2010年7月31日土曜日

メモ:日経ヴェリタス2010/6/27号より

再編ネタは好きなので、ちょっと古いがupしておく。

○日本の業界再編の話。

上記の通り日本企業、あと米国企業もだが、企業サイドにキャッシュが積み上がっていると言うのは理解しておくべきポイントである。だから銀行は貸出ニーズが無くて困っているし、しょうがないから国債で、と言う話でイールドカーブがはみがきチューブ潰しのごとくフラットニングして来ているのである。

背景として、日米ともデフレリスクがある点が挙げられる。デフレ=キャッシュの価値が高くなり、モノの値段が下がる、と言う事なので、キャッシュで持っといてもっと安くなった時にモノを買ったり投資したり買収したりすればいいや、債券も長期債を持っていても良いや、と言う事になるのである。インフレの場合はキャッシュで持っているとキャッシュの価値が落ちていき将来のモノの値段が高くなるので、早く買っとかなきゃ、投資しなきゃ、M&Aするなら早くしなきゃと言う事になるし、債券も将来貰えるクーポンの額が一定(物価連動国債は除く)なので将来の実質価値が落ちる事になり、長期債の価格は下がりイールドカーブはスティープニングする事になる。

慣れて来るとそんなに難しい事では無いし、同業者で読まれているかたには釈迦に説法みたいで恐縮だが、こう言う基本的なマネーの性質、マネーがどこに溜まっていて今後どこに流れそうなのかと言う視点を、アセットクラス、国、主体(政府、企業、家計など)をまたいで全体感で持つと言うのは結構大事である、と言うか実務的にはこれが殆ど全てであり小難しい理論は余り必要無い。

当期利益率が日本の方が低いから、再編して強くなりましょうねと言う理屈。

但し法人税率が日本は40%と米国や他の諸国より高いので要注意。利益率が低いとかROEが低いとか議論する際に、案外「日本の法人税率が高過ぎるからそうなっている部分もある」と言う点が話題にならないが、再編不足とか企業の競争力とか企業運営の効率性と言う面以外に、単純に税率が高過ぎると言う面もあるので注意である。

企業価値についても、法人税率が例えば40%から30%に下がれば、今まで経常利益が100で当期利益が60だったのが70になるので、2割近く日本の当期利益は上昇し、株価も応分に上昇する事になる。

思うに、法人税率下げるよとアナウンスして、政府の保有するNTTとか郵貯の株を国防面から問題にならない程度に売り出しすれば、よい財政の穴埋めになるんじゃないだろうか。中国なんかだと平気でこう言う「自分が賭場の胴元兼参加者である事を利用した、微妙に怪しいんだが究極のインサイダープレイ」を政府がやっている。もうちょっと参考にしてもよいのではないかと思う。ゴールドマンや野村證券辺りでこう言うダイナミックなスキームを政府に提案しても良いのではないかと思う(筆者はバンカーになる気は無いしそう言う分野にエッジはないのでパスですが)。主幹事になれたら、儲かりそうだ。

良い視点だ。マーケットシェアのパイチャートを見て細かく分かれ過ぎているとか、小粒だけど特定分野で面白い企業があったりすると、そこを狙って行く、と言うのが基本的な考え方である。

M&Aの時はEV/EBITDAで見ます。

最近のディールはこんな感じ。


○アジア利益ランキング。

欧州同様、地域プレイするときに手許にあると便利なので。主要企業は暗記しておくと良い。反射神経で動く時は、どれだけ覚えているかが結構ポイントになる。


○カーライル
最近は以前程ファンドの影響力は聞かれなくなったが、チムニーのように上場株のMBOを手掛けて来る事もあるので、動向はチェックである。

ちなみに、プライベートエクイティも「好況の時にはブイブイ言うけど不況になるとしんどい、グローバル信用需給の上下が命のシクリカルプレーヤー」である。彼らの真骨頂は、クレジット市場が良好な時に低いクレジットスプレッドで借入調達して、レバレッジを利かせる事でエクイティ部分のリターンを水増し、失礼レバレッジを利かせる事にある。株主資本が多過ぎのキャッシュリッチ企業なんかだと特に、こうやって資本構造をいじくる事で、資本コストの低下(Valuationの分母の割引率の低下)を通じてバリューアップしているんだと言う事にもなる。金融マンが出来るのはまあ、運用側の事業についてはリストラだの不採算事業の切り売り程度のもので、基本線調達側をいじくる事である。これでバリューアップなのかと疑問を持たれるかた、その思考は健全だと思うが、そう言うものなんである。

勿論、リーマンショックのようなクレジット危機が起こると、こう言ったレバレッジプレーヤーは壊滅的な打撃を受ける。殆ど不動産デベだとか、ヘッジファンドで言えばLTCMみたいな薄いサヤをレバレッジで水増ししていたプレーヤーと変わらない世界がそこには広がっている。

今でも生き残っているPEは、比較的低レバレッジで堅実にやって来た、ちゃんとバランスシートの調達側いじりだけでなく、事業側でも付加価値を出して来た、と言う所なんだろうと思う。

金額推移を見ていると、ファンドにパワーがあったのは2006〜2008年位がピークと言う事になる。業界に居た筆者の実感とも概ね一致するように思う。

○社債、債券の保有状況。

日本は銀行と保険と年金基金が社債保有の3/4を占め、政府も社債を持っており、個人や海外が少なく、発行額の総額も経済規模と比較してアメリカより遥かに少ないと言う傾向にある。一方で、米国の場合は社債市場に厚みがあり、銀行と政府は余り保有しておらず、保険・年金、投資信託、個人、海外の保有が結構多い。こう言う構造を持っているのは注目である。

例えば、日本の場合、銀行の預金が社債に投じられていると言う事だし、今後年金基金が年金支払超過で資金流出する側になった場合彼らが債券を売却する事は十分考えて良い。

また、欧州のストレステストでも分かるように、銀行はトレーディング目的と満期保有目的でリスクの取り扱いが違う面があるので、銀行のバランスシート的にリスクが取れない時は満期保有で塩漬けにする場合が増える、と言った投資行動も推測が付く。

保険についても人口動態の動向は注目である。日本では今までは恐らく、支払がかなり先になると言う保険加入者側の事情を配慮して、長期債のニーズが高かったのではないかと思うが、保険加入者の平均年齢が高くなるにつれて段々短期債での運用にシフトする、長期の調達が難しくなる、と言った事も長い目で見ればあり得る。

この場合、JRとか電力会社とか、長期債での調達が必要な会社にとっては調達環境に影響が出る可能性も長期的にはある。例えばもっと海外向けに債券のIRをしなくてはいけなくなる可能性が高くなるだろう。

また、全体として安全確保重視の投資主体が日本では多いため、ハイイールドボンド、ジャンクボンドの市場が余り育って居ないと言うのもあるように思う。もっとここが分厚ければ、キャピタルストラクチャーアービトラージなんかもやりがいがあるだろうし、Distressed debt=不良債権とか不動産絡みの話とかばかり、と言う雰囲気感も変わって来るかも知れない(筆者のようなマーケットオリエンテッドな人間がトレーディングでこう言う分野に参入すると言う事が可能になる)。

筆者は債券のプロではないので、債券のプロと話が出来たらこの辺の話はちょっと聞いてみたい所である。


○銘柄紹介:タカタ
自動車部品で、系列依存が無い会社に投資したい場合は良い会社だろう。地域も日本の自動車関連企業には珍しく、北米やアジアだけでなく日系完成車メーカーが攻めあぐねていて弱い欧州にもビジネスがある。ギリシャ危機等の際は善し悪しあるが、他社にない点である。

一方で、安全保安部品を扱うため、リコールだとか補償だとかの話に巻き込まれるリスクはある。
PERと利益の戻り率。利益が戻ってる割に割安だ、と言う事が言いたいのだろう。

○銘柄紹介2:日本製紙。

短期的には足もとの紙製品値上げの話が一巡してしまったので株価的に面白くないが、隠れアジア銘柄の素質のある銘柄である。

○人民元建て資産で何に投資出来る?

中国政府の都合により、急激な元高にならない程度に、徐々に元での投資に門戸が開かれて来るだろう。

○国債発行額と預貸金ギャップ。

資金の流れを見る上で非常に良い図。現状の所、高齢化は進んでいるものの人々の安全資産シフトで預金が増えている。一方で、貸出先の企業は最初に紹介した通りでキャッシュ余剰で借りたいというニーズが無い。結果として新規貸出先の約定金利はどんどん下がってしまう事になり、じゃあ国債しか投資先が無いよね、と言う話になっているのである。

この均衡がいつ、どう言った場合に崩れうるのか、と言うのを考えるのが債券投資の際には非常に重要になるだろうし、株をやる側にとっても金利の変化やお金の流れの変化は株にも勿論影響は出るので重要である。

0 件のコメント:

コメントを投稿