家である年金基金や大学基金、富裕層個人等からフィーを頂いている、と言う面がある。とは言え、大手運用会社のバイサイドアナリストだと、パフォーマンスに対する責任の所在がファンドマネジャーとアナリストの間で曖昧だったりする事も多く、やや信賞必罰の面が甘いなと思える面もある。


年収については、一般的な大手運用会社のバイサイドアナリストの場合、セルサイドアナリストよりはやや安くなるのが通例である。ヘッジファンドの場合、ピンキリなので比較はしづらい。

筆者がバイサイド出身なので多少のひいきも入っているかもしれないが、比較的長期で無理のないキャリア構築をしたい学生さん、最終的なゴールが運用者で在る事がはっきりしている学生さんについては、大手運用会社のバイサイドアナリストは比較的お勧め出来るステップではある。利点は以下。

1、セルサイドのリソースを大量に活用出来るため、セルサイドから色々学ぶ事が出来る。
2、悪く言えば「信賞必罰の面がやや甘い」面もあるが、良く言えばではセルサイドよりは「使い捨て感」が少なく「資格取得等のキャリア序盤における知識面のビルドアップを着実に出来る」ようにも思う(あくまで相対比較の話であるし、外資と日系、あるいは外資内でもカルチャーによりだいぶ異なるが)。
3、就職の間口も日系、外資合わせてもメジャー所が10数社、新卒を雇って居る所となると恐らくもっと少数しかないセルサイドと比べると広いと言う面もある。

とは言え、バイサイドも、セルサイド同様の欠点は、以下の通り幾らかある。

1、シニアが上にびっしり居て、新規参入がしづらい(アナリストの参入障壁はそう高くないように思うが、ファンドマネジャーになる参入障壁が非常に高いように感じられる)。
2、上司がプレーヤーとしては良くてもマネジメントとしては良くないと言う場合が結構あり、上司によって自らの成長や進退がかなり左右される面がある。

まあ、何でも理想の職場と言うのは中々無い、と言う事かも知れない。

○まとめ

以上、同じアナリストと言ってもバイサイドとセルサイドでは求められる能力がかなり異なる。セルサイドアナリストでランキングトップレベルのアナリストがヘッジファンド等に転職しても、必ずしも機能しない事が往々にしてあるのは、セルサイドとバイサイドが見た目似ているが、実際には求められる能力がかなり違うからである。

例えば新卒の学生のかたがこの業界に入って来るエントリーとしてはセルサイドアナリストでもバイサイドアナリストでもどちらでも良いと思うが、ある程度の期間(3−5年位)が経ったら、自分は最終的にどの道で大成したいのかを真剣に考える事をお勧めする。アナリストとしてシニアになり極めたいのであればセルサイドアナリストとして仕事をする事になるし、運用者/ファンドマネジャーになりたいのであれば、どこかの時点(比較的早い時点)でバイサイドに移る必要があるように思う。


(以下、注の解説)

注:筆者についても、結果として長期投資になっているような投資対象はあるにはあるが、短期的なリターンが求められるヘッジファンドの運用において、中長期的な業界構造の変化や業界再編と言った気の長いトピックで勝負するのは中々大変である事は実感している。長期的には明らかに衰退にあると思われる産業でも、ショートしっ放しでは思わぬ所で買い戻しラッシュに遭って損失を被る面もある。長期的には明らかに有望な業種や企業でも、ロングしっぱなしでは短期的には運用パフォーマンスが冴えない事もある。

筆者はヘッジファンドではない一般の運用会社に在籍していた事もあったが、この頃でもやはり中々長期のタイムホライゾンで勝負をするのは難しかった。長期の前に短期/中期のパフォーマンスの不調で顧客に短期で解約されてしまえばおしまいだからである。感覚として、長期投資を謡う大手運用会社でも、四半期パフォーマンスでも採点されるし、かなり忍耐強く我慢してくれる顧客でも3年パフォーマンスが冴えなければまず解約である。3年間冴えない運用者が、長期投資でありこれから大きなパフォーマンスが出る直前なのか、単に運用者がプロでなく冴えないだけなのかを判別するのは難しい。

そんな訳で、「超長期の時間軸のバリューギャップを埋める仕事」は、ウォーレンバフェットのバークシャーハサウェイのような、手許にキャッシュを潤沢に持ち保険事業からの長期の資金流入があり解約等の問題が無い運用主体、あるいは余剰資金で投資する個人投資家がやっている訳である。(こう言った超長期のバリューギャップに投資出来る主体は多くないし競合も激しくないので、それが出来る投資主体はそれだけでチャンスである。例えば余剰資金のある個人投資家の場合、長期投資をするには機関投資家より圧倒的に有利な立場にあるようにも思う。)

口先では「バフェット投資」「長期投資」を標榜する運用会社が、実際にはバフェットのようには運用出来ないと言うのは、属人的な才能や胆力の違いも勿論あるとは思うが、上記のような「調達側である顧客の資金属性の問題」が大きいようにも個人的には思う。短期の資金調達で運用する場合、運用先も短期運用でないと齟齬が生じる。長期投資のためには長期の資金を調達してくる必要があるのである。この辺の事情については、証券アナリスト試験のALM(Asset Liability Management)のお勉強の所で学習出来る。調達側と運用側のデュレーションを一致させると言うのがALMの基本コンセプトである。

2009年12月12日土曜日

新卒の面接の作法:1億円(100億円)あったら何に投資する?と聞かれたら。




今回は、掲題の通り、「1億円(100億円)あったら何に投資する?」と言った質問をされた場合である。金融を受ける場合、比較的面接官に聞かれやすい質問である。


○ここでも、「金融専攻で〜君/さん」になるのは避けた方が良い。

投資の話なので、一見金融の知識を試されているように思われる。
しかし、「20%を日本株に、10%を新興国株に、後を外債とオルタナティブ投資で〜」等と答える必要は全くない。こうなると、面接官から更に金融知識面のツッコミを入れられ、どこかでボロが出てしまう可能性が高い。以下の関連エントリも参考にして、8割がたの学生さんはこれを避けるのが妥当であろう。



○志望動機と自己PRに質問をすりかえてしまうのが合格点かと。
こう言う質問は、結局の所志望者の思考のオリジナリティや志望動機を問われているに過ぎない。
従って、「1億円/100億円投じても良いくらい自分が大学時代に打ち込んで来た事は何か」「1億円/100億円を将来的に投資しても良いと思うような長期的な目標分野は何か」と言った質問にすり替えてしまい、自己PRや5年後10年後にどう言う金融プロフェッショナルになっていたいかの話をして、その実現のために1億円/100億円投資する、と言って締めるのが合格点と言った所だろう。
例えば特殊な分野で没頭している趣味があるなら、その分野へ投資する、と言ってしまえば良い。学生時代どれだけその趣味に没頭したかやそこから何を学んだか等を一緒に話せばオリジナリティが出やすいし、仮に実際には投資が現実的とは思えない話でも面接官は聞いてくれる可能性が高い。また、自分が没頭した分野で深い知識があった上で本当に投資として面白そうな分野を挙げる事が出来た場合には、「興味深い学生だ」と言う事で更に面接官の心証は良くなると思う。 


○具体例:強烈なアニメ/ゲームオタクが金融業界を志望する場合。

具体例として、「金融関連の知識はないが、強烈なアニメ/ゲームオタク」が金融業界を志望する場合を挙げておく。強烈なアニメ/ゲームオタクと言うと、一般にニートや引きこもりといった文脈の中で語られる事もあるし、就職活動では不利なのではないかと思われるかも知れないが、「徹底的にオタク」で、「スーツ着て就職活動をちゃんとやる位のアクティブさ」があれば、下手なファイナンス専攻君/さんよりもずっと採用の確率は上がるだろう。

「”日本発グローバルコンテンツファンド”の立ち上げをして、そのファンドに投資する事にお金を使いたいです。僕は自他共に認めるアニメ/ゲームオタクで、大学時代に1000作品以上のアニメを見て、100作品以上のゲームをやりました。コミケも参加しました。これがその時にコスプレして撮った写真です(本当にオタクならこの位は持っているだろう。真のオタクである証拠として面接時にこの位の小道具は持参しておこう)。楽しかったなあ。」

「結果、日本のアニメは世界でも非常にレベルが高く、停滞する日本経済の突破口として、アニメやゲームと言ったコンテンツ産業の育成振興は重要なのではないかと感じました。しかし、以前の自民党が挙げたような箱もの行政による支援では的外れのようにも感じました。アニメ制作会社等も予算が厳しい等、マネーが中々流れて来ないので苦労しているのが現状です。海外展開も出来るようで中々難しい。」

「そこで、1億円/100億円あったら、日本のコンテンツ分野に投資して、コンテンツ産業の種々の問題解決と産業振興に貢献したいです。例えばと言う事で、”日本発グローバルコンテンツファンド”と言う事で挙げてみました。」

「投資対象は、上場株でしたら、中大型株で言えば任天堂7974を始めとしたゲーム関連の企業、アニメではドラゴンボール他多くのコンテンツを扱う東映アニメーション4816、ガンダム関連の版権を持つ創通3711、エヴァンゲリオンをパチンコに展開する一方で鉄コン筋クリート等の高質なアニメを製作するスタジオ4℃に投資するフィールズ2767、押井守作品を手掛けるIGポート3791、キティ関連コンテンツを保有するサンリオ8136、携帯上で漫画を読む際のビューワや携帯上のまんがの開発ツールで業界標準になっている3829セルシス等があると思います。その他、携帯のコンテンツ関係の会社、レッドクリフ等映画に進出している7860Avex、一部テレビ局等も範疇に入るかも知れません。その他、コスプレ用雑貨や関連玩具等もコンテンツと考えれば、アパレルやおもちゃの会社も面白いかも知れません(注1)。」

「その他、非上場の投資先として、コンテンツの版権自体に投資する等で、ハンズオンでより国際的に認知されやすいようなコンテンツ開発を促したり、映画やDVDだけでなく雑貨、玩具、コスプレ衣装、携帯のコンテンツやゲーム、その他マルチチャネル展開をサポートするような方法も面白いと考えています。アニメ/ゲームなら私は相当オタクだと思いますので、チャンスはあるように思います。」

「金融の事はよく分かりませんが、御社で仕事しながら金融面の能力も付けて行って、こう言う事が出来るようになりたいと思います。オタクなので一つの事に没頭する自信はありますし、ファイナンスや会計もオタクの域に到達するよう頑張ります。これで日本のコンテンツ産業に適切に資金が流れる事に貢献し、もちろん御社にも利益が出るように貢献して、日本のコンテンツ産業が基幹産業の一つとして発展して日本経済の停滞打破に繋がるよう多少なりとも貢献出来ればと考えています。また、昨今ニートや引きこもり等が社会問題になっていますが、そう言った若者のうちアニメやゲームならと言った人達に活躍の場を提供出来る事に繋がれば最高です。」


・・・どうだろうか。きちんと通用し得る志望動機になっているのではないかと思う。面接官から、例えばアニメコンテンツがどう言う形で現在流通しているのか、版権等の権利処理がどうなっているのか、海外のアニメ業界の現状、業界の問題点、等色々聞いて来るかも知れないが、「真のオタク」であればどう言った質問が来ても常識として答えられるだろう。一方で、ファイナンス等については「私は金融は今はよく分からないが、凝り性なので速攻で何とかする」と面接者が言っている以上、面接官はあなたに金融関連の知識を問うような質問はして来ないだろう。面接官は知らないだろうが自分は深く知っている、こう言う分野で面接をするのが新卒面接のポイントである(社会人になって稼ぐ際のポイントでもある)。

どう言う部署になるか筆者には分からないが、直接的には、投資銀行部門の情報通信、サービス、ゲームセクター等の担当なり、ゲーム業界のアナリストのジュニアなりにと言うのはあり得るかも知れない。あるいは、アニメやゲームに関係ない分野にせよ、強烈に一つの事に没頭出来ると言う適性が買われて、そう言った適性が必要な部署からお呼びがかかる可能性もあるだろう。

ちなみに、このブログを読んで、実際にはアニメオタクでもないのにそのまま上記を真似して喋るとか、これを読んで「よし、じゃあアニメオタクになろう!」と言う事では駄目である(面接官から更に質問が来た時点で回答に窮するだろうし、熱意が伝わらないだろう)。

ポイントとしては、分野は何でも良いので、とにかく自分の土俵に持ち込む、「自分らしさ」が一番発揮出来る分野で話をすると言う事である。


注1:上記の例は、オタクではない筆者レベルの知識なので、本当にオタクだったら、他にも色々挙げられるだろう。また、挙げた銘柄等について、投資に対する意見等を表明するものではございません。投資の意思決定は各人の自己責任にてお願いします。当方では、この文章を読んで行った意思決定により発生したいかなる損害についても責任を負いません。また、上記の通り面接を行って採用されなかった場合等も、当方は責任を負いかねます。


外資の場合、もう採用過程も佳境に入っているかと思うので、面接の作法を少し急いで書いておく事にする。

新卒の面接の作法:英語面接にどう対応するか?

(出所:http://www.istockphoto.com/


前回に引き続き、新卒面接のTipを紹介しておく。

今回は、英語面接について。外資系金融を受ける場合大概外人面接者(場合によっては日本人相手でも)英語面接がある。帰国子女のかたは何て事のない事だが、「ドメ組」にとっては難しく感じている学生さんも多いかと思う。筆者も元々純ドメで、海外滞在経験は最長で数ヶ月程度しか無いのでそう言った学生の気持ちはよく分かる。そこで幾つかTipを紹介しておく。

○英語面接のコツ

・まず、下手でも文法がメチャクチャでも躊躇しない事である。外資系金融の場合、帰国子女や留学経験者が多いのは事実ではある。しかし、意外に思うかも知れないが、新卒の東京法人採用であれば、ネイティブレベルの英語力は必ずしも要求されていないようにも感じる。内定後にキャッチアップが必要なのは事実だが、先方は東京法人で日本人のお客相手にビジネスがやれる、日本語がネイティブの人材を採用したいから東京で新卒を採用するのである。とにかく下手でも堂々と話す事が重要である。英語が下手だからと言うより、おどおどしてしまうから不採用、志望動機や自己PRが貧弱だから不採用(つまり英語で喋ろうが日本語で喋ろうが不採用)と言うケースの方が多分多いだろう。

・志望動機、自己PR、面接が一通り済んだ後での「Any question?(何か質問ある?)」等、典型的な質問については、事前に英語でスクリプトを書いて、家で何度も朗読しておいて舌をなめらかにしておく事。ただし当たり前だが、面接当日は紙を朗読等しない事。

・紙とペンを手許に持っておく。話していて英語の語彙が出て来ない場合、書いて説明する。例えば、「損益分岐点分析をして云々」と言う事を喋りたいが「損益分岐点」が出て来ない場合、紙にグラフを描いて、「I tried such analysis as this. This line is fixed cost, here is zero profit point, and...」等と中学生レベルでも良いので喋れば、「Ah, breakevenpoint analysis.」と言ってフォローを入れてくれる。

・面接室にホワイトボードとペンがあった場合は、「Can I use whiteboard for explanation?」と断って立ち上がって、ホワイトボードに色々書きながら説明する。とにかく堂々と振る舞うのが重要である。

この程度の事が出来ていれば、英語が出来なかったから落とされる、と言う事は余り無いように思われる。後は話の内容自体の問題、あるいは態度が堂々としているか、面接官に気に入られるかの問題である。

逆に、余り英語が上手くて性格からにじみ出るニュアンスまで伝わってしまうと、あなたが面接官の気に入らないキャラだと言う事になると不利な事もある。つまり、英語がそう上手くないと、例えば喋りの途中に「間」があるのが何か意味深長な意味があるのか単に英単語が浮かばないでつっかえているのか分からないとか、無駄な事/不用意な事を口走らずに済むとか、「相手と距離感が近くなり過ぎない事による利点」がある面もある。ちなみに話はそれるが、外人は日本人女性を大概好きだが、英語ネイティブの日本人女性と付き合う事は案外多くない(ちょっとたどたどしくて適度な距離感がある方が現実を見なくて済むし、恋愛が盛り上がる訳である)。

以上、必ずしも英語が下手だと不利なばかりではない、と言う面も理解して、とにかく物怖じせずに面接する事である。外資系金融では特にIT部署等ではインド人が東京でも多数居るが、彼らの英語は相当無茶苦茶である。しかも発音が独特で非常に聞き取りづらい。それでも彼らは堂々とマシンガンのように喋っているし、それでビジネスはちゃんと出来ている。そんなに物怖じする事はないのである。

ちなみに内定したら、直ぐに英語はフォローアップしておく事である。入社後に英語の勉強、特に「殆ど喋れない状態から、ビジネスで使えるレベルまで持って行く」と言う最初のハードルを越える作業をする暇は中々作れない。外資の場合、交渉すれば語学学校代を出してくれる等サポートが付く事もあるので、交渉してみるのも良いと思う。

2009年12月11日金曜日

新卒の面接の作法:お金の事を聞かれたらどう答えるか?

http://www.publicdomainpictures.net/

さて、今回はまた新卒の面接の話に戻ろう。
前回で「マネーは紙切れであり、概念に過ぎない」と言った事を書いたが、実際の所は面接の際に「幾らくらいの年収が欲しいですか?」と言った質問をされた際に迷う学生さんは多いと思う。今回はこの点について書いておきたいと思う。

○日系を受ける場合

この場合は答えは明確である。
そこが証券会社であっても、運用会社であっても、カネをしこたま稼ぎたいとか、40代位で引退したいとか言ってはいけない。会社員として馴染めない人物だと即キミは判断され、まず不採用になるだろう。証券会社/運用会社はマネーと言う「概念」を扱うのが仕事なので、マネーの探究が嫌いでも適性的にどうかとも個人的には思う面もあるのだが、これが現実である。

「御社で鍛錬を積む事でプロフェッショナルとして活躍出来るようになる事が大事なので、お金については特段頓着しておりません。」

と言った、教科書的な内容を答えておこう。


○外資を受ける場合

迷うのが外資系金融機関を受ける場合である。

「カネなんて要らない」と言うのでは、なぜ外資を受けるのかと言う志望動機が弱くなってしまうし、第一ウソを付く事になってしまうだろう。外資を受ける学生さんの過半は、高い年俸を貰いたいと言う下心が心の片隅位には最低限あるからこそ、リーマンショック等が起きてまで外資に行きたいんであろう。自分の心に素直になれないのは良くない。外資系金融マンの場合、教科書的な回答をする学生を「つまんねえなあ」の一言で即落とす面接官も居る。聞いている側からすると、確かに教科書的な回答はつまらないし印象には残らない。

一方で、外資系企業の面接のお作法の書籍など読んでいると、「外資系を受ける際であっても、露骨な金銭交渉は基本的には面接の最中はしてはいけません。金銭面以外で面接先企業に魅力を持った理由や志望動機を語りましょう。年俸交渉は最後の最後、オファーを出す事は決まって細かい条件面を詰める際だけです。」と言ったような教科書的な事も書いてある。

じゃあどっちなんですか、と言う所だろう。

・「ギラギラ系外資金融マン」が出て来たら、「稼ぎたい」と言うべき。

ギラギラした雰囲気があり、いかにも多少品がよろしくなさそうでスケベで女好きそうで、ボーナスと女の事で頭が一杯、と言う感じの、読者が外資系金融マンと言う時まっさきに想像するような典型的な「ギラギラべたべた外資金融マン」が面接官で出て来たら、マネーに対するグリーディーさをアッピールする必要がある(注1)。

「昨今ライフワークバランスとかひよってる事言う風潮がありますが、僕は/私はお金が大好きで、40代にはがっぽり稼いで引退してワイナリーの経営でもしたいんです。休日だろうが常に稼ぐ事に集中して、身を粉にして物理的にもハードワークして、頭に汗もかいてがっぽり稼ぎたいです。」

等と言うべきである。「外資系企業の面接のお作法」的書籍に書いてある、「お金の話は最後までしちゃいけません」なんてマニュアルはクソッくらえである。こう言う発言をするのに気が引ける程度に紳士淑女なかたは、そもそも外資系金融機関、特に米系投資銀行のフロントオフィスには行かない方がいい(外資系証券でも欧州系だとか、あるいは外資でも運用会社だと、もうちょっと紳士淑女でも居場所があるかも知れない)。

・女性や穏やかインテリ系、気の良さそうな面接官、若手が出て来たら、教科書的な回答が概ね無難。

一方で、女性面接官やインテリ系が出て来たら、教科書的な回答が無難だろう。
女性や穏やかインテリ系の場合、「給料高い方が良いに決まってるが、学生のみそらで初対面の人間に対して、”オラオラ稼ぎまくりたいんです”等と言うのでは品性に欠ける。建前でも多少の品性は持っていて欲しい。」と考えている確率が比較的高いと思われるからである。

若手だと、実際睡眠時間も土日も仕事のために公私ともすり減らして疲れており、「オラオラ稼ぎたい」なんて面接対策で口走って外資系投資銀行なんぞで始終仕事をして居る事に内心後悔しているような面接官の事もあり得る。また、稼ぎの少ない面接官に対して「稼ぎたい」等と言うと面接官の心情を逆撫でする可能性もある。


・どう言うタイプか読めない場合は、素直に思う所を話すか、臨機応変に話すかするしかない。

上記のどれにも属さないようなタイプの、キャラの読みづらい面接官の場合は、素直に思う所を話して後はなるに任せるか、臨機応変に話すしかない。

相手により発言を使い分けるなんて何だか姑息だと思われるかもしれないが、外資系投資銀行のフロントオフィスを、素直純朴なだけで生き残るのは結構大変である。外資系はクリーンでフェアだなんてのは、ただの幻想に過ぎない。高い年俸がかかっているだけに、政治争いもどろどろしがちである。

上記のような事を姑息だと思う場合、そこまでしてカネカネ言う事がバカバカしいと思う場合は、そもそも外資系金融のフロントオフィスで働こうとか、将来ヘッジファンドを目指そうとか考えないほうが良いかも知れない。外資系金融業界やヘッジファンドではやって行くのに苦労するかも知れないが、人間としてはそう思うあなたの感性はまっとうで価値のあるものだ。何しろマネーとはただの紙切れである。紙切れ相手に姑息な事もやり、ストレスも溜め、体を壊したり私生活無茶苦茶にしてまで魂を売るなんておかしい、人生の優先順位を間違えているのではないか、と言う考え方は本質を突いている(注2)。

○マネーに対するアグレッシブ度合い

概ね、米系証券>欧州系証券か野村證券>米系運用会社>欧州系運用会社>>一般日系証券/運用会社、とでも言った所であろうか。左に行く程、「ギラギラ外資金融マン」に遭遇する可能性が高くなり、右に行く程教科書的な回答をしておいた方が良い度合いが高くなるだろう。また、入社後に「短期でガツガツ稼いで政治闘争にも勝ち上がらないとクビ」的ないわゆる一般的なイメージでの外資系金融像は、概ね米系証券のカルチャーから来ていると思われる。外資でも、上記の不等号の右の方に行くと、比較的紳士淑女な社員が、ど派手なボーナス等は付かないけれども比較的長期のキャリアで地道にコツコツ働いている(あるいはアグレッシブではないがネチネチぼそぼそと政治活動に勤しむような者も現実としては居る訳だが、その位は金融業界に限らずとも組織には必ず居るものである)、と言う感じに近くなる。

この辺は、カルチャーが合わない所に入社してしまうと相当苦労すると思うので、面接の際に無理をし過ぎない事を個人的には薦める。

新卒の場合関係ないが参考までに述べておくと、ヘッジファンドについては、カルチャーは会社によってかなり異なる。ギラギラ外資金融マン的な所もあれば、修行僧のように運用に打ち込む事を重視している会社もあれば、色々である。

○筆者の場合

参考にはならないと思うが筆者の場合は、

「マネーと言う概念を探究する事は、中々に興味深い作業ですね。」
「フェアにまっとうに日々やれる事に集中して、結果として金銭面でも応分に報われたいですね。」

と言った所である。筆者が仮に今学生だったら(これで内定するかしないかは分からないが)そう答えるだろう。面接官に対する使い分けもしないだろう。筆者はこう言う価値観なのであり、いちいち相手に合わせる義務はない。あちこちで同じ事を言って、採用してくれる所に行くだろう。

観察対象としてのマネーと言う概念は色々な意味で中々に興味深いし、投入する努力に対して結果が出る方が嬉しいのは当然である。お金は汚いものだと言う日本人的な発想はどうかと思う。良きにせよ悪しきにせよ、マネーは中央銀行が刷った単なる概念に過ぎない。マネー自体がきれいだったり汚かったりする訳ではない。ユーザー側の心の持ちよう次第である。

一方で、マネーは人の心の虫眼鏡のような所があり、やましい気持ちを心の片隅に抱えたまま金持ちになりたいと突っ走ると、華やかな面も増える一方で心の隙間もまた拡大膨張される。自己の内面をきちんと直視しないまま、どっぷりマネーの奴隷、金銭的成功ありきになってしまうと健康や私生活面での副作用も強い。マネーとの距離感には結構気を遣うと言うのが正直な所である。


以前に新卒のキャリアステップの所で書いた「1社目は大手の有名所にしておけ」と言った「キャリア面ではずれの少ない戦略」と、上記の筆者のような「個人の考えを通す事を重視する事」をどの辺で折り合いを付けるかは、各人の判断である。

若いうちの3年位は多少自分の考えや間尺に合わなくても修行だと思って「使い分け面接」をして、大手からの採用と言ったキャリア面を優先させるのもまた考え方である。

一方で、ブランド大手から不採用になるリスクをある程度取って「言いたい事を使い分けずに言う」で採用されるようにして最初の3年と言えども企業カルチャーと自身の性格のフィットを重視するのもまた考え方である。これでも案外キャリア的に申し分無い会社からオファーが出る事も運が良くて先方との相性が合えばある。本音で話していて軸がぶれなくてよろしいと言う事で人事決定権のあるシニアに気に入られたりすると、思いがけない所からオファーが出るケースも場合によってはあると言う事である。しかし面接者の価値観によっては軒並み不採用と言う事も勿論ある。その辺はそう言うものだと考えるしかない。


更には、両者の中間程度を取り、ある程度は臨機応変に、さりとて余り露骨に相手によって言う事を全く変えるような事もしない、と言うのもまた考え方だろう。


(以下、注の解説)
注1:リーマンショックのせいなのか、メインの年代がバブル期に大学生あるいは若い社会人だったバブル世代から、株価下落とデフレが当たり前のポストバブル世代にシフトして来ているからなのか分からないが、昨今、こう言う外資金融マンも以前よりは減ったようにも思われる。あの適度に品がなくて、ちょっと適当で、アゲアゲな外資系金融特有のアノ感じは、それはそれで懐かしい気もするのだが。とは言え筆者もポストバブル世代である。

注2:最近逝去されたピーター・バーンスタイン著の以下書籍が興味深い。ゴールド(金)の歴史について書いた歴史の本だが、本の出だしが、船で航海中に遭難して海に飛び込んで逃げる際に、金塊を腰にくくりつけて逃げようとして海の底に沈んでしまった男の話から始まる。そして、最後の締めくくりは、この物語の最も賢明な主人公は、手持ちの金を手放して塩と黙って取り替えたジェンネとトンブクトゥの純真な先住民である、なぜなら塩があれば生活出来るからである、と言う締めくくりで終わる。マネーと言うのはそう言うものなのである。

2009年12月5日土曜日

最後かもしれないだろ?だから、全部話しておきたいんだ:ファイナルファンタジーXと資本市場その2

(出所:スクウェアエニックス)

前回の続きである。

ファイナルファンタジーX、このゲームがどうして資本主義への示唆なのか?と言う所からである。


「最後かもしれないだろ?だから、全部話しておきたいんだ」(ティーダ)


と言うゲーム内の主人公の名言に基づいてちょっと書いてみると、要するに中央銀行、基軸通貨ドルの発行母体として中央銀行の中心にあるFRBと言う存在そのもの、ひいては誰もが求めて止まないマネーと言う存在そのものが、「壮大な夢」あるいは、「エボンの教え」みたいなものだと解釈出来得る面があるからである(注1)。


FRBは、実際には民間銀行である。そして、FRBの発行するドルには、今や金(ゴールド)の裏付けもない。幾らでもドル札を刷ろうと思えば刷れる。世界各国の通貨価値は、基軸通貨であるドルをベースに決まっている。つまり世界各国の中央銀行はFRBの動きと全く別個に金融政策を行う事は難しく、ある程度相互に影響し合ってしている。


ここでちょっと考えてみて欲しい。例えば筆者が、「Anonymous Investor Bank Co., Ltd.」とか何でもいい、私企業を作って、紙切れに10とか100とか書いた「お札」を刷って、「これには価値があるから、あなたの持ってる家とか食べ物とか財産をくれ。あるいは、毎月この紙切れをやるから、1日8時間私の財産がもっと増えるために働いてくれ。」と言ったとする。あなたはそれを受け入れるだろうか?勿論受け入れないだろう。


しかし、FRBを中心とした現代の金融システムのすごい所は、上記のような事を、様々な方法でもって実現している点である。例えばこんな手段である。


・政府にカネを貸す(通貨発行権を独占して、政府に国民の税金を担保に国債を発行させてそれを中央銀行が引き受ければ、政府は債務者、中央銀行が債権者で、力関係としては国民<政府<中央銀行、になる)。


・政治家に色々な形で働きかけて「中央銀行に独占的に通貨発行権があって、中央銀行以外は勝手にお札を刷ったりポンジスキームをやったら犯罪です」と言う法律を成立させたりする(注3)。


・学問の世界では新古典派経済学や効率的市場仮説等の”何とも香ばしい感じのする”理論やら、資本にはコストがかかるんですと言った「信仰」をMBA等の教育機関等を経由して世界中に周知させる(注4)。


その他色々な方法で上記を実現させていて、「FRBの刷るドル札には価値があって、食べ物や石油や不動産やと交換出来る」と言う信仰(ファイナルファンタジーXで言う所のエボンの教えのようなもの)を世界中の人々に持たせる事に成功している面があると思われる、と言う事なのである。


そして、FRB(や世界の中央銀行)は、お札の発行量をある時期には増やし続ける。銀行は事業会社に潤沢に資金を貸す。こうすると過剰投資と過剰消費が起きインフレと好況が起き、バブルが起きる。そして、ある程度行った時点で金利を引き上げてお札の流通を引き締める。今まで銀行からカネを借りまくって財務レバレッジを上げて行ってバブルの恩恵を受けて居た新興成金は急速に資金繰りが厳しくなり、倒産が多発する。バブルは崩壊し、不況が訪れる。そして不況対策と言ってまたFRBは金融緩和をしてお札を沢山刷る。ある時には日本のバブルとその崩壊、ある時はアジア通貨危機、ある時はLTCM破綻、さてはサブプライムショック等と言われて毎回震源地や表面的な状況は異なるが、根本的な所は同じである(注5)。以下繰り返し。召喚士がシンを倒してちょっと平和になるけど復活して、と言うサイクルと似たようなものである。


こう言う事が、民間銀行たるFRBによって行われていて、金融危機が起きたりバブルが起きたりしているのである。多くの人々がこの災厄(バブル崩壊)と平和(バブルあるいはユーフォリア)に翻弄されるだけで後は祈るしかない一方で、このサイクルを活用して儲ける人達が居る事も、この仕事をしていると何となく実感される。筆者の専門は個別企業の一本釣りだが、グローバルマクロの運用をするとは、こう言うマネーの性質について熟知してそれを活用すると言う事である。


つまり、現実世界で起きている事も、案外ファイナルファンタジーXの世界と似ている訳である。これが「ファイナルファンタジーXがなぜ資本主義への示唆になるか」の理由である。


ただ、真相の所は分からない。筆者についてはこの手の話については、陰謀論の立場は取っていない。現在の通貨制度や社会制度を批判、非難するつもりもない。筆者は資本主義の辺境の地で細々と運用の仕事をしているに過ぎない。実際の所は普通の人にはわからないと言う事である。


例えばこれから金融業界に入られる学生さんなり、これから金融マーケットの世界に訪れる皆さんには、ファイナルファンタジーXの名言を引用しておこう。


「覚悟を決めろ。ほかの誰でもない。これは、お前の物語だ。」(アーロン)


マーケットに何を求めるか。その向こうに何を見るか。それは、その人次第である。




(以下、注の解説)


注1:ちなみに、FRBに加えて、地球温暖化問題の際にしばしば登場する、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)についても類似の雰囲気を感じる。実際には、CO2が地球温暖化の主因であるかどうかと言う点については、科学的には実際は微妙な所のようである(太陽の活動等による周期変動等が理由と言った説も含めて諸説ある)。それにも関わらず、アル・ゴア氏とIPCCがノーベル平和賞を受賞し、IPCCの調査結果等を前提として、今まさに世界中で地球温暖化対策としてCO2を減らそうと言う動きになっており、丁度折よく核ミサイル廃絶(言い換えると原子力の平和利用)を訴えるオバマ大統領が現職大統領であるにも関わらずノーベル平和賞を受賞したのは、色々な利害主体の思惑があるものであろうと推測される。この辺については以下の書籍を参照。


金融危機で失った資産を取り戻す方法 (単行本(ソフトカバー))


注2:とある書籍にはFRBのステークホルダーについて考える際に重要となる、ニューヨーク連銀の株主一覧が掲載されていたりするが、真偽のほどが定かではないのでここでは取り上げない。少しトリビア的な話(何か役に立つ訳ではないが、「へー」と言う気分にはなれる話)をすると、その中にJ.Sと言う人物が居るのだが、この人物についてはRと言うファミリーと深い関係にあった人物であり、日露戦争の際に高橋是清と親交を持つ事で日本国債の外債引き受けをして日本政府の資金調達に協力し、日本を勝利に導く事に金融面から貢献している人物で、日本にも関わりの深い人物である。Rと言うファミリーとロシアは当時対立しており、Rが日本を支援する動機があったものとも推察/解釈し得る。


ちなみに、こう言う知識は幾ら付けても、話のスケールが大き過ぎて日々の運用の勝ち負けには殆ど関係ない。とは言え一応参考図書を下記に付しておく。ご興味のある方(あるいは暇なかた)はどうぞ。


赤い楯〈1〉 (集英社文庫) (文庫)

日露戦争に投資した男―ユダヤ人銀行家の日記 (新潮新書) (新書)


注3:以前に「円天」と言う仮想通貨を発行してねずみ講詐欺で捕まった者が居た。逮捕された代表は「私の考えは正しい、国も人々も私の言う事に耳を傾けなくてはならない日がいつか来る」と言った内容の事を言っていたように記憶している。


彼としては、国債発行額がどんどん増えている日本において解決策はお札を刷りまくる事であり私がそれを体現している、とか、民間銀行であるFRBも通貨を発行してるじゃないか私が通貨を発行して何が悪い、とでも言いたかったのかも知れないし、そう言う意味では逮捕された代表の言い分も全くもって荒唐無稽と言う訳ではない。


しかし、今の社会体制では中央銀行以外の主体が勝手に通貨を発行したら犯罪である。通貨発行はある意味虎の尾であり、不用意に踏んではよろしくない。円天の代表については、この点をきちんと理解しておくべきだった。


注4:筆者は陰謀論の立場は取らないため、実際の所、FRBの利害に経済学やファイナンスの理論体系がたまたま一致しているのか、ある程度中央銀行の企業努力でもって経済学やファイナンスの理論体系が中央銀行の存在にとり都合の良いものに方向付けるようにしようとして来たのかについては深入りしない。


しかし全ては概念の事柄であり、物理法則のようにりんごを落としたら地面に落ちるとか言う類いのものではない。社会科学は検証も出来ない(過去の歴史を違う条件にして再現したりするような実験が出来ない)。誰かが「資本にはコストがあるんです(つまり、マネーには金利とか株主資本コストがあるんです)」と言う事にして、それが多くの人々に信じられているから、実際そうなっていると言うだけである。実際には別の形での経済運営と言うのもあり得るかもしれないと言う事である(この辺の詳細を考えるのは、俗世にどっぷり漬かった筆者のScope外なので割愛する。地域通貨等について研究している他の研究者、活動家等のブログ/書籍等を参考にして欲しい)。


ちなみにケインズ(ケインズ経済学)は中央銀行による金融政策の効果を正当化したと言う点において、中央銀行にとっては有り難い学者であろう。また、新古典派経済学や効率的市場仮説によって、分散投資の有用性が説かれ資本の流通が加速し、これがバブルやその崩壊の振幅を大きくする事に寄与している面はあろうかと思われる。モダンポートフォリオ理論のベースになっている「何でもかんでも正規分布(なり対数正規分布なり)に基づく」と言う考え方が、実際には数年に一度起きるような経済危機を「100年に1度」「統計的には1万年に1度」しか起きないと市場参加者を勘違いさせ、ボラティリティが低く見えるバブル期に過剰にリスクを取らせて、バブル崩壊時に一気に吹っ飛ぶと言う繰り返しを生んでいる面もある。振幅が大きい方が中央銀行の金融緩和も有り難がられるし存在意義も増す面はある。


ついでに述べるとノーベル賞受賞者には、新古典派/効率的市場仮説系のシカゴ学派の受賞者が多い一方で、「中央銀行があるから景気循環が生じる」と説くオーストリア学派がいまいちマイナーである(オーストリア学派のハイエクはノーベル賞を受賞してはいるがオーストリア学派のノーベル賞受賞者は多くはない)。読者の皆さんで、オーストリア学派を大学や大学院で専攻したかたは少ないだろう(本格的に教える大学・教官自体が多くないはずである)。


ノーベル賞の特に平和賞や経済学賞は(検証不可能な社会科学では仕方無い面もあるが)選考基準が曖昧な事で有名である。上記でも書いたが、これらの賞の受賞者を見ていると「ある種の思惑の一端」のようなものが垣間見える事もあり、恐らく色々背景があるとも推測され得る。ただし、そう言う”お話”も出来得ると言う事である。


注5:サブプライムショックについて大仰な題名の本を書いてみたり、米国流自由主義万歳だった日本の経済学者が懺悔してみたり、経済学者を多数抱える日本の大学基金が証券化商品で大きな損失を出している様子を見ていると、日本の経済学教育については、彼我の差を感じざるを得ない。


普通に中央銀行による金融緩和が続いて、低金利の余ったマネーが「流動性が無かったり投資したカネ返って来るか微妙な感じでリスクは高いけど利回りも高いよ」と言う金融商品(時に不動産だったり証券化商品だったりハイイールド債だったり、地域では日本だったりタイやインドネシアやロシアの国債への投資だったり、最近は中国の不動産だったり色々な訳だが)を求めてそちらに流れて行って、金利のスプレッドがリスクに見合わない程小さいものになる臨界点まで流入し切って、バーストする。この「いつもの典型的な循環」をやや大規模にやったに過ぎない。こう言った話は完璧なタイミングを読むのはかなり難しいが、誤差1−2年を許す位の精度であれば「基本問題」である。


一言で言ってしまえば、「中央銀行がお札を刷ります。それがより利回りの高い所に向かいます。行き過ぎると破裂します」。ただそれだけである。しかし、これでは学問として余りにお粗末で単純過ぎるので、色々装飾が必要と言う事なのかもしれない。


しかし沢山の数式で学生を煙に巻いたり居眠りの世界にいざなう前に、きちんと中央銀行の金融政策は景気の局面に応じて典型的にはこうで、高リスク高金利vs低リスク低金利の金融商品間のスプレッドと景気循環には典型的にはこう言う関係があって、日経新聞で利上げするとかしないとかが大真面目に書かれてるのはだからなんですよ、と言う事を(学問としての格調高さはだいぶ失われてしまい、卑近な感じにはなってしまうものの)説明する必要があると思われる。


筆者については、正規の経済学教育は受けていない。興味のあるかたは、以下の書籍辺りが良いかと思う。特にLTCMと、ジョージ・ソロスによって書かれたアジア通貨危機の上2冊辺りが読みやすくて臨場感もあっていいと思う。ケインズの訳本も、新書が出てだいぶ分かりやすくなった。オーストリア経済学の本は、オーストリア学派について比較的体系的にまとめてある、日本語では比較的数少ない書籍で貴重かもしれない。


最強ヘッジファンドLTCMの興亡 (日経ビジネス人文庫) (文庫)

グローバル資本主義の危機―「開かれた社会」を求めて (単行本)

雇用、利子および貨幣の一般理論〈上〉 (岩波文庫) (文庫)

雇用、利子および貨幣の一般理論〈下〉 (岩波文庫) (文庫)

オーストリア学派の経済学―体系的序説 (単行本)


正規の経済学を一通りやっぱり押さえておきたい、と言うかたは、分厚いが以下がお勧めかも知れない。基本線、外人の書いた本の方が具体例が豊富で、数式は少なめで、分かりやすい。教育市場はアメリカの方が競争が激しく、教授も客商売をきちっとしないといけない面が強いのだろう。しかし運用する際に、そんなに意識して下記書籍に書いてあるような知識を駆使する事は無いかもしれない点は付記しておく。


スティグリッツ入門経済学 <第3版> (単行本)

スティグリッツ ミクロ経済学 (単行本)

スティグリッツマクロ経済学 第3版 (単行本)