2010年1月26日火曜日

Matrixその後と最高の人生の見つけ方

(出所:映画「最高の人生の見つけ方」より)

○「資本主義Matrix」の世界で翻弄され切った「成功者」のその後

前回の続きである。

ひとたび成功はしたものの、資本主義に翻弄され切って疲れ果て、ビジネスは後退を余儀なくされ、財産も殆ど無くなり、セレブ友達も、(往々にして)配偶者/パートナー等も含めて皆去って行き孤独になり、もう人生なんかどうだっていい、と無気力引きこもり状態の「元」成功者の携帯に、ある日メールが届いた。

「仕事で近くまで来てるんだけど。久しぶりに飲みに行かないか?」

ずっと会っていなかった、普通の会社で普通の冴えないサラリーマンをしている、昔からの友人だった。
とにかく引きこもりから脱出、外出する理由も欲しかったので、元成功者は飲みに行く事にした。


○最高の人生の見つけ方

その辺の安居酒屋で飲む事になった。少し前までザガットやミシュランで高得点/星の付いた店や、そう言う本にも載っていない貴重な店で外食するのが当たり前だったので、こんなのは久しぶりだった。

友人は、よれよれのスーツにワイシャツ、朝遅刻しそうでヒゲ剃って無かったんだなと言う事が伺われる無精髭、寝癖の残った髪型にネクタイを緩めた冴えない風体で、あー悪い悪い、上司に捕まっちまってな、安月給な上に酷使しやがってかったるい会社だよ全く、等と言い訳しながら10分近く遅れてやって来た。昔からグダグダでだらしない奴だったんだよな。少し前までだったら、こう言う人間と会っても多分視界にも入っていなかった。しかし元成功者はそんな事もはやどうでも良かった。わらをもすがる思いだった。

もう我慢が出来なかった。
今までずっと抑えていた愚痴を、古い友人にぶちまけた。

「結局元の木阿弥だ。いや木阿弥以下だ。」
「仕事は完全に終わったよ。終わった。全部終わった。げーむいず、おーーーーーぶぁーーーーーっ。」
「人脈だと思って居た奴らも皆去って行った。さーっと引いて行く音が聞こえるようだったね。冷たいもんだよな全く。」
「仕事場も修羅場なら家も修羅場。嫁も結局はカネカネカネ、そればかり。キャッシュが滞って来た途端どんどん冷たくなって行って、支えてなんてくれなかった。まあ自分も、見栄っ張りで美人を隣に連れていたいみたいな所あった上に、勢いで深く考えないで結婚して、結婚した後も仕事の事ばっかり考えてて家の事なんか構ってなかったから、自業自得と言えばそうだけどな。結局今は別居の案配で、これから離婚の手続き。もの凄い額の慰謝料を多分請求してくるだろうよ。はああああ。」
「はぁぁぁ・・・おやじさん、もぉういっぷぁい!」

安酒をどんどん飲んで止まらなくなってくる。
目に涙が溢れて来るのがわかる。

友人はただただうなづいて、自分の話を聞いてくれた。

そして長い長い愚痴と泣き言を一通り聞き、「元」成功者が言う事もなくなって来たのを見計らって、友人は穏やかに続けた。

仕事の事はまあ、今は忘れるんだ。頑張り過ぎるな。
今は休養が必要なんだ。今は取り敢えず何とか日々をしのぐ事だけ考えればいい。それで精一杯でも、それでいいんだ。時間が解決する面もある。
離婚はな、、、実は俺も数年前に一回離婚してるんだ。これはしてみないと分からんからな、気持ちはよく分かる。周囲に相談しづらいしな中々・・・。気持ち的にお前も滅入ってるだろうし、早めに専門家に任せた方がいい。今まで多分お前が仕事でやり取りしてたような、M&Aの時なんかに世話になる大手の弁護士事務所じゃなくて、街角で小さいかかりつけ弁護士事務所やってるような、離婚とか細かい民事の案件とかの経験が豊富でちゃんと親身に相談に乗ってくれるような感じの方がいいかもしれないな・・・そうだ、学生時代の友達であいつ居ただろ?あいつ今地元で弁護士事務所やってんだよ。連絡付くように手配しとくよ。
大丈夫だ、お前は間違ってない。きっと大丈夫・・・とにかくお前は今は無理するな。



グダグダでだらしなくて、上司にも客にも適当な言い訳ばかりしてるようなダメサラリーマンの友人が、いざとなるとこんなに頼りになる奴だなんて全く知らなかった。思ってもみなかった。

年甲斐もなく元成功者は声をあげて泣いた。ちくしょう。

自分の今までの人を見る目の基準が全く間違っていた事を悟った。
そもそも人生に対する考え方を誤って居た事を悟った。
優秀かどうか、勝ち組かどうかなんて、人生の重要な時には何の意味もない。

最悪の時、運気もどん底、ため息と愚痴しか出ない時に自分の話を聞いてくれて、どしゃ降りの時に無言で傘をさし出してくれる、グダグダだけれどもいざと言う時案外しっかりしている「本当の友人」。こう言う奴さえ居れば、人生何とかなると言う事を痛感した。数は少なくていい、こう言う友人を大事にして生きて行こう。

そして「元」成功者は、遂にMatrixの迷宮の先にある光を見つけたのであった。
本当の幸せとはどこにあるのかを知ったのであった。

それは起業して株式公開する先にある訳でも、勝ち組ビジネスマンになった先にある訳でもなく、案外身近な所にあったのである。

最悪の時期を経て、遂に「最高の人生の見つけ方」を発見した瞬間であった(注1)。

○次回以降の(飽きなければの)予告

・・・次回から、新橋の飲み屋調からちょっと離れて、もう少し詳細にまとめた形で「再生の過程」「救いのある資本主義との関わり方についての提案」について書いてみようかと思う。例によって、飽きなければだが。


(以下注釈)

(注1)べたな映画だが、良い映画と思う。


・・・それにしても、なんでこんな具体的に色々書けるのかって?

なぜかと言えば、筆者自身が「資本主義の仕組みに興味なんか持っちゃって、今考えると赤面ものだが成功哲学本とか色々読み漁って頑張っちゃって、超微小なスケールで調子に乗り、ぺしゃんこの一文無しになり、人生何が大切か痛感する事になった」と言う循環を一周経ているからである。あらあら。

2 件のコメント:

  1. 地銀マン1/28/2010

    はじめまして。地方銀行で資金運用業務を担当しております。
    マトリックスシリーズ、大変興味深く拝見しました。
    私は現在入社4年目になりますが、これまでかなりの数の自己啓発本を読んで来たように思います。(今思えばかなり恥ずかしい内容の物もありました。。)
    そもそもなぜそういったものに興味を持ったのか。やはりどこかに自分の学歴やキャリアにコンプレックスを持っていたからだと思います。
    もっと早く資本主義の仕組みに気付いていれば自分はこんな職場にいることはなかった、もっと努力すれば社会的に認められ、金銭的にも豊かになれるだろうと考えていました。
    同期がのんびりしているうちにCMA資格を取得したり、人一倍の努力
    を重ねた結果は、ボーナスや異動等ですぐに現れました。
    一方で、当初は「資格を取ったら転職してやろう」と思っていたものが、「やっぱり希望部署で経験を積んでからにしよう」に変わり、今度は「もう少し転職市場が活発になってからにしよう」という考えに変わっていきました。要は先延ばしです…
    決断力の無い自分にやや嫌気が差していた中でマトリックスシリーズを拝見し、少し気持ちが楽になったように思いました。
    赤いピルを飲むか、青いピルを飲むか。どちらを選んだにしろ、少なからず後悔が伴うものだと思います。しかし、それぞれが選んだ世界でバランス感覚を持って生きて行くことができればそれが幸せなのではないでしょうか。
    非常に漠然としたコメントですみません。。
    これからも迷いが生じることは多々あると思いますが、自分なりの価値基準を構築できるようになりたいと思います。

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  2. コメントありがとうございます。

    >それぞれが選んだ世界でバランス感覚を持って生きて行くことができればそれが幸せなのではないでしょうか。

    このコメントで、筆者の表現したい事をまさに集約して頂きました。御礼申し上げます。一人でも、筆者の伝えたい事が伝わった人が居ると思うと、嬉しいです。

    負の感情は、「積極的に行動して、仕事やビジネスが軌道に乗るまでの大気圏突破に必要な一段目ロケット」としては非常にパワフルなモチベーションでもあるため、ついついこれを活用してしまう面があるように感じます。地銀マン様に関わらず、少なからずの人がそう言う傾向にあると思います。

    若いうちの一時期にそう言うガッツで走るのは、青春の一ページとしてありだと思いますし、お陰で今の地銀マン様がいらっしゃるとも思いますので、決してその過程は無駄な事では無かったと思います。

    ただ、「見返してやろうと言った負の感情」「お金が無い事に対する恐怖心」等をモチベーションにして前に進み続けると、色々問題が出て来る事例が多いように思います。

    純粋な好奇心や探究心、好きだからやってみよう、性に合うからやってみよう、こう言う気持ちで無理のないペースで今後のキャリアアップを考えるのであれば、多少ペースはゆっくりにはなるかも知れませんが、バランスの良い人生と、キャリアアップや所得改善等を両立する事は出来るのではないかとも思う昨今です。

    地銀マン様におかれましては、丁度CMA資格等取られて一段落し、ご自身が楽しいと思える仕事との関わり方、仕事や私生活含めてトータルに幸せだと思えるライフスタイル等を今後どう構築して行くか、ゆっくり考える事が出来る、とても贅沢で有意義な状況であると推察します。地銀マン様の今後の益々のご活躍を心よりお祈り申し上げます。

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