2010年10月12日火曜日

織田信長から何が学べるか

前回では、筆者が子供の頃のヒーローだった織田信長の改善点ばかりをけちょんけちょんにしてしまったので、今回は掲題の件について。筆者にとって、色々問題点はあるにせよ、織田信長は子供の頃のヒーローだった。


・ちゃんと現場まで自分で降りている。

「うつけ者」時代に野山を駆け回る事で尾張の地理に誰よりも詳しくなり、庶民と一緒に祭りを楽しんだりする事で地元の心を自然と掴んで居る。長槍や鉄砲等も自分で使ってみて改良したり戦略に取り込んだりしている。戦の際も自身も戦って居る。変な旧来の慣習等に対する拘りもなく、考え方も柔軟である。

相場で言えば、肩書きがどんなに偉くなってもBloombergを自分で叩き、四季報を自分でもめくり、Excel操作等も自分でちゃんとやり、発注も出す、と言う事に相応する。この業界で、自分でこれを全くやらなくなって、俺はもう偉いんだから、と言った具合のシニアはその時点で終わりだと思う。非常に重要な事だ。


・常に訓練しており、生活も整っている。

武芸の鍛錬は日課だったようで、酒は殆ど飲まなかったようだ。さすがである。


・人材登用等が実力主義で積極的。

羽柴秀吉はじめ、家柄等を問わず、ストリートから優秀な人材を何人も引っ張っている。家格等が重視された時代なので、相当に異例な事だろう。大変にイノベーティブである。


・善し悪しあるが、最初から「天下布武」と言う理想、旗を立てている。

余り大儀に拘ると前回書いた通りで色々歪みも出るのだが、キチンと目標設定してそれをビジュアル化しているのは、偉いと思う。


・一方で現実主義で、関係者の利害や次に想起される事態等を読み解くのが非常に上手い。

信長が現代の金融マンになっていても、相当稼ぐ人間になっていたと思う。


・案外義理堅く、家族や女性を大切にしている。

信長の残虐なイメージが先行している面もある一方で、下克上の世界において珍しく、同盟等は自分から破る事は殆ど無かった。また、戦国時代においては珍しかっただろうが、妻や女性の役割を重視している。身にしみる話だ。


・何しろ運が良い。それを活かしている。

桶狭間の戦いももちろん然りである。また、「浅井氏はお市も居るから裏切らないだろう」と言う、信長のassumptionの一番脆弱かつ、この前提が崩れるとオセロの角を取られたような感じで情勢が一気に変わってしまう「criticalな所」を突かれて一度は窮地に陥ったものの、信長包囲網が出来て武田が攻めて来た矢先に武田信玄が病没して、上杉謙信もタイミング良く逝去し、と言う運の良さが抜群である。

こう言う強運を活かせるか否かはその人次第であり、信長自体に上記やそれ以外の努力があるから強運を呼び寄せている面があるだろう。学ぶ事しきりである。


・旧来の慣習に囚われずに時代の半歩先を行き、しかも現実に落とし込めるまで突き詰めている。

信長と言えば、月並みではあるがやはりここが一番凄いなーと思う。子供心にもここが一番尊敬していた点である。

例えば長槍による集団戦術、鉄砲に早くから目を付けて主力にして集団戦術を取る等。
皆槍は長い方が有利だと分かってはいたものの取り回しが悪い等の欠点もあったため多数の大名はこれを突き詰めてはいなかったようである。鉄砲も同様で注目はされていたが火縄銃のため発射までに時間がかかる、雨天時に使えない等の欠点があったためこれを主力にしようと言う者は多く無かった。
こう言うのをストイックに克服して、戦争のルール自体を、「我はxxなり、やあやあ一騎打ちぞ」と言う所から集団戦に変えてしまうと言うのは本当に凄い事である。

渡来人との付き合いも、大友宗麟のようなキリシタン大名ほど没入せず、「技術力や文化力の増大のため」と言う適度な距離感で現実主義で活発に行っている。渡来人に地球儀を見せられて、地球が丸いと言われて、サッと理解する感性があったそうである。視野が広い。

楽市楽座は、現在で言えば法人税率引き下げや外資系企業の日本誘致促進策等に相応するだろうか。当時は年貢が重要視されており、こう言った商業促進策による国家の収入増大を本格的に志向していた大名は(六角氏等の例はあるようだが)少なかったようである。これは今で言えば、製造業にしがみついていて沈没気味の日本経済に対する示唆も非常に多いのではないだろうか。

製造業(上記の例で言えば年貢)も勿論大切ではあるのだが、一刻も早く法人税率引き下げや外資系企業の日本誘致促進策と言った、現代版楽市楽座を取った方がいい。税率を下げた方が商業が活発化し、人モノカネも集まり、結果として税収が増えると言うのも、経済産業省すらその旨白書で出して居るし、1500年代に気づいていた大名が居るのである。正に温故知新である。

筆者的には、法人税率引き下げから一歩踏み込んで、日本をタックスヘイブン国あるいはそれに近い税制優遇国にして、金証法を緩和して運用会社が運営し易い体制にして、スイスやシンガポールのようにプライベートバンクの拠点にした方が良いとさえ思う。

経済規模で抜かれる小国が、少ない防衛予算で独立国家として一定の地位を維持するには、世界中の金持ちの資産を(言葉は悪いが)人質にしてしまうのが一番良かろう。中国人の資産を日本のプライベートバンクに預けて運用する等については、積極的に促進した方がいい。中国人のカネ持ちだって、中国国内に資産を置いていたらいつ共産党に接収されるか分からないと思っていて信用して居ないのだ。こう言うのは利用して然るべきだろう。つまり、税金面での優遇や法律面でのバックアップなど、富裕層の中国人にとって日本での資産運用がソブリンリスクの低い有効な選択肢になるようにするべきだろう。国内の森林や水源などを中国人にしこたま買われて呑気にしている場合ではない。日本側から積極的に交通整理、つまり外人に地下の水源の所有権は認めないとか、外人が山のオーナーになっても森林資源の活用には規制がありますとかの国益維持のルール変更をする所はして、一方で日本で中国人が銀行口座や投信等の口座を持つ事に対しては大いに優遇する等して、中国マネーを取り入れるべきである。

スイスをなぜ誰も攻撃しないしスイスフランが「リスク回避通貨」なのかと言えば、非常に議論を単純化すればイスラムの金持ちもキリスト教圏の金持ちも皆スイスに資産を預けて居るからである。アメリカの息がかかっていながらも「何となく中立ぽく良い人風で、ニコニコしていて敵を作らない」と言う日本人の位置づけも、こう言った拠点になる上では有利な地の利だとも思う。素地はあるだろう。

日本の政治家にはこう言う発想が出来る人が現状余り居ないように思われるが、筆者ももう少しシニアになったら(あるいは無名ではなく資産運用業界のプロフェッショナルとして一定の発言力を持つに至った場合には)、こう言う働きかけを後ろからやって微力でも業界を盛り上げる事に貢献したいものだし、貢献しないといけないのだろうなとも感じている(基本的に政治活動は苦手で好きでもないし、表からやるのは筆者の性には合わないので、後ろからだが)。

世界中の金持ちが日本のプライベートバンクに資産を預けて、たまに旅行に来て、日本の四季やクオリティの高い観光サービスをエンジョイし、パリよりもミシュランの星付きレストランの多い東京グルメをエンジョイし、スイスの精密時計よろしく日本の製造業の高付加価値品を嗜む(日本の製造業は完全に高付加価値分野へニッチ特化していく以外道はなかろうと言う事でもある)。ジャパニーズhot springを楽しみ、日本酒や国産の安全な農作物等をラグジュアリ品として楽しむ(勿論観光客価格とローカル価格は二重プライスで良く、日本人自体は日本の素晴らしい四季や食生活を安価に楽しめるようであるべきと思う)。アニメ等の娯楽も大人が見ても奥深くて面白い。発展発展、成長成長でお疲れの韓国人や中国人も日本に来ると癒される。

こう言う、「ニコニコマイルド、ロハスで癒し系ジャパニーズ」と言うコンテンツを、テーブルの上では草食系的にニコニコしながら、テーブルの下ではアグレッシブな態度でもって世界に売り込むべきであろう。言ってみれば、これこそが「日本の製造業依存からの脱却」「日本の高付加価値サービス産業化」でもある。

(注:従って、筆者は、一部の人が言うような、「昨今の日本人の若者は草食系とか言ってるようでダメだ、高度経済成長の頃を思い出してガツガツやらんといかん」と言った論調には反対である。どうしたって日本は成熟国入りしたのだから、高度経済成長期のマインドに戻れと言うのは無理だと思うし、時流を弁えていない考え方と思う。かといって草食系極まって無気力であっても確かに問題である。旧来の肉食系でも草食系でもない、言ってみれば「禅の境地系」とでも言えば良いだろうか、成熟国には成熟国としての、喩えて言えばイチロー選手の内野安打や盗塁のような渋さと味わいのある「第三の」生き残る道なりマインドの持ちようがあるだろうと思う。しまったな、だんだん言ってる事が意味不明になった来たな・爆)。

世界に経済規模ではどんどん新興国に抜かれて行く訳で、日本の今後の生きる道はこれだろうと個人的には考えている。そして日本がスイス、シンガポール、日本と並ぶ位のプライベートバンク大国、資産運用大国になってくれて、資産運用業も栄えてくれて筆者もめでたしめでたし!と言う事に、ぜひなって欲しいなぁ(笑)。希望的観測をベースに将来を考える訳には行かないんだけれども、何せ筆者も基本線金融に戻る訳であり、基本線金融マンなので、このままだらだらと、日本人金融マンの地位がグローバル経済の中で没落されては困る面がある。筆者自身も、このハッピーな日本の将来が現実になるよう微力でも貢献して、「癒し系資産運用大国としての日本構想」の末席を担えるべく、まずはパンアジアからの視点で投資やトレードが上手に出来るような人材にこの数年でなりたいものである。

話が随分脇にそれてしまったが、こう言う事を考えさせるきっかけになる面でも、織田信長の慧眼には素晴らしいものがあるように思う。

3 件のコメント:

  1. そもそも日本人の長所としては、商品の見る目があるということにつき、短所としては目に見えないことがうまく評価できないということにありませんかね?

    なので、政策の方向自体が合理的であっても、それが日本人の特性と一致していなければ、うまくいくかどうかは別に思われます。

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  2. 「日本人の長所/短所」については賛同致しかねます。

    よく「投資や金融は狩猟民族のアングロサクソンが良いに決まっており日本人はダメだ」「製造業で細かいカイゼンをするのは得意だが、無形財産である革命的なアイデアやイノベーションは苦手だ」等と言われますが、端的に申し上げれば、錯覚かと存じます。

    例えば、日本には江戸時代には既に発達した米の先物市場がありました。これは国際的に見ても早期より先物取引が為されていた事を意味します。目に見えない商売である金融も発達していましたし、目に見えない「将来の米価格」を評価して取引する市場も発達していたと言う事ですし、日本人にそれだけの素地が会ったと言う事です。

    目に見えないものは訓練して慣れれば見えるようになります。この商売をしていても思いますが、こう言った感性については、人種や国籍の差と言うより、個人差のように思います。

    ですので、「日本人はこうだから」と言った先入観でもって放棄さえしなければ、日本人の特性は変えられる(あるいは「日本人の特性」と言ったもの自体がそもそも先入観による幻想でしかない可能性もある)でしょうし、やって出来ない事はないかと存じます。

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  3. カルフールが日本から撤退した時の言葉が確か、
    「日本の消費者の商品選別能力がこんなに高いと思わなかった」
    というようなことでしたね。
    実際、何故日本が高品質の商品を作れるかと言えば、高品質と低品質の商品を見抜く目があるということが前提になっているんでしょう。


    「評価」の前提は「自分の意見を持つこと」でもあり、その辺りの教育や価値観が、日本と欧米では異なっている分、平均的に見れば日本人は弱いのかもしれません。
    また、日本人の特性とは2000年ほどの歴史によって築かれたものですから、変えられるとしても時間がかかるものでしょうし、それよりかは培われた特性を活かす方向が早いようにも思われます。
    それは、バフェットには彼の人生に合ったやり方があり、ソロスには彼の人生に合ったやり方があるのと同じでしょうか。

    とはいえ、オバマ政権の人民元高への誘導による、アメリカから中国への輸出増加と、その恩恵を受けた日本から中国への輸出増加くらいしか、日本経済立ち直りのきっかけも見出せませんので、「資産運用大国としての日本」も実現してほしいところではあります。

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