2010年9月26日日曜日

のべ548銘柄分・・・(そして日株についてふと思う事)

のべ548銘柄分の昔のノートがevernoteに取り込まれ、筆者の過去取材データベースとなった。限られた取材ノートしか手許に残していなかったので、実際の取材実績量の恐らく半分にも満たない形になってしまった点は非常に残念。しかしそれでも、ノートを見返すと、ああそうそう、この銘柄取材したっけな、あんな銘柄だった、と浮かぶ状態の完全自分仕様のデータベースが出来た訳で、一方で機関投資家が投資可能なユニバースは約1000-1500銘柄程度である事を考えると、分随分心強い道具になってくれそうである。

後はこれに、業種、時価総額などの銘柄特性、ベットする要素(これは企業秘密なので詳細には言えないが、調査する際には「ここのポイントにbet出来るかも知れない/したい」と言った仮説を持って取材をするものである)、等でタグ付けをすれば、更に使い易いものになりそうである。今後の相場展開で、同じ要素にBetしたい状況になった際は、端的に活用が可能だ。こう言う反応力が上がるのは、非常に大事な事だ。


○ふと思う事。

しかし、こうやって見ると、日本株については、概ね「アナリストとしての銘柄探しの旅」は一周やってしまったんだなーと痛感する。

出来れば、「日本株に詳しくなった、ボトムアップの調査を沢山やって来ました」と言うエッジを活用しつつも新たな稼ぎのフロンティアに進出したいし、する必要がある事を最近実感する。

理由は、日本株オンリーのボトムアップリサーチ需要自体は、今後多くは期待出来ないだろうからだ。

元々は日本企業自体が世界におけるプレゼンスの高い主要産業が数多くあったし、上場している日本株は、その銘柄の数(4000銘柄弱)、業種の幅の広さ(概ねどんな業種でも上場している)、流動性(元々は米国株に次ぐ時価総額規模と流動性があった)、どれを取ってもグローバルに見ても充実した市場であった。従って、日本にアナリストを配置して日本株を調べる事に対するニーズは高いものがあった。日本株のアナリストと言う職種で雇用が過去大量にあったのは、こう言った環境面の恩恵もかなり大きかったように思う。

一方で、昨今だと、上位のような日本株の優位性が失われて来ている。以下、関係者はげんなりするかも知れないが、幾つか状況を列挙してみる。


・実質的な銘柄数は見た目よりも現在は少ない。

上場銘柄数は今だ3800銘柄あるものの、IPOが減る一方で上場廃止銘柄も多いためその数は減っている。筆者的には、上場している意義が感じられない銘柄もまだまだ多数あるように思う事を考えると、四季報の厚さは長期的には最終的に半分位になっても全然おかしくないようにも思う。また、何度か指摘しているかも知れないが、流動性の乏しくなった現在の状況のもとで機関投資家が投資可能な銘柄ユニバースは、かなり中小型株もやって良い会社でも実質として1000銘柄ソコソコ程度と思う。つまり、見た目程日本株内でストックピッキングで差別化する選択肢は無いのである。


・流動性の枯渇も深刻である。

流動性は厳しい事この上なく、往時より大幅に薄いものになってしまった。昔は東証の売買代金が1日で3兆円程度ある事は珍しくなかったが、今や1兆円ソコソコである。証券会社のセールス、セールストレーダー、リサーチ等の知人に話を聞くと、相当の危機感を皆感じて居る。


・日株で「長くて大きなトレンド、投資テーマ」に乗れない、「日株スルー」と言った事態が発生している。

更には日本企業が時代の最先端で活躍する事が減って居るように思われ、日株を使って大きな投資テーマにベット出来ない、と言った事態が最近目立つようにも思う。

例えばiPhoneやiPad、iTunesの台頭、クラウドの普及、データトランザクションの飛躍的増大、と言った投資テーマで、日株でシンプルにベットする先があんまりない!半導体やテックの部品は韓国やら台湾やらで組み立ては中国の製造受託会社で作ると言った状況でわないか!AppleやAkamaiみたいな「投資テーマのど真ん中銘柄」がない!と言った、「日本はスルー状態」の投資テーマが最近目につくように思うのだ。

日株対応は、こう言う大きな話でがばーっと取りに行くと言うよりは、チョッピー相場、細々した話(月次とか、決算の上下とか)でちょこちょこちょこちょこ何とかやる、と言う話が仕事をしていた頃もかなり多かったのが実際の所のように思う。

勿論こう言う対応、基本をしっかりやって、細かいリターンを積み上げて行く事も非常に大事なのだが、これだけだと早耳新聞記者的な要素だけが勝負になってしまうので、プロフェッショナルとしての付加価値が中々出しづらいし、端的に言えば仕事が退屈でつまらなくなる面もある。日々の仕事が、知的挑戦と言うよりは、アルバイトの作業みたいな感じになるからである。まあ単純な事で日銭拾いをせっせとやるのも非常に重要なんだけれども、それだけでは面白くない。面白くないとモチベーションが続かなくなるのでそれは良くない。

また誰でも出来るので、競合の参入障壁も非常に低いアプローチでもある。マーケット参加者としてもサヤが抜きづらくなる事は明白である上に、運用会社を運営する側からビジネスとして考えても、顧客に提供出来る付加価値が「早耳新聞記者だけ」では、顧客に対する訴求力に欠ける点も問題である。これはセルサイドアナリストの存在価値と言う面でもそうだろうし、ロングオンリーでもL/Sでも、日株ブティックの運用会社も共通して直面している問題だろう。

「早耳新聞記者的な基本動作」に加えて、何か「これが付加価値だ」と言えるような戦略やエッジが欲しいものであるし、筆者個人としてもそう言うフロンティアにこそワクワク感を感じられる訳だが、日本株と言う商材を使ってこれを出すのが中々難しい状況にあるのである。


・「新興国投資代替としての日本株」と言う地位も現在は失われている。

話の目先を多少変えてみると、昔は「新興国への投資を、流動性もありIR開示等の信頼性の面でもキチンとしておりValuationもバブルではない日本株経由でやりましょう」と言った触れ込みで日本株の価値を見出す動きもあり、これでもって日本株の専門家の立場がかろうじて保たれていた面も過去にはあった。

しかし、これも現在では説得力を失ってしまった。中国市場の流動性が整備され、IRも英語が堪能な人間がアサインされて英語である程度規模のあるアジア株であれば概ね取材も含めたリサーチが出来てしまう環境が整って来ているからである。IRの国際化対応と言う意味では、日本企業よりも香港や中国上場企業の方がずっと進んでいるようにも思う。


・Valuationでも、「敢えて日本」と言う程の割安感はない。

PERで比較しても、日中で大きな差はなくなっており、成長力の差を考えると、日株に投資するんだったらまず中国株行くよな、と言う状況になってしまっている。


・むすび

そんな訳で、「日株は結局為替だけ」程度のマーケットであったら、為替のストラテジストさえ居れば日株のリサーチカバレッジは完結する事になってしまうし、そんなんだったら直接為替でベットすればいい。わざわざ株をやる意味がない。実際、海外の機関投資家や年金基金等が日株に対して考えているイメージは、こう言う感じだろうと思う。

筆者としても、何とかブレイクスルーを見出したいし、「日本人だって、マーケットでグローバルに戦えるんだぞ」と言った形で一矢報いたいと常々感じて居る。しかし正直な所、中々突破口を見出せずに居る。もう少し言うと、実際にはブレイクスルーのアイデアはあるのだが、これを実行可能な舞台に上がるのが中々難しい、と言った方が正確である。マルチストラテジーやグローバルマクロの運用で日本人が参入する、と言う所が中々むずい。実際、機能が細分化されてしまっていて、マルチやグローバル投資系のファンドでも自身は日株しか担当出来ない、と言った制限がかかる事も多く、これを突破するのが相当難しい。生みの苦しみと言った所か。

そうは言っても、ジム・クレイマーの言う通り、"Always there is bull market somewhere."である。勿論日株自体にだって、ボラティリティがある限り、世の中が動いて変化している限りチャンスはある。否定的に「ここもだめ、あれもきつい」と考えるのではなく、常に「どこかしらチャンスはある」と言う思考で居ると言うのは、創造的な思考を促し、アイデア生成を促し、この商売をやっていく、と言う上で極めて重要である。日株を取り巻く現実をキチンと認識した上で、過去の資産も有効に活用しつつも、柔軟に前向きに行きたいものだ。

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