2010年3月5日金曜日

「資本主義Matrix」を超えて:マネーとの適切な付き合い方 続きその3

(出所:http://www.publicdomainpictures.net/)

マネーとの適切な付き合い方について、更に続きである。

今までの所で、以下のような点について述べて来た。

・適切な自己評価、自己信頼を持つ事。
・適切な自己信頼獲得のプロセスにおいては、子供時代の教育や親からの影響、過去のトラウマ等が複雑に関係している事も多いので、場合によってはコーチやカウンセラーも活用する事。
・負の感情で突っ走り過ぎない事の重要性。
・他人と比較せず、マイペースで自分にとっての自分なりの”楽しい””幸せ”にフォーカスする事の重要性。
・生活に必要な、交換手段としての「お金」については堅実な知識と獲得のための必要な努力と運用を。信用、パワーの大小を表す概念としての「マネー」については距離を取る事。
・後者の「マネー」に関連して、恐怖と欲望を煽って儲けようとするような、お話「モモ」で言う所の「灰色の男達」に騙されないようにする事。
・具体的には、教育、新築マイホーム、老後資金、二極化進展下での勝ち組になる方法・経済的成功を得るための方法、と言った分野が要注意。関わる「マネー」の額が大きくて、あたかもそれが、生活に必要な「お金」であるかのように見せかけられるような分野で「灰色の男達」は活躍し易い。特にこの点で実際にはそんなにカネがかからない事、一般世間で言われて居るような費用はかからない事を理解し、恐怖や欲望を煽られないようにする事。

以上で概ねの所は語ったかとも思うが、今回以降で、もう少し各論について話してみたい。
今回は、会社、仕事との付き合い方についてである。


○「会社」「仕事」との付き合い方について。

・イキナリ起業する必要はない。

まず、一般的には、イキナリ起業する必要は無いと思う(注1)。IT等の分野でよっぽどの新技術を開発したとか、本当に美味しいビジネススポットを見つけた等が無い限り、学校を卒業したら、当面は会社員で良いと言う事である。人生そんなに焦る事はない。

勿論、「会社員なんて一番収奪される一番冴えないありようですよ」「人生つまらなくないですか?」「上司にへこへこするなんてバカバカしくないですか?満員電車に乗って毎日通勤するなんて嫌じゃないですか?」「楽して不労所得が欲しくないですか?」等と言う者も居るだろうし、部分的には頷ける面もある。

しかし、大学を卒業してから当面の間、特に20代〜30代半ばまでの間位は、会社員と言う商売は、そんなにリスク/リターンは悪くないし、美味しい面も沢山ある。以下に利点を幾つか挙げておこう。

・電話の応対、名刺交換のやり方、挨拶、飲み会の幹事その他、社会人として必要なマナーとスキルを無料で身に付けられる。社会人マナー等の先生に教えて貰うと何十万円もかかる内容である。こう言う基本動作を身につけないうちに起業してしまうと、確率的には不幸な結果になる事が多くなる(勿論10代で起業して成功する人等も居るが、これは例外の部類)。この上、英語研修や語学学校代の補助にTOEIC等の得点に対する手当、資格取得の補助や手当等が付く会社もある。活用しない手はない。

・社会的信用を身につけられる。何年かでも、会社員をキチンとやっていたと言う信用を身につけられる上、知名度の高い会社であれば仮に独立した後も、「元××」と言う肩書きを活用出来る。例えば金融業界なら以前紹介した通り、「元野村、元大手外資系金融出身」と言うのは、ヘッジファンド等設立して独立する際に助けになる。その他、元大手商社、元大手広告代理店、元大手製造業、元リクルート、と言った肩書きは、独立した際にこの手の信用があると無いとでは、ビジネスのやり易さ、営業のし易さ、信用して貰い易さが格段に違う。

・自然と「ある程度優秀で、信用出来る人脈」が出来る。会社員だと当たり前の常識(例えば詐欺で儲ける等をしない、契約ほおり投げて夜逃げ等しない、等)が、起業家ワールドでは全然通じず、有象無象が出て来たりする事も少なからずある。会社員、特に大手企業同士の取引先等との付き合いであればこう言う事は非常に少ない。

・特に20代のうちは、会社員としての金銭面でのリスク/リターンはそんなに悪くない。普通にキチンと仕事を覚えて仕事が出来るようになって、仕事に必要だったり持っていた方が良い関連資格を取って、英語力や対人スキル等のソフトスキルもマイペースに磨いて、と言う事をやっているだけで、自然に給料も立場も上がる場合が過半である。言ってみればノーリスクミドルリターンが狙える。新卒時に年収300−400万円程度の人なら、こうやってやって行けば30歳の頃には年収600−800万円位にはなっているだろうし、日本企業の一部や外資系企業なら30歳前後で年収1000万円程度には、普通の人間でも比較的普通になれる。


一方で、会社員と言う商売、ビジネスモデルには欠点も少なくないので、以下の点に留意しておくと良いと思う。

・30代以降は会社員の給与は幾ら努力しても頭打ちになり、40代には給与が減り始め、また不況時には肩たたきやリストラの対象になる場合が多くなる(注2)。

対応策:20代の終わり、30代位から、日々の業務等は部下に委譲して自由な時間を作り、週末等に副業を始めると言った手段で、「会社員をやらない状態、会社の外で何が出来るか」を徐々に模索して行く。会社の外で趣味やボランティア活動等始めるのも良いだろう。単純に人生を楽しめると言う面もあるし、趣味だとか、仕事の外の利害のない友人だとかが後に独立する際等のきっかけになる、と言った事は結構ある。

・満員電車は、確かに人の心を疲弊させる。

対応策:満員電車については特に若い頃、独身の頃は職住近接にする等の対応を薦める。あるいは家賃等の関係上ある程度郊外にならざるを得ないと言う事であれば、朝早く起きて座れる時間に会社に出かけて電車内を睡眠時間や英語のリスニング等の勉強時間に充て、会社の始業前にちょっと仕事をしたり、あるいは会社の近所の喫茶店等で資格の勉強をしたりする習慣が出来ると尚良い。若い頃にこう言う習慣が出来ていると、歳を取ってからも確実に見返りがある。

・上司の関係等も人の心を疲弊させる。

対応策:ある程度は諦めて受け入れる。やりづらい人物との距離の取り方や接し方等を学べる面もあるし、「会社員の悲哀」のようなものをキチンと理解している、そう言う理解を持って周囲の人と接する事が出来る人間力と言うのは、起業してからも必ず活きる。また、もう出世はいいやと言う段階、あるいはある程度仕事が出来るようになった所で、嫌な上司とのやり取りは用件だけの最小限にしたり、比較的和やかに運営されている部署に異動を申し出る等の対応は取れる。

・前回も書いたが、住宅ローンで新築を買うと財務バランスがJAL並みに悪くなる。

対応策:賃貸で過ごす。買う際も中古物件を買ってリフォームする事を先に考える。不動産は住むものとしてでなく運用するものとして考える。会社員だとついついローンが組み易いし、周囲の人も新築の家を買っていたりするが、新築はとにかく割高で、筆者から言えば裕福な人の趣味である。この点をキチンと理解する(注3)。以下の人気ブログにも書いてあるが、10年以上ローンを組まないと返せないような家は買わない事である。


・節税がしづらい。源泉徴収で節税余地がなく確実にがっぽり持って行かれる。

対応策:会社員として可能な範囲で節税する。例えば賃貸している自宅を会社の社宅名義にして貰い、年収から先に家賃分を引いて給与を貰うスキームにして貰えば、見た目上の年収を家賃分だけ下げられるので節税になる。転職時に会社に交渉したり、総務等に交渉すれば多くの会社はこの位はやってくれる。また、海外オフィス等があり海外勤務の機会がある企業で働いている場合は、香港等の所得税の安い地域での勤務にして貰うのも手である(香港は年収が幾ら上がっても所得税が15%なので、特に年収がある程度ある人向けの戦略)。

・・・会社との付き合い方は他にも書けば色々長くなるが、取り敢えずこんな所で。


(以下注釈)

(注1)ただし、学生時代に、借金しない範囲で学生ベンチャーとして起業してみる事は大いに薦める。多分上手く行かないだろうが、その失敗の経験も含めて非常に勉強になるだろう。

借金さえして居なければ、失敗しても会社をたたんで就職活動して会社員になれば良いのでリカバリーも極めて容易である。就職活動の際にも、学生時代に起業したが上手く行かなかった、こんな学びがあった、既に利益を生んで成長出来ている企業組織の偉大さを思い知った(実際偉大なので、学生さんにはぜひ思い知って頂きたい)、御社に入ってビジネスについてキチンと学びたい、等と言うのは企業側も非常に高く評価するポイントである。採用の優先順位としては最上位の部類に入れるだろう。

一回会社員をやって、企業社会は嫌だから会社員を離脱して起業したと言う人間が会社員にカムバックするのは大変であるし、企業側も採用を嫌がる。しかし学生時代に起業して、上手く行かなくて、会社員として学びたい・ビジネスマンとして磨きたいと言うのは話が別な訳である。リスクは極めて限定されている上に、起業が成功すれば勿論大いにラッキーだし、成功しなくてもその失敗経験を就職活動でエントリーシートや面接で売り込めば簡単に採用して貰えると言う面での高いリターンがある。読者が学生であれば、この立場を利用しない手はないと思う。

(注2)これは上場企業を通算1000社以上リサーチして来た筆者の実感でもあるし、統計データが欲しければ以下の書籍も参照。もの凄い現実的過ぎてげんなりすると言う話もあるが、現実をキチンと知った上で過度に恐れたり、マネーを稼ぐ事ばかりに焦り過ぎたりしないように腰を据えて対応する、と言うのは大切な事のようにも思うので、紹介しておく。


(注3)多少上級テクニックにはなるが、会社の優遇ローン等で居住目的で中古の物件を安く買って、適当な理由を付けて家を賃貸に出して運用するのも良いだろう。周囲の知人でもそう言う人は少なからず居る。会社の信用を拝借して信用枠を安い金利で引っ張って来て、不動産の運用をしましょうと言う、サラリーマンだからこそ可能な資産運用になる。

信用・クレジットは元来タダではない訳だが、大手企業の会社員で、「居住目的」と言う理屈を付けるとと会社の信用をタダ借りして低金利での借入を引き出せると言う事、更には「居住目的」で借りたからと言って必ずしも自分が居住する必要はなく、賃貸に回す事が出来ると言う面に、このアービトラージの美味しさがある。

ただし、不動産投資の際には前勉強をしっかりする事。適切な家賃を取れて空室が出ないような中古物件を、リーズナブルな価格で買えないとこのディールは上手く行かない。資金調達を安く引っ張って来ても、運用側で失敗すれば勿論損失になる。(投資によるいかなる損失も筆者は責任を負いません。投資は自己責任で。)

3 件のコメント:

  1. 二度目のコメントになります、4月から内資の大手運用会社に勤める者です。
    サラリーマンである事に対しての不安が若干解消するエントリをリアルに書いて頂き感謝しています。私は今のところ
    ・日本におけるカントリーリスクの回避
    ・自身として高い目標を持つことによる能力向上
    ・単純に長期旅行で海外居住が肌に合っていた
    ・ホワイトカラーからゴールドカラーへの進化(chikirinさんの日記から)
    という理由で社内教育システムの活用→海外勤務→海外居住というルートを模索しているのですが、実際のところ運用会社の穏やかな社風や入社前後のギャップが気にかかります。仮に著者様が私の立場であったら、あるいは私にアドバイスされるとしたらどういったものがありますでしょうか。
    長文失礼いたしました。

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  2. コメントありがとうございます。

    英語をBusiness fluent位にはなりましょう。TOEICなら900点内外です。
    日本の証アナではなく、国際的にちゃんと通用するCFAを取りましょう。
    この時点で日本国外も含めた就労機会はだいぶ広がります。
    あとは小生の課題でもありますが、中国語の勉強をしましょう。
    日本株を、パンアジア全域における日本、と言う位置づけで観る癖を付けましょう。
    日系の大手ロングオンリーのまったりした社風はそれはそれとしてあしもと享受しながら、適度に距離を置きましょう。日系大手ロングオンリーの運用に、大きな成長機会は残念ながら今後はないと思います。IFRS適用と共に、日本企業の年金運用はリスクを下げざるを得ません。日本株ロングオンリー偏重の現在のポートフォリオも見直さざるを得ないでしょう。地域で海外投資に行くか、アセットクラスでオルタナ等別のアセットクラスに展開するか、日本株のエクスポージャーが欲しいならパッシブでいいじゃん。こう言った流れが本命でしょう。

    後は、余り将来の事に対する不安を抱かない事です。恐怖や不安は冷静な投資判断を曇らせます。ブログでも書いた通り、他人の役に立とう、誰かに貢献しようと言う気持ちと、マイペースで自分の合った分野でスキルを上げていく前向きな心持ち、心身共に健康なご自身のありようさえあれば、何かしら道は拓けますし、日本が今後PIIGS諸国程度の位置づけになるにせよ、どうなるにせよ、何かしら人生どうにかなると思います。

    chikirinさんの日記をチェックされているような、意識の高いvierさんであれば、道は自然と拓けると思います。お互いそんなに頑張り過ぎずに適度に頑張りましょう。

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  3. 更にもう少し追加するならば、「会社員時代、特に新卒で入った同期・先輩等で、利害抜きにして付き合える親友」を、数は少なくても良いので作る事、ですね。会社との距離感はある程度の割り切りを持って余り期待し過ぎない方がよいとも思う一方で、その中で働く個人とは、濃密な関係を持てると良いのではないかと思います。

    経験上、新卒の同期は良くも悪くも学生の延長なので、余り政治や利害を考えずに純粋な友人が作り易いです。今時一つの会社で同期との出世競争を勝ち抜いて・・・なんて考えて居る人も少ないでしょうし。そして数年経てばかなりの比率で皆あちこちに散って行き、気づいてみたら有効なビジネス上の人脈になっていたりするものです。転職を重ねて出会う先にこう言う友人が出来る事もありますが、立場がある程度になって来ると職場内での政治や利害も出て来るので、新卒の時より親友を作れる率と言うのは落ちて来ます。新卒で入った会社で出会う人達とのご縁や関係は、特に大事にする価値があると思います。

    何より、利害や掛け値なしの友人は、人生を豊かにしてくれます。ビジネスに限らず、人生そのものにとっても、後々にかけがえのない無形資産になると思います。

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