2010年12月26日日曜日

書評:HAPPIER 幸福も成功も手にするシークレット・メソッド

「ロハス金融道」のコーナーを作ったら、その教科書のような本を発見。


最初に断っておくが、筆者は「ハーバードナンバーワン」とかそう言う本は基本線嫌いである。性格として、権威主義的な雰囲気の漂う組織は嫌いだし、基本線、筆者は「ビッグマウスビジョナリーエリート路線」より、「いぶし銀実務家路線」を好む面もあるからである。

また、出版社が残念な面もある。こう言う組織にこう言う本を出版されて、「胡散臭い宗教じみたもの」と勘違いされるのは困る。この本の著者も宗教だの神だのの話は一切していないし、当ブログ筆者も宗教に関しては完全にニュートラル、無宗教者である。この点お断りしておきたい。

しかし、上記の点差し引いても、非常に良書である。

本の内容だが、一言で言えば、「小さい頃から優秀な成績取って、履歴書華やかにして良い会社入るためにクラブ活動やスポーツや社会貢献活動も頑張って、コンサルだの投資銀行だの入って、ハーバードなんか入っちゃって、成績競争して、卒業後はマネジングディレクターになれるように出世競争に明け暮れて、あなた本当に幸せですか?ちょっと人生のありよう考え直してみませんか?もうちょっとバランスの取れた調和した人生を過ごしてみませんか?」と、ハーバードの生徒の脳みそを根底からシェイクし直すような内容である。いい事だ。

より具体的には、肯定心理学(ポジティブサイコロジー)の分野から、ハーバード行くようなロジカル万歳君/さんでも納得感があるように、ある程度学問的な裏付けを伴った形で上記を遂行している。競争競争に明け暮れる事で鬱病患者等の数が増えていると言う問題意識が背景になっているのであろうが、「肯定心理学」と言った学問分野が既にあると言うのが、アメリカの凄い所である。日本はこの分野でも全然遅れている事を痛感した(お国柄的には、元来日本の方が発展していて然るべき分野のようにも思うのだが)。

ハーバードのお授業らしく、本書はまずは「幸せ」の定義を、縦軸(利益/不利益)&横軸(現在志向/未来志向)のマトリックスで説明する所から入って居る。

1、出世競争型。未来の利益志向かつ現在の不利益志向。

現在を犠牲にして、未来の成功のためにガツガツ頑張り続ける。プロセスを楽しむ事を重視せず、結果だけを重視する。将来良い大学に入るために今を犠牲に勉強しましょう、良い会社に入るために大学でも勉強したり履歴書を飾れるようなスポーツやボランティア等しましょう、マネージングディレクターになってアーリーリタイヤできるように頑張りましょう、でもって実際成功しても「思ったより幸せじゃないな」と落胆する、のパターン。

2、快楽型。未来の不利益志向かつ現在の利益志向。

酒、ドラッグ、南国やインド等でうだーっとし続ける等の類いが典型。アリとキリギリスで言う所のキリギリス。出世競争型が引退したりクビになったりすると一時的にこれを大体経験する。しかし、本書にある通り、「目標も、挑戦すべきことも無い人生は、私たちを決して幸せにはしません」。

3、悲観型。未来の不利益志向かつ現在の不利益志向。

過去の失敗等を反芻して、それをそのまま未来にも引き延ばして(統計や予測の際にもよくやってしまう間違いだ)、「今もこれからも不幸だ」と考えてしまうタイプ。出世競争型が壊れて来て快楽型に陥り、でも幸せでなくて悲観型に陥る、と言うパターンが比較的よくみられる。

4、至福型。未来の利益志向かつ現在の利益志向。

現在の利益(=喜び)と、未来の利益(=意義)を同時に体験出来る状態の事。チクセントミハイのフロー状態等も、「至福型」に基づくもの。本書曰く、「ときには未来のために現在の利益を差し控える事があっても、可能な限り多くの時間を、現在の利益と将来の利益を同時にもたらしてくれる活動に振り向けるようにすることです」。その通りである。

でもって、4の至福型こそが、「幸せ」であると定義して、以降は如何にして「至福型」の幸せに到達出来るかについて記載してある。例えば以下の通り。

・内なる声に耳を傾ける。

・実生活マップを作って、幸せな事柄をより増やし、余分な事柄(受けなくて良い用事、余分なテレビやネット等)を減らす。

・究極の通貨は「幸せ」であり、常に上記定義の「幸せ」が増大する意思決定をする。お金の多少は、生活必須水準を超えると殆ど「幸せ感」に関係ない(心理学データ等出しつつ説明)。

・「出世競争型」から「至福型」にシフトする事で、動機付けが弱まってしまったり、意欲が薄れる事はない。人間、元来備わった向上心が案外あるものなので、この点安心する。

(注:これは「出世競争型」から「至福型」にシフトする際に恐らく多くの人が不安に思うだろう点であるし、筆者も不安に思った時期もあったので、非常に良いポイントを突いている。筆者も、キリキリ「上」を求めていた生きかたから、「今日も楽しく明日も良くなる」と言った生き方にシフトする際、「こんなにこにこマイペース君で一体金融のフロントの仕事なんかやってられんのか?」と不安になったが、今の所特段問題はない。むしろ余り疲れずに続けられる感すらある。)

・「難し過ぎず簡単過ぎない”ちょっと背伸び”」な目標を立て、それに取り組んでいる今この瞬間に集中する。

・結果だけでなく、プロセス・過程も重視する。目標は達成する事よりも、それを持つ事の方が重要。過程自体を楽しむ。

・過程を楽しむためにも、予定を過剰に詰め込み過ぎない。創造性が落ちる。ヒマ過ぎず、忙し過ぎず位に調整する。

・MPSプロセス(意義を感じる事柄、喜びを感じる事柄、得意な事柄を列挙して、全てを満たす活動を探す)を通じて、天職を見つける。

・仕事が楽しくなるように、変化を起こす。変化を起こす時に必要なのは勇気であり、勇気とは、「恐れない事ではなく、怖いけれども、とにかく前に進む事」である。(これ名言である)

・幸せな人間関係を築く。そのためには、まず「コア・セルフ」(=真の自己)を認識し、まず自分自身がそれをちゃんと愛する事(なるしーと言う意味ではなくて、ちゃんとしたself esteemを持つと言う意味で)。その上で、相手のコア・セルフを無条件に愛せて、一方で自分のコア・セルフを無条件に愛して貰える、と言った関係を構築する。

・上記関係を構築するために、「評価して欲しい/評価する」から「知られたい/知りたい」にシフトする。

・感謝の手紙を書く。

・瞑想をする。

・自身の恐れが、自身の闇にあるのではなく光にある事を認識する。(幸せな事が立て続けに起こると、次は不幸な事が来るんじゃないか、この幸せは自分に分不相応なのではないか、と言った不安が生じると言うのが典型例。)自分はちゃんと幸せになって良いのだ、と言う事を実感する。

・自分の幸せを大切にする。自分が幸せになる事と、他人を幸せにする事はゼロサムゲームだから矛盾する、と言った考えが間違っている事を知る。自分が幸せになる事と、他人を幸せにする事は、例えば自分のローソクの火を他のローソクに灯しても自分のローソクの寿命が減ったりする事はないのと同じで、両立する。むしろ自分が元気で幸せだと、周囲にもシナジー的に良い影響が出る。これを理解する。


・・・こう言った事が色々具体的に、エクササイズ付きで述べられた後で、最後に、締めとして6つのポイントを要約。

・自分に人間として生きる許可を与える。自分の感情を素直に受け入れる。
・幸せは、意義と喜びが交差する場所に横たわっていると理解する。
・幸せは、社会的地位や預金残高などにではなく、心の状態に依存している、と言う事を忘れない。
・生活を単純にする。
・心と体の密接な繋がりを忘れない。運動、睡眠、健康な食習慣等を大事に。
・可能な限り頻繁に感謝を表明する。

以上、出版社はちょっと正直「勘違いされると困るなー」と言う面があるものの、教科書風に「ロハス金融道」で考えているような内容が非常によくまとまっている。

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