2010年11月26日金曜日

シンガポール報告:シンガポールのユニクロ。

Orchard(先般解説の通り、日本で言えば銀座みたいな雰囲気の場所)に、日本のユニクロを発見。店舗見学してみた。

価格はこちらもトータルに安い。靴下3足が日本円換算で1000円位とかで、価格帯の感覚も日本と近い。モノも日本で売っている感じのものと殆ど一緒。

Orchardの立地も、日本でも銀座に店舗を持っているので、その感覚だろう。家賃的にペイするのか微妙な面もあるが、現地の知名度を高める、と言う意味においては悪くない選択だと思う。

ただ気になったのが、一年中夏の気候のシンガポールで、「冬物のダウンジャケットとか、もこもこ素材のコートとか、そういう正に”ザ・冬物”が店舗の売り場の多くを占めて売っていた事」である。

これは明らかにシンガポールの気候を無視している。10月ー3月位でシンガポールは雨期であり、湿度が非常に高い。気温も日本の夏のように35度とか猛烈な暑さにはならないものの、常にコンスタントに30度位はある。クーラーが効き過ぎて居るので屋内では上着が必要と言っても、せいぜい薄手のカーディガンとかジャケット、日本の職場で夏に女性がかけている膝から下のブランケット程度が必要と言う程度である。どう考えても「もこもこ素材」は着ないし、厚手のコートなんて着ない環境なのだ。街往く人の殆どが半袖である。オフィスワークをしている人も、せいぜい長袖のワイシャツだ。上のスーツのジャケットまでちゃんと着ている人は多くは見ない。

もこもこの冬服の服装が必要になるとしたら、せいぜい欧米人や日本人のシンガポールの駐在員、エクスパッドが冬に自分の国に戻る時位だ。しかしこう言う人種は会社からたんまり遠方手当てに家賃提供にと貰っていて(いわゆる普通の日本企業でも)大変よろしい生活をしているので、敢えて安価にユニクロでと言うニーズは多くない。(筆者はユニクロ着てますが。ジーンズとか。)

言ってみれば、ユニクロのシンガポールは、ちょっと現地ニーズとずれてしまっているのである。推察するに、商品を選定する権限が、現地の店長や現場の店員に無く、現状日本から決めてしまっているのではなかろうか。あるいは製造を中国や最近はバングラデシュで一括してやっていて、製造サイドで「11月や12月に夏物を作り続ける事の出来る仕組み」が確立されて居ないのかも知れない。製造コストの安い国で標準化された服を大量生産する事で、安価でも儲かる仕組みが出来ているので、シンガポール向けだけ1年中夏物を売る、とは行かないのかも知れない。

しかしちょっと待てよ、今後ユニクロが英語を標準言語にして、グローバルに展開して行くんだとしたら、赤道圏の国々や南半球にも展開する事になるんじゃないだろうか。ブラジルなんかはかなり大きな市場だと思う。オーストラリアや南アフリカもアリだろう。インドなんかも良いだろうし、今後はアフリカ諸国なんかも良い市場だろう。そうなると、クリスマスシーズンに夏物を製造する必要があるのではないだろうか。

現状のユニクロは、ここまでの段階、つまり「Think Global, Act Local」の対応はこれからのようである。柳井氏の今後の腕の見せ所だろう。

それにしても、柳井氏の年収が3億円と判明、とか言うのがニュースで出ていたが、アレは一体何なのだろう。庶民のひがみなのか。尊敬なのか。額が多くて凄いと言う事なのか。何なのか。

筆者からするとこんな事がニュースになっているようでは(あるいはなっているようだから)日本は煮詰まり感から抜けられないのだ。あれだけの経営をしていれば、年収3億円なんて、むしろ安いだろう。あれだけの雇用を生み出して、GDPに貢献して、多くの顧客に(お金持ちでなくても)安価でそれなりにこぎれいな服装を可能にする生活を提供しているのだ。世の中には、年収500万円でも貰い過ぎな人も居るし、年収3億円でも安過ぎる人も居るのだ。この点理解する必要がある。

大体、柳井氏の(氏自身のファストリ株保有によるキャピタルゲイン/ロスによるUnrealized Profit/Lossを除いた)定期的な現金収入の過半は、ファストリ株保有から来る配当収入だろう。現在のファストリの時価総額1.4兆円位で配当利回り1.7%位で柳井氏が25%超の株式を保有しているので、配当収入で年収50億円以上である。給料なんて形だけのもので、無給でもいいし幾らでもいいや、適当に付けといて、と言う類いのものである。それこそ「帳簿上で人件費に付けるか、配当支払に付けるか」位の「概念上のもの」でしかなく、大した意味を持っていないだろう。柳井氏個人の損得を考えるなら、仮にグロスでの収入を同じに設定するのであれば、累進課税の所得税で半分持ってかれるより、配当の方が良いと判断する事もあるだろうし、あるいはファストリの会社の事を考えると人件費で落とせば会社の法人税支払はその分減るなと言う事を考えるかも知れない。しかしどちらにせよファストリの売上利益レベルや柳井氏個人の収入やバランスシートを考えると些細な事であり、やっぱり「適当に付けといて」の類いの話である。

つまり、庶民がひがむにしたって年収の3億円に対してではなく配当収入込みの収入に対してひがむべきであるし、高年俸で凄いとか成功者万歳(筆者的には嫌いなフレーズだが)と言うにしたって配当込みの方に対して凄いと言うべきである。そもそも、時価総額1.4兆円の1/4以上を氏自身で保有し、更には家族も結構保有しているので、柳井氏個人(あるいは家族)のバランスシートには数千億円のアセットが乗っている事になる。これらは完全に開示情報であり、新しい事は何もない。更にそれに対して所得が3億円でしたと株主総会で分かって云々なんて話は、元来ニュースでも何でもない。

それを何の含意があるのか知らないがニュースで報道している時点で、「マネーについてのきちんとした理解に欠けがちな、社会主義国家なんだなあ日本は」なのである。

他人を羨んだりひがんだりする事自体がそもそも「心の貧しい発想」であり、柳井氏の年収3億円と言うのが「ニュースとしての価値がある」(このニュースをみて羨んだりひがんだりする人が一定数量居るから、ニュースになるのだろう)と言う事自体が筆者としては「心豊かな考え方」から程遠いと思う。まず心の状態が豊かになる事が重要であり、今現在幾らお金を持っているかと心が豊かかどうかと言う所に関係はない。

多少話がずれるが大切な事なので付言しておくと、心が豊かになる事は誰にでも今直ぐにでも出来る事であるし、「心が豊かであるように」と言うのは完全に各自の自己責任である。特に衣食住で問題のない生活をしているのであれば尚更自己責任である(さすがに食うや食われずの状態で心も豊かになれ、と言うのは一般の人には難しい事は認める)。政府や政治家がダメだからとか、会社の給料安いからとか、景気が足踏みだからとか、そう言うのは他人に責任転嫁して、ネガティブで批判的な事を話していれば知的だと勘違いしている、実際大した知恵も人格も備えていない人の言い訳に過ぎない。まあ、政府も賢く、税率も低く家賃以外の物価も安いため実質的な会社の給料も悪くなく、景気も調子良い例えばシンガポールのような地域の方が前向きになり易い後押しは強いとは言えるが、シンガポールのようなどう見たって環境的に恵まれている所に住んでいる日本人でも愚痴ばかり言っている人はやはりいるので、結局は自己責任である。

話を柳井氏年収3億円の話に戻すと、それにしてもしかしという事で、そもそも羨んだりひがんだりする対象からして既に間違っていると言うのであれば、これは何とも悲惨な笑えない笑い話である。柳井氏の年収3億円を見て凄いな自分もこんな成功者になりたいなとか、けしからん貰い過ぎだとか言っている人達については、まず第一に「心のありようの圧倒的な貧しさ」から叩き直して心豊かに改善する必要があると共に、世の中のゲームのルール自体をきちんと理解すると言う段階をまずはクリアする必要があると言う事である。


さて、ファストリには、ぜひH&Mとかと並ぶ位の、「日本を代表するグローバルの会社」になって欲しいものだ。H&Mは時価総額で4−5兆円位かな。だとすれば、ファストリの株価は長期ではあと3倍位になっても全然違和感はないと思う。

ヘッジファンド業界では、「長期では、みんな死んでいる」(byケインズ)の世界なので、長期で株価が3倍になるかどうかと言うのは余り関係ない(だからブログに書いている、と言う面もありますな)。

また、アパレルや芸術に携わる人からすればユニクロってどうよ?新興国の人達を安月給で働かせて、機能性重視の安易なデザインの服装をばらまいて、大量生産大量消費の悪しき工業化社会の典型であり芸術性とは程遠く云々、と言った批判がある事も知っているしそれも一理あるとも思う。

更には、柳井氏のスタイルに対しては思う所が全くない訳ではない。つまり余りに言葉足らずで発言が(言ってる事の内容は正しいんだが)唐突で説明に欠けており、周囲の社員が中々付いて行くのに苦労する上、企業規模の拡大と共に「不必要になった、あるいは付いてこれない役員や社員」をバッサリやる氏のスタイルあるいはパーソナリティについては、功罪両面あるなと言う面はある。つまり経営としては効率的だが人の情としてはどうかと言う面がある。あるいは企業の成長について来れないから古参社員をバッサリ切る、と言うのではなくて周囲が分かるように思う事を伝達して説明しながら人を育てる事も、時間はかかるし急激な成長をする意味では面倒くさい面もあるものの、経営者としては大切な役割なのではないかと思う面もある。いやまあ、勿論零細企業の時に必要な人材、急成長時に必要な人材、大企業に脱皮した後に必要な人材は各々全然違うし、自分がある程度おぢさんになった実感として、中々理解の早くない学生やら若手やらに物事を丁寧に説明して教育すると言うのはかなり大変な面もあるので、気持ちも全く分からなくもないのだが。。。

とは言え、ファストリの現在の重要な課題、あるいは長期の投資を考える際のリスクとして、「後継者の育成状況」と言うのは挙げられるだろう。現状では、柳井氏なしでファストリが成長を続けられるとは、投資家サイドから外から見る限りでは考えられない。それは過去の柳井氏の上記の功罪相半ばする経営スタイルとパーソナリティから来る当然の結果でもある。氏自身も恐らくその点自覚して、後継者育成の手だて等を試行錯誤されている事だろうと思う。

しかしまあ、色々思う所はありつつも、海外でも日本企業が活躍している事が実感出来ると言うのは、日本人としては「日本あるいは日本人もまだまだまんざら捨てたものではないと、ほっとする」面は単純にある。

真に芸術性を発揮する服飾は服飾としてニッチで生き残り繁栄するべきだとも考えてはいるものの、産業のない新興国に雇用と生活の糧を作り、先進国ではお金のない庶民にも一定の服装のチョイス、こぎれいなファッションをする余地、それによる一定の心の豊かさを提供していると言う面はあるとも考えている。実は障がい者雇用比率が日本の上場企業の中では際立って高い会社でもあり、雇用からの社会貢献もしている。そんな訳で、個人的には応援している。

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