2010年2月10日水曜日

「秒速5センチメートル」と「成長」の先にあるもの

(出所:秒速5センチメートル)

雑談編。
DVDの「秒速5センチメートル」を鑑賞。
新海誠の作品は、どれもアニメだから可能な手法で「子供の頃の原風景」を思い出させる感じで良い。日本のアニメ産業も中々難しいようだが、案外捨てたものでも無いなと、こう言う作品を見ると確認出来る。

主人公の男がちょっと自己陶酔おセンチ気味な事、携帯電話が無かった頃には地方都市にスタバはまだ無かったんじゃないか(スタバも上場企業。確か開示の店舗数の推移とか的に「あれっ?90年代で地方都市にスタバ?」とか細かい点が気になってしまう。職業病である)とか細かい事は気になったが、中々良かった。第一話の子供の感性での東京→栃木県の電車の長い距離感の表現、第二話の女の子の告白が中々出来ない微妙な心の動きの描写(おじさんになるとすっかりこう言う感覚が過去のものなので、懐かしくなるものである)、第三話の主人公のリアルな荒み具合と最後に感じられる微かな希望、その他作中のストーリー展開に合わせた微妙な映像面や台詞内でのメタファー等、中々よろしい。

また、映像美が特筆すべきで、最初に掲載した桜の映像を初めとして、背景の映像美に対する執着は特筆すべきものがある。現実に限りなく近いが、一方で完全な写真よりは意図的に解像度を落としたり、陰影やバランスをディフォルメしたような映像で、「誰もが子供の頃に持つ心象風景」にリーチするような映像面の演出・工夫が為されており、この点素晴らしい。

脚本の言い回し(独特の比喩が多い点)、その他子供の頃の淡い恋の描き方、その他全体の雰囲気等、村上春樹のアニメ版のような感じである。村上春樹の小説を、新海誠氏に映像化して貰ったら結構面白いものになるんじゃないかと。あるいは村上春樹氏に脚本を書いて貰って映画を作ったら非常に良いのではと。天門と言う作曲家のピアノ曲も中々良い。以下で採譜した楽譜が取れる。練習中。。。


他のBloggerを見ると、中国とか、チリとかのブログでこの作品をお気に入り映画に挙げている人が居たりして面白い。

例えば経済成長著しい中国人がこういう「成熟した国、成長の無い国ならではとも思える、過去の美しい原風景・想い出の呼び起こし」的な映画を観て、良いと思うのだろうか?と思うと興味津々である。あるいは急速に経済成長してしまって、沿海部の若い人々などは、既に急速に感性が「先進国のお疲れモード化」しているのかもしれない。

まあ成長成長言われても疲れる、株式市場が将来の成長を一瞬で織り込んでしまいもっと成長しろと言われると段々問題も出て来る、と言うのは万国共通である。中国もすっかり市場経済であるし、これに翻弄される個々人は中々大変だろう。「もうそろそろいいんじゃないんですか」とか、「もうそろそろGDP成長率からGDHに移行しよう」とか、「そもそも金利とか資本コストと言う概念の存在から、色々問題が出て来て居るんですよ」とか、誰が言い出すんだろうか(注)。最近経済学者でもスティグリッツ等がこう言う事を言い始めては居るけれど、まあ筆者のどうにかなる話では全くない。

中国を観ていると、2015年位から早くも高齢化社会に悩む事になり始めるし、何だか他の国が何十年もかけて経験した「新興国→先進国→成熟・ピークアウト」の流れを、もの凄い駆け足で駆け抜けているようにも思う。

そう言う意味では、こう言う映画が(ニッチ狙いでは勿論あるだろうが)案外中国(や他のエマージング市場)に通用するようになるのかも知れない。「ジャパニーズ的、もののあはれ感性」が中国10億人、あるいは沿海部の数億人位にでもリーチする事になったら、これは結構凄い市場規模である。経済規模では既に日本が中国に抜かれる事は確実なので、日本が残る道は文化面等で活躍する事だろう。


(以下注釈)

(注)「モモ」を著した、ミヒャエルエンデ氏辺りは生前にこう言う事を言っていた。「モモ」はマネー資本主義の構造を結構強烈な皮肉でもって非常にシンプルに書いた、資本主義を学ぶ上での好著である。


この本で出て来る、「灰色の男」「時間の節約」とは詰まる所、金利・資本コストの事である。時間の経過自体に金利が付くから、出来るだけ短期間で効率良く資本を回さないといけない、高リターンを上げないといけない。そこから全ては始まる。

そして例えば上場企業は株主資本コストを満たすROEを出すべく従業員は馬車馬のように働いたり用済みになったりすればリストラしないといけないし、利益が横ばいでは段々ROEの分母が増えて行って利回りが落ちるので増益し続けないと行けない、と言う何だか胃のキリキリする話になり、、、あれ、何だか「モモ」の話みたいじゃないか、と言う事になる。

興味のある方は、「エンデの遺言」等も読んでみると面白いだろう。

1 件のコメント:

  1. ちなみに、天門氏作曲の曲はこちら

    http://www.youtube.com/watch?v=IG_FY3v0uWk&NR=1

    上記はエンディング用にアレンジされた「End Theme」ですが、曲名は、「想い出は遠くの日々」です。海外での人気が高いようで、驚きました。ジャパニーズ「あはれ」万歳。

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