2011年1月8日土曜日

運用業界ぐだぐだトーク その2

皆様お疲れ様であります。

さて、今日はぐだぐだトークその2。


今日の曲は、高木奏子さんの「おやすみ」。
夜に見られるかたが多いようなので。そして「ロハス」金融道なので、こう言う選曲チョイスであります。


さて、今日も匿名希望さんからの投稿です♪

私は年金運用の担当ではないのですが、日本企業の年金運用のスタンスは変わらないのでしょうか?

>年金基金はコンサルに任せっきり。コンサルはコンサルでリサーチ体制、運用人員の体制ばかり気にして、、、

>また実際運用する方も、パフォーマンスというよりも、コンサルへの説明責任だけが頭に、、、、(私は年金運用を知らないからなのでしょうか、、、、)

おひょーっ、「お客様」への苦言!
これは匿名希望じゃないと出せない投稿ですな!
匿名希望とは言え、この勇気にまずは感謝します。

その勇気に応じて、筆者も、議論の対象が「お客様」とは言え、遠慮せずコメントしてみたいと思います。

さて、「日本企業の年金運用のスタンスは変わらないのでしょうか?」と言う問いに対しては、これは不可能ではないにせよ、中々簡単ではないでしょう。 誰それが悪い、と言う事ではなく、業界ぐるみで現在の年金運用のスタンスが確立されているからです。以下に説明します。


○年金基金側の問題

まずは年金基金の担当者が、金融やマーケットのシロウトだ、と言う点に問題があるでしょう。

日本では年金基金の担当者は、ジョブローテーションかなにかでたまたまそうなっている事が多いようです。また、どうせまた別の職種にそのうちジョブローテーションするでしょうとなると、相場の勉強に気合いも入らなければ、責任の取り方の関係からしても「自分が任期の間につつがなく行けば良い」と言ったマインドになりがちでしょう。これではプロフェッショナルが育たないのです。シロウトが、どのファンドが良さそうかを選択する事など出来るでしょうか?(もちろん、無理があると言う事です。)


○コンサル側の現実

そして(年金基金側にノウハウがないと言うのと、責任の押しつけ先が欲しい事もあり)外部コンサルを使う事になる訳です。

外部コンサルは、シロウトの年金基金でも納得するような客観的な基準を提供しようとなるので、リサーチ体制だの、アナリスト資格保有者が何人だの、合計経験年数が100何十年だの、そう言うつまらない話ばかり気にする訳です(でもって、ロングオンリーの運用会社が相場の世界には余りそぐわない仕組みである年功序列になる訳ですね)。

ただ、コンサルも問題の一端ではありますが、彼らも年金基金が必要とされるサービスだから提供している訳で、コンサルだけが悪いと言う話ではありません。


○ロングオンリーの運用会社の問題

更には、年金基金を受託する運用会社にも問題の一端はあります。
特に日株ロングオンリーと言った分野では、彼らは自分の運用に自信がない訳です。どのみち過半の運用会社の日株運用は、パッシブファンドにほんのちょっぴりトラッキングエラー付けただけの運用で、付加価値が無い訳ですから。

また、昨今のジャパンパッシング等の影響で海外顧客を取る事も難しくなっており懐具合が厳しいと言う現状もあります。

従って、「そういうお客」でも運用会社は、受託資産の獲得意地のために対応しないといけない訳です。結果として、大量の言い訳資料の作成と、それに何を盛り込むかばかりを運用会社側も考えるようになる訳です。

そして余計運用のクオリティがお寒いものになる。付加価値のない事をやっているから、お客を断れない。そして年金基金をスポイルしている訳です。


そんな訳で、結論としては、レストランと一緒で、お客のクオリティが低いと、店も育たないですし、クオリティの低いレストランには、応分の客しか集まらない事になり、店も客も応分であればそれを評価するザガットやミシュラン(コンサル)も応分レベルになる、と言う事です。ソロスもびっくりの再帰性理論であります(^^;)。こう言う「構造」に基づいた状況を変えるとなると、可能だとは信じたいし信じるべきと思いますが、これ中々簡単な事ではない訳です。

ちなみに筆者は、こう言うロングオンリー運用の「どんよりトライアングル」「運用の低品質化デフレスパイラル」には嫌気が差して、ヘッジファンドにキャリアの舵を切る事にしました。


>このあたりにメスは入らないのでしょうか?

>年金と運用会社の関係を改善していくという考えは生まれないのでしょうか(コンサル外し)?

これまた、匿名でないと書けない踏み込んだ問題提起ですね。感謝します。
さて、上記の通り、今の年金運用の姿と言うのは、ある種の「Reflexivityの自己デフレスパイラルを伴う構造」を伴った話ですので、相当思い切った事をしないと、中々メスは入らないでしょう。とは言え、以下のような処方箋があるかもしれないです。

・年金基金側(お客様):

ジョブローテーションをやめて、ちゃんと金融のプロフェッショナルを配属して、応分の責任と地位を与えると共に、運用成果に対するインセンティブ/パニッシュメントをきちんと中長期スパンで与える。

こう言う風に変わるには、一回年金基金の破綻が多発するとかの大ショックを経て、プロが必要なんだと言う機運になる必要があるかも知れません。そうなる前に、年金基金側でもちゃんとしよう、と言う機運が高まって来てくれると筆者としては望外の喜びであります。

また、年金基金さんの肩も持つと、決して「シロウト年金基金」だけでは昨今ないとも思います。
そう言った、意識の高い年金基金さんにぜひ活躍頂きたい所です。


・運用会社側(ホテル・レストランの運営者側):

クオリティの低い年金基金にはお引き取り願う(つまり、運用受託を断ると言う事です)。

上手く行っているヘッジファンド等は、顧客を「良質な顧客」だけに限定していて、つまらない些事や過剰な開示に拘る年金基金等は相手にしていません。そうする事で、どうでも良いコンサル対策、どうでもよい言い訳報告資料の類いの作成と言った手間を最小限にして、運用に集中出来る環境を、積極的に作りに行く訳です。

しかし、これは運用会社側からすると、一時的にマネジメントフィー売上を捨てる事になるのでかなり勇気が要ります。また、レストランの例でも分かるかも知れませんが、serveする料理の質(=運用の質)に自信があり、他に優良なお客さんは居ますのでと言う状況がないとこれは中々出来ません。

しかし、勇気がいるけれども、運用会社の状況を良くするためには、ヘッジファンドだけでなく、ロングオンリーについてもこう言った決断が必要でしょう。低品質な年金基金相手に、彼らがカネを持っているからと言って、作り笑い浮かべてへこへこと「運用委託して頂けませんか、ははーっ」としてしまっている運用会社にも、責任の一端はあるように思います。大体、これでは清々しくありません。

いい運用会社、旨い料理をサーブするレストランが、「あんまり不勉強な年金基金様については、幾ら札束見せびらかしてもうちのレストランには来なくて良いです、他に清々しいお客様はいらっしゃいますし、そう言った素敵なお客様に迷惑になり、信頼を裏切る事になりますので」と言う断固とした姿勢を取れば、年金基金も襟を正さざるをえないはずです。


・運用や調査の現場の我々(シェフ):

日々習練を行い、切れ味の鋭い運用が出来るように磨いておく。どうでも良いお客は断れるだけの品質が出るようにする。年金基金をスポイルしている背景には、実は運用業界側、付加価値のある運用が出来て居ないファンマネやアナリスト側にも責任の一端はあるように思います。

何百人も出席していてセルサイドからも詳細解説が入る類いの決算説明会に通り一遍に出て居眠りなどして、取材で通り一遍の足もとの話など聞いて、財務モデル更新して、クオンツだのリスクマネジメントだの仰々しい肩書きの割に業者から買って来たお定まりのマルチファクターモデルスイッチぽんで回して、と言う事だけしていてそれが仕事だと思っているような同業者では、客を断る事など出来ないでしょうし、年金基金側に断固とした対応が取れない訳です。

また、個人レベルで言えば、こう言う世界が嫌と言う事であれば早々に立ち去る事が出来る勇気と能力も必要でしょう。有能なシェフが次から次へと出て行ってしまうとなれば、ホテル・レストラン経営側やお客様側も、ちょっと色々考えるでしょう。

(注:ただ、仮にどんより大手が嫌だからと言う事でヘッジファンドに転職するなり独立するなりで出たとして、その先には明日の分からない人生が待っています。ローンなど絶対組めません(組まなくて良いと思いますが)。1年後自分がどうなっているかなど分かりません。「どんより大手」が嫌だからと独立しても、昨今「日本株L/S」と言った商材ではお金が全然集まりません。グローバルマクロやクオンツだと、「何で日本人マネジャーに任せる必然性があるの?」と言う所を「まっとうな顧客様」より問われます(これも相当大変だと言う事です)。「会社が嫌だから」の「反抗期の子供精神」で大手ロングオンリーから「こちら側」へのルビコン川を安易に渡ると、それはそれで幸せにはなれないかも知れません。それは覚悟しておいて欲しいように思います。住宅ローンの残債などがなくてバランスシートが身軽で、「明日は元々分からないんだし、前向きでやる気さえありゃどうなってもメシ位は食えるんだし、今日を味わって楽しむ積み重ねの先に未来はあるんだし、人生一度きりだし」と言うラテン系のマインドセットの人であれば、楽しめると思います。これは能力やスキルと言うより、思考や情緒の適性の問題かも知れません。)


・コンサル(ザガットとかミシュラン):

ここももうちょっとレベルアップが必要かも知れません。
パフォーマンスが出る要素の本質的な所を捉える必要があるでしょう。

ただ、コンサルだけ責めていれば良いかと言うとそうではなく、年金基金のお客様側の品質が上がる事が本質的には大切のように思います。調査体制だのアナリスト資格保有者の人数だのがないと気が済まない年金基金が沢山居るから、コンサルもそう言った事を調べているのでしょう。そして、そう言うレベルの年金基金にへこへこして運用受託してくださいと日参している、付加価値のない運用をしている運用業界が、年金基金をスポイルしていると言う訳です。誰それだけが悪いと言う話ではない。これは業界としての共同責任です。

そう言う意味では、年金基金を責めればよい、コンサルを外せば良いと言う話ではなく、客も、レストランも、シェフも、ザガットやミシュランも、皆が渾然一体となって「どんよりした業界環境」を構成しているのだと筆者は思います。

筆者はこう言うスパイラルの環境から立ち去る、と言う事で意思表示をしています。
ただ、中に残って、何とかこの悪循環を断ち切る事を考えられるのもまた、(苦労は多いでしょうが)尊敬出来る事のようにも思います。

>何か、お考えがあれば教えてください。こんなこと、会社では誰にも聞けません。ぜひ、ご意見を!
>ブログでもいいので、コメントしてください。


拙い文章ではありますが、筆者の意見は上記のような所であり、筆者や匿名希望さんがこの点について業界に貢献出来るのは「日々習練を行い、切れ味の鋭い運用や調査が出来るように磨いておく。お客さんを選べるだけの品質が出るようにする。あるいはこう言う世界から早々に立ち去る事で意思表示が出来るように腕前を磨く。」と言った所と思います。

一人一人の力は小さいかもしれませんが、一人一人が一歩づつ前に踏み出す事で、状況は変わるのだと思います。

おお、ぐだぐだ業界内幕トークのつもりが、すごいシリアスな内容になってしまった。

では皆様、「おやすみ」の歌の余韻を楽しまれながら、お休みなさいませ。

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