2011年5月13日金曜日

増資発表後の空売り禁止規制について

さて、Twitter上で、「法的手続なしに債権放棄するんじゃ、銀行は東電に貸出できんな」「東電社債も発行封印されてる」「じゃ、増資かwww」みたいな話題で盛り上がった流れで題名の件について呟いたので、増資まわりの話について、掲題の件をまとめておく。


○増資発表後のショートセル+増資応募による買い戻し、と言うヘッジファンドの取引の経済的意味合いについて。

まずは増資発表後のショートセル+増資応募による買い戻し、と言うヘッジファンドの取引の経済的意味合いについて解説しておこう。一見増資銘柄空売りして増資応募で買い戻すヘッジファンドが一体何の付加価値を提供しているのだ?と思われるかも知れない(筆者もそう思って居た)。

しかし、この行為にも一応経済的な意味合いはある。第一にヘッジファンドは増資の際、客寄せパンダとして応募倍率の高騰を演出してロングオンリーの参加を促したり、増資後の売買を活況にする等で市場に流動性を供給している。また、主幹事証券会社1社やロングオンリーで負担し切れない分のリスク負担を分担していると言う面もある。端的に言えば、以前のりそな銀行や新生銀行みたいな銘柄を、主幹事証券はまず在庫として持っておくのは無理であるし、ロングオンリーだってポートフォリオがりそなに新生で過半を占めるみたいなアグレッシボな(?)ポートフォリオを組む事は出来ない。そんな訳で、大小様々のヘッジファンドもリスクテイクの一端を担っている訳である。


○増資発表後のショートセル+増資応募による買い戻し、と言う取引が公正に欠くものなのか?

上記の通り、増資発表後のショートセル+増資応募による買い戻しの取引には一定の経済的意味合いがある一方で、昨年末に金融庁が、「著しく公正に欠く」と言った理由で、増資発表後のショートセル+増資応募による買い戻しを禁止する旨を発表した。

ちなみに、今年の頭〜3月の震災前までの間、りそな、ケンウッド、新生銀行、その他中小型株まで含めると多数の銘柄でやったら増資ラッシュ、ラストスパートが続いた。あれは金融庁様の増資発表後ショートセル禁止令が実施される前の駆け込みである。主幹事証券的に(&増資したい企業的にも)ヘッジファンドの参加が激減する前、高倍率の活況な増資に出来るうちにと言う事だったのである。

筆者については、金融庁の「増資発表後のショートセル+増資応募による買い戻し」の規制については、納得が行っていない。もちろん、増資発表前にインサイダー聞いてショートセル、と言うのはインサイダー情報に基づいた行為であり市場の信用・透明性を減じる行為なので禁止されて然るべきである。しかし、開示情報として増資発表の開示がなされた後に、借り株が得られる範囲でやるショートセルが禁止と言うのは、筆者は今もいまいち納得出来ていないのである。

理由は上記の通り、増資発表後のショートセル+増資応募による買い戻し」と言う行為には一定の経済的意味合いがあり、かつ公衆の閲覧可能な公開情報に基づいたフェアな取引だからである。

増資と言うのは株式の希薄化を伴うネガティブな要素なので、その情報を市場で織り込みに行く、と言う段階はやっぱり必要だと思う。また、増資発表後〜増資株式割当の間にヘッジファンドがしっかり空売りして情報を織り込んでくれる事で、ロングオンリーも増資の悪材料が出尽くした後の価格で安心して増資に応募して株を買う事が出来ると言う面があるのである。これが金融庁の規制によって増資発表後のショートセルが禁止になり、増資による悪材料が充分に織り込まれていない状態で投資家が増資に応じないといけないとなると、増資引き受け後もだらだらと株価が下がり続けるリスクを投資家は引き受けないといけない事になる。

つまり、金融庁の増資発表後のショートセル+増資応募による買い戻し」についての規制が実行されると、勿論ショートセルが出来なくなるヘッジファンドの参加は減少するし、それに加えて「自分が増資を引き受けた後も株価がだらだら下がり続ける」と言うリスクをロングオンリーも嫌がる事でロングオンリーの増資応募も減少すると見られるのである。

こうなると、株式市場の重要な機能である、「資金調達機能」は減じる事となり、金融市場の発展、ひいては成長資金を調達しづらくなる企業側の活動・成長の停滞を招く事に繋がると考えられるのである。


○その他付記

但し、増資まわりに関する日本の株式市場の慣習には改善点も勿論ある。例えば日本は増資発表〜価格決定〜株式割当までの期間が長過ぎる。米国で数日でやっているものを、増資発表から何週間もかけて日本はやっている。

しかしアレだ、仮に東電が増資するんだったら、増資銘柄の空売り禁止が金融庁様から発動される前にやってしまわないと、引き受け手が居ないのではないかと思う。

上記の通り、ヘッジファンドは増資銘柄の空売り規制が発動されると参加者が大幅に減るだろう。
一方で、ロングオンリーで東電株買える人はさすがに居ないだろう。顧客に説明が出来ないだろう。

東電様の増資は、増資発表後の空売り禁止規制の前に為されるんだろうかw。
何と言うかもう、お笑いの世界だな日本の金融市場って。。。とても先進国のそれとは思えないと思うのは、恐らく筆者だけではないだろう。

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