2010年4月15日木曜日

米国労働市場の現況と、それに関して思う事。


この際何でもありだろうと思ったので、米国のヘッドハンターにもアポイントを取ってみた。

○中々厳しい状況

米国の日本人労働市場は中々厳しいようである。

・野村が米国でのプレゼンス拡大のために大量に人材を採用しているが、殆ど現地サービス拡充のための現地人の採用であり、日本人の採用は少ない。

・米国で仕事をするために必要となるH1ビザの発給については、2008年までは大いに過熱感があり、募集開始の4月1日で55000人分があっという間に終了してしまうと言う状況だった。一方で、2009年については12月にやっとスロットが埋まるなど、逆に企業側が海外からの採用を大幅に絞る、ビザのサポートを止める等の状況が起きている。

・日本から見た外資、米国現地の金融機関、ヘッジファンド、運用会社等については、移民枠を大幅に削減したり、一切ビザのサポートを受け付けない等の事態が起きている。景気回復感とは言ってもまだ10%内外の失業率がある上、新規でしかも海外からのワーキングビザ採用となると先行きに対してかなり慎重な事が理由である。やはり不況時には自国民の雇用が優先される。

・また、全体に米国の労働市場において、日本人の需要が落ちている。グローバルにおける日本の地位が落ちているため、例えば日本株のアナリスト、ファンドマネジャー、セールス等の人材需要が低下する一方、同アジア株、アジア人の需要が伸びている。日本に詳しくて日本語が話せると言う強みを使わずとも、グローバルでガチにやって行ける人材になる事が要求される。

・とは言え、最近採用活動が活発化して来て居るので、この点に期待してベストフィットを探す、と言う戦略になるだろう。

う〜ん、やっぱしジョブレスリカバリーin USなのねと言う事を実感させられる状況である。


○そりゃ正論なんだけれども、、、

「日本に詳しくて日本語が話せると言う強みを使わずとも、グローバルでガチにやって行ける人材になる事が要求」

・・・これは正にその通りなのだが、正直中々しんどい。筆者の経験も日本株しかないし、英語もネイティブではない。真にグローバルな人材になりたくとも、最初の参入部分で中々そう言う仕事を得るのは難しい。しかし確かに必要な事なのだろう。

今まで外資系金融機関のアジアにおける本部拠点が東京だったのも、日本株の運用者やアナリストに人員を大量投入していたのも、全ては日本が世界で2位のGDPを誇っていて、製造業を中心にグローバルで見てもキーインダストリーが幾つもあったからである。

P&G等の消費材の分野でも、彼らが日本に昔はアジアパシフィックの本部を置いて居たのは、日本市場は先進国でも最も消費者の層が厚く発達した市場なのでマーケティングの最前線としての価値があったからである。


しかし今や日本市場の証券売買の出来高は上海に抜かれる状況で、先物に関しては東工取などグローバル10位圏外である。日本企業のグローバルにおけるプレゼンスも全体に低下している。日本の消費動向は「ガラパゴス化」のきらいがあり、昨今熱い成長が期待される新興国の需要動向とは剥離してしまっている。P&Gはキーになる人材を兵庫県からアジアに移管して、今や最重要地域は日本ではなくAsia excluding Japanとの事である。

ヘッジファンド業界でも、米国株やアジア株と違って日本株の場合長期で見ても上方バイアス、ほおっておけば長期では上がると言うトレンドが無いため、L/Sでプラス15%以上のリターンを上げるのはアジア株や米国株に比較して遥かに難しい。長期上方トレンドがあるなら、ロングバイアスにしておけば基本線リターンは出易いのである。このようなトレンドが無い、あるいは下がるトレンドでL/Sで勝つのは難度が遥かに高い(注1)。結果として、高度な職人技が求められる割に、高度なんだけど派手なリターンが中々出づらいのでニーズが無い、と言う状況はそこここで見られる。日本人の運用者が全体で見て特段下手だとは思わないしむしろかなり微に入り細に入ったリサーチなり細かいアヤを取るようなトレーディング、あるいは景気循環に対する高度な判断が要るため、腕自体は全体で見れば比較的良い部類なのではないかと思う(注2)。しかしこんな所にもイノベーションのジレンマである。液晶パネルや家電をどんどん高度化していっても最後には最終顧客がその限界的な品質改善に対して対価を払わなくなり、元々安かろう悪かろうだったアジアのプロダクトが品質改善して売れて来るのと同じである。和製ヘッジファンドの苦境は、こう言う状況を反映しているように思う(注2)。

もちろん、日本の地位が落ちると言っても2050年でもGDPは世界8位(byゴールドマン予想)であり、先進国の一つではあり続けるだろうし、電子材料等の分野で世界的にもニッチトップの強い企業は幾つもあるし、別に生活が出来なくなる訳では無いだろう。イタリア人もフランス人もスペインやポルトガル人も、世界の中心からは脱落しても、ソコソコ心身豊かに生活はしているし、金融の仕事だってない訳じゃない。日本の株式市場だって最近堅調だし、ロングバイアスで中小型とか持ってたら勝てちゃうみたいなワンチャンス位短期的にもあるかも知れない。全体で見れば厳しくとも、ヘッジファンドと言うビジネスモデル自体の良さ、金融と言う大量のマネーの流れる所に居ると言う立っている場所の有利さから、個人ががばっと稼いで引退するチャンスも勿論今後もあり続けるだろう。そんなに人生焦る事はない。

とは言え、何と言うかこう、世界のありようが、徐々に、しかし次第に早く、構造として変化している事を痛感する。氷河が陸から移動して海中に落ちる時、当初は動いているかどうかも分からなかったのが、海に近づくにつれて加速して、最後には一気に崩落するような絵を見ているかのようである。この例えだと氷河が日本か。ちょっと物騒な例えをしてしまったが、似たような感覚である。

うーん、こんな事神妙に考えててもしょうがないっつう事で、ハワイで仕事でも探そっかなあ(笑)。冗談ですが(注3)。


(以下注釈)

(注1)下がるトレンドならショートバイアスにしておけば良いじゃないかと思われるかも知れないが、ロングとショートは非対称である。ショートの方が借株の手当が必要と言う制約がある。ショートスクイーズ・急激な踏み上げがある。リターンは理論上株価がゼロになるまでである一方で損失リスクが理論上無限大である。これらの理由で、ショートバイアスファンドと言うのは難度が高いのである。実際やるとその辺は実感出来るだろう。マーケットが弱いだろうなと分かっていても大幅にショートバイアスをかけるのは相当勇気が要るし、PLのボラティリティも高くなる。

(注2)最近筆者がヘッジファンドの特に日本株L/S関連の面接をしていて時折感じる違和感も、恐らくこう言った所から来ている。

微に入り細に入らないと勝てない上に、微に入り細に入る事による限界リターンが落ちている、微に入り細に入る事に対して最終顧客が対価を払わなくなっているつまりイノベーションのジレンマの最終段階に入っている、競合が過密になっている、業界が成熟してしまって自分の取り分のピザは殆どテーブルに残っていない。

こう言う事の反映が、業界の採用方針がMBAs的秀才や優秀なオペレーターが求められるようになりつつあるとか、競合が激しくなっていると言った事柄に対応するのである。どれも、産業が成熟して競合過多になり、儲からなくなりつつある時の典型現象である。

これから成長する産業、あるいは残存者メリットが取れる産業では、「やりたい」と言ったら「その気持ちだけで即Welcome」で、熾烈な経歴競争やクリティカルシンキング競争など、大体においてないものである。山を再生したりスタートアップの人の手伝いをしたりする事に久しぶりのExcitementを感じる、と言う感覚にも繋がるように思う。今は全然お金にならないが、アップサイドの余地を感じると言う事である。

とは言え一方で、霞を食ってはやって行けない。既に引退出来る位の資金量が手許にあれば当面持ち出しで構わないからスタートアップ専業で夢を追いかけるのも良いが、筆者の場合そうも行かない。この辺のバランス感覚が求められている事を痛感する。

何とかしてもっと大らかでピザが殆ど丸まる残っていて取り分のあるマーケットに入るか、あるいは成熟しつつある日本株の運用で何か新しい事やニッチなやり方を模索をするか、エッジを磨き上げていってより差別化するかしないといけないのだろうな。やっぱり。最近色々考えさせられる。

イノベーションのジレンマについては下記参照。産業がどのように成長して衰退して別のプレーヤーに取って代わられるのか、と言った見立てをするには非常に参考になる書籍である。


(注3)しかし10%位は冗談ではない面も無きにしもあらずである。

0 件のコメント:

コメントを投稿