2013年8月23日金曜日

○アナリストJobの変遷その7:ポスト中小型株バブル・ポストリーマンショック~アベノミクス後のアナリスト・運用者

題名の件である。
過去6回に渡ってアナリストJobの変遷を書いてきた。

(過去6回については以下を参照)





しかし、上記については90s末~2000年頃のPL/BS/CFを回すフルのDCF Valuationが作れるだけで差別化要因として飯が食えた頃から始まり、ライブドアショック、村上ファンドの村上代表逮捕、その後の中小型株特化ヘッジファンドやアクティビストファンドの退潮(=2006年頃)と言った辺りで話は止まっており、その後、特にリーマンショック後以降にヘッジファンド業界・アナリスト稼業がどうなったのか、今現在どういった様相を呈しているのかと言った点については記載が無かったように思う。今回はこの点について、ふとまとめて・締めくくっておきたくなったので書いてみよう。今回を以って「アナリストJobの変遷シリーズ」は終了としたい。


○中小型株特化型のヘッジファンドは、ライブドアショックを境目に凋落、リーマンショックが退潮の駄目押しに。同時期にクオンツ系ファンドも多くが痛手を被り淘汰。

さて、先般記載の通り、アクティビストファンドにせよ、そうでないヘッジファンドにせよ、セルサイドリサーチが手薄で割安放置されており、アルファが取れる要素があった中小型株に傾斜する事で2006年始めまでこう言ったファンド業界は成長を続けていたのであった。

この際、ショートセルについては借株市場側の流動性の制限等で中小型株は困難であった事から、自然とロングポジションが割安の中小型株中心になり、ショートは借株し易くValuationも高くなりがちな大型株、と言ったファンドが多かった。

また、HF第二世代(*)まではロングオンリーからHFに転向してきた例も多かった事もあるのだろう。ショートから入るのが苦手でロングから入る方が得意な運用者が多かったものと思われ、マーケットニュートラルではなくロングバイアスにしておくヘッジファンドが多かった。

(*因みに、筆者はヘッジファンド業界に居て恥ずかしながら、ヘッジファンド第一世代、第二世代、第三世代の明確な定義を完全に理解していない。ヘッジファンド第三世代=主に2000年代以降に業界に入った現在年齢30代位の不況世代・比較的若い層、第二世代=それ以前の世代、と言った理解ではいるのだが、特にヘッジファンド第一世代と同第二世代の定義の辺りが曖昧である。どなたかこの点ご存知のかたがいらしたら、メールかTwitterにでも一報頂けると幸いである。)

こう言ったファンドが2006年までは、中小型株の良好なパフォーマンスと共に拡大傾向にあった。
アクティビストファンドの栄枯盛衰の際も説明したが、パフォーマンスの良さから年金基金等からどんどん資金流入があった。往時は日本株の中小型株に強みを持つファンドで1000億円以上、中には3000億円内外を運用するヘッジファンドもあったのである。

この間、アクティビストファンドにせよ中小型株特化型のヘッジファンドにせよ、中小型株運用者のパフォーマンスが良い→そう言ったファンドに資金が流入→更に中小型株が買われる、と言った、言わばソロスの言うReflexivityの自己強化サイクルに入っていたようにも思われる。当時を振り返ると、ビジネスモデル等ニッチで魅力的で、PERが安めの中小型株を買い推奨しておけば大体オッケー、ネタ的に面白いキャタリストがあれば買いでもうばっちり、と言ったイージーな状況が続いていたようにも思う。アナリストもこう言った企業に取材に行き、買い推奨をマッチポンプのように行うだけで商売が成立する、と言う時期にあったのである。

これが2006年にライブドアショック、村上代表逮捕と言った「中小型株崩壊ショック」が起きると、一気に逆回転を開始し始めたのである。そして2007年のクオンツショック、2008年のリーマンショックで駄目押しとなった。

この間、流動性が相対的に低い中小型株は経済ショックの際等には特に一気に流動性が干上がってしまい、売るに売れない状況となった。その中で相次ぐファンド解約が起き、マーケットインパクトをかけて安値で売却を余儀なくされる事になった。そして中小型株のパフォーマンスが益々悪化してゆくと言う、バブル&バーストのバースト側の状況となった。先般解説したアクティビストファンドに加え、中小型株特化型のヘッジファンドの多くがこのような形で退潮を余儀なくされ、この分野の運用者・アナリストも多くが淘汰されていったのである。

またこの時期に、クオンツファンド・運用者・アナリストも恐らく少なからずが淘汰されたものと思われる。2007年8月に起きたクオンツショックで、過去安定して効き続けて居たバリューファクターが一気に反転して効かなくなったのである。クオンツファンドの問題として、「皆同じ市場データを分析・最適化して似たような運用手法を取った結果、皆同じようなポジションを取っていたと思われる」と言う点があったものと思われる。また、上記の中小型特化ヘッジファンド同様、パフォーマンスが良い→運用資金が集まる→更にバリューファクターを中心した”クオンツ好きする銘柄群”に資金が集中→パフォーマンスが上がる、と言うバブル過程があり、それがバーストしたと言う面もあるだろう。

その後、(特に株式運用の)クオンツ業界では、長らく苦悩と混迷、煮詰まりの時期を迎えているようにも思われるのである。


○その後、トレーダー型運用者、ヘッジファンド第三世代が生き残る事に。
さて、上記のような一連の経済危機とそれに伴う中小型株の流動性枯渇ショックを切り抜けたのは、筆者の見る限りでは以下の2タイプである。

・流動性の高い市場で比較的厳格なリスクモニタリング等と共に比較的短期のトレードを繰り返す「トレーダー型」。

・2000年代中頃の中小型株ヘッジファンドブームによりヘッジファンドでのキャリアが転職市場においても比較的一般的なものとなり、その結果キャリアの比較的序盤からヘッジファンドで勤務し始め、その中で長らく続く不況と下げ相場に適応し、ショートセルから入る事に躊躇がない比較的若手の「ヘッジファンド第三世代」。

上記のタイプの特徴としては、下げ相場にも対応できる事、流動性リスクを取る事でアルファを取る事を志向するのではなく流動性のある市場でプレイする中でアルファ獲得を志向する事である。こう言った特性が、リーマンショック、ギリシャ危機等一連のショックを乗り切る上で重要な役割を果たしたものと思われる。彼らは運用技能を洗練させ、生き残りを図っていった。結果として彼らの時代が続くのかと思われた。

しかし相場が怖くも面白いのは、あるトレードスタイルがしばらく隆盛して成熟の感を迎えると共にその流れは終了し、次の波が起こる事である。


○そしてアベノミクス相場の到来。今後も生き残るのは「全天候・カメレオン型」「幸運型」か。

そんな訳で2012年の12月以降の「アベノミクス相場」を迎える事となり、久しぶりに大相場となった。

アベノミクス関連銘柄、黒田金融緩和等で恩恵を受けると見られた新興不動産銘柄等の懐かしい面々、バイオ関連銘柄等の中小型株が長らくの時を経て活況を呈する事となった。ガンホー3765と言った巨大ホームラン級の銘柄も登場した。再び、2004-2005年頃を彷彿とさせるように、個人投資家の武勇伝や自慢話が増える相場となった。

この間、上記のような不況慣れしていた「トレーダー型」「第三世代型」は、波に乗り遅れたり、波から降りるのが早すぎたりする傾向にあった。一方で、中小型株バブル、更にはその前のITバブルや80年代のバブルを知っておりかつリーマンショック等を何らかの形で生き残って来た古参の運用者が再度活躍する事となった。

しかし、2013年8月現在では、アベノミクスによる一本調子の上昇相場、ボーナス相場も少なくともいったんは終わったのかなと言った印象である。

こう言った激動のマーケット環境の中で一貫して現在生き残っていて、今後も生存可能なのは、上げ相場でも下げ相場でもリターンがプラスで、大型株でも小型株でもアルファが取れ、リサーチでもトレードでもアルファが取れ、短期でも長期でも勝てて、ロングでもショートでも取れる、と言ういわゆる「全天候型」「カメレオン型」とでも言った所であろうか。

後はリーマンショック等の前後でも無我夢中でやったら理由は良く分からないが何とか僅少の損ないしはプラスで上がれたとか、リストラ局面でも運良くリストラを逃れたりリストラされても転職先にありついてキャリアを継続出来た、理解のある顧客が居て最後のところで解約ラッシュを踏みとどまる事が出来運用継続出来た、と言ったとにかく運が良い「幸運型」であろうか(*)。

勿論「全天候・カメレオン型」と「幸運型」の複合あわせ技と言ったケースもあるだろう。

(*注:因みに運を用いて運用なので、運が良い事は重要なスキルの一つである。ドラクエ3のステータスに「うんのよさ」と言うのがあり、「遊び人」の職業がそれが異様に高く、悟りの書を取得する以外の手段で賢者になれるのは「Lv.20以上の遊び人」だけだった事を思い出して欲しい。運の良さは力であり、Lv.20になるまで運の良さで生き残れる継続的な運の良さは知恵に繋がるのである。日本の誇る名経営者、松下幸之助氏も、「運が良い人でしたか、悪い人でしたか?」と面接者に聞いて、私は運が良いと答えた人を採用していたと言うではないか。運は重要である。筆者も幸運であるように心がけているし、運の良い人・良さそうな人と一緒に仕事をしたいものである。)

もはやこう言ったレベルはかなりハイレベルな「奇人・変人」の域であり、若手が新規参入するには結構難易度の高い商売になってしまったような気もする。


○終わりに。

さて、主にバイサイド・ヘッジファンドを主眼にして記載した、概ねここ10年ちょっと位の日本株回りのアナリストJobの変遷はこんな所だろうか。

こうして一通り書いてみてふと思う事がある。昔は外資系金融業界なりヘッジファンド業界と言えば、比較的大らか・大雑把でベンチャースピリットに溢れ、ちょっといい加減でもやる気とリスクテイクする気合があれば何とかなる、競争的にせよ業界として成長段階にもあったため仮にリストラされても次の職場も比較的直ぐに見つかる、と言った具合で比較的牧歌的な面もあった業界だったように思うのである。

なのに気づいてみたら、こんなにストイックな修行僧のような業界になってしまったと言うか、何と言うか。これが経営学・戦略論で言う所の産業ライフサイクルの成長段階から成熟段階に到達すると言う事なのだろうかなとも思う。

筆者はそんな厳しい世界で働きたいと思った事は元来無かった(これは魂の叫びに近いものがあるな・笑)。楽に儲けられるのであればそれが勿論良い。しかし気が付いたらこの業界にどっぷり漬かっている。特段何かの分野で能力値がずば抜けて高い訳でもなく、生来のギャンブラー的才能等が元から備わっている訳でもなく、なぜ生き残っているのかも不思議である。自身なりに上記のような変化に適応出来るように芸風と言うか持ちネタと言うかを広げるよう努力して来た面もあるにはあるが、運の要素もかなり強いと思う。しかしまあこれもご縁なのかなと思いながら感謝して現在仕事をしている。

今後も金融業界、運用業界、ヘッジファンド業界はめまぐるしく変わって行くだろうし、それに適応出来た者と運の良い者だけが生き残るのだろう。筆者としては弊業界に所属する末席の一員として、そろそろ産業ライフサイクルで言う所の衰退段階を経て残存者メリットなど効いて来る事を祈りたい気もするが、余り他力本願でもいかんな等と思いつつ、今日も窓際で茶など啜りながら運用業に励むこの頃なのであった。そして、うんめでたしめでたし(?)、よくまとめました、とボランティアでこう言った記事を書いている自身に取り敢えず自己満足しておくのであった。

…と言う感じで、こんな所だろうか。筆者の個人的な経験・実感を中心に走り書きの備忘録程度に記載しているため、やや偏り・誤り・省略や簡略化等はあるかも知れないものの、これが筆者が運用業界、ヘッジファンド業界に従事する中で目撃した、10年ちょっと位の主に日本のバイサイドアナリスト稼業・ヘッジファンド稼業の変遷である。大した参考になるとは思わないが、業界経験の浅い若手等が読めば、2000年代の金融業界史・バイサイド・ヘッジファンド業界史として「へえー」な気分で読めるかも知れない。そう言った形で多少なりとも参考になれば幸いである。

2013年8月16日金曜日

○若手社員が「資本主義ワールド」の最下層から脱出するための幾つかのヒントなど。

久しぶりにブログを更新する事にした。

最近、運用だけでなく採用等の活動も行うようになり、若手人材については考える所があったので、以下に幾つか「若手社員として優秀と評価される人材のポイント」を挙げておきたいと思う。

一定の成功を勝ち得たい若手からしたら、上司・会社からの評価を勝ち得る事で、先ずは「若手・餓鬼の使い」と言う資本主義の最下層奴隷の状態から脱出し、今まで述べてきた話で言う所の『棚からぼた餅を享受し得る場所』に立つ必要があると感じている事だろう。その際の参考にして頂けると幸いである。言ってみれば、今回の話は『棚からぼた餅理論の実践編・詳細編』とでも言った所である。

但し、筆者の勤務先はヘッジファンドであり、一般の事業会社等とは大きく異なる。年代的にも30代(それでも弊業界では応分に年寄りな訳だが)であり、40-50代以上のシニアとは考え方が恐らく異なる。そう言った点を考えると、「かなり偏った人間の1意見」なのかも知れない。この点を踏まえて読んで頂けると幸いである。


・地道な努力をきちんとして、成長を内外に示す。

当たり前の事かも知れないが、地道な努力をきちんとして、成長を内外に示す事が特にキャリアの序盤戦では非常に重要である。

履歴書を幾らか見ていると、大学時代当時では恐らく筆者よりもずっとハイスペックだったと思われるような人も30歳の時点では申し訳ないけれども採用する気にはならない、と言う状態になってしまっている例は少なくない。逆に、大学時代の学歴や活動内容は目立たなくても30歳時点では「うわあ優秀だなあ」「稼いでいるなあ」と言った人も居る。

大学時代の学歴や活動内容は年齢と共に重要性が年々落ちてゆき、年齢と共に職業人人生の中でどう言ったスキルを身に付け、どういった成果を出して来たかの比重が大きくなる。若手の皆さんが思っている以上に、20代の生活ぶりや仕事ぶりによって30歳位の頃には愕然とするほど能力に差が付いてしまう。

また、成長モメンタムのある若者と接しているとシニアも励まされるし気持ちが良いもので、やはりサポートしたくなるものである。そんな訳で周囲のサポートも得られ易くなるだろう。多少のミスは大目に見てもらえたりもするだろうし、良質の仕事が回って来やすくなるだろう。それが更に能力を引き上げる要因となる。そんな訳で、色々得する事が多いと思う。

そんな訳で、王道だけれども、職務に必要な語学・資格・知識等の積み上げを20代で行っておく事をお勧めする。転職の際の選択等も、20代のうちは給料の少々の多少よりも、良質の経験が積めるかどうか、成長できる環境があるか、30代以降の飛躍に繋がるかと言った面の方が重要だろうと思う。若い頃は少なくとも年に1度、出来れば四半期に一度位、自身のレジュメを更新する癖を付けておくと良いだろう。その間なにもレジュメに書けるような成長が無かった場合は何かした方が良いと言う事である。


・「ゴール・問題解決・次の行動ステップ」を考えて仕事をする。

仕事とは、言ってみれば問題解決である。
顧客の問題(ニーズ・ウォンツ等)を解決する事で対価としてお金を貰っている。
例えば資産運用業であれば、「老後資金の確保/大学運営やチャリティ財団の運営資金の確保/その他余剰資金の活用をしたいが、それをするノウハウ・時間がない、これに伴うストレスを負担したくない」と言う顧客の問題を解決する事でフィーを頂いている。

これは社内の仕事でも一緒で、問題解決に貢献した対価として給与を貰っているのである。(ないしはインセンティブ等なしで時給・月給労働の場合もあるかも知れないが、人生の貴重な時間を安価な時給で切り売りする立場から脱出したいのであれば、このように考えて仕事する必要がある)。それはたとえコピー取りであっても、「顧客へのプレゼンなり社内会議なり何らかの理由で文書が多数必要だが上司自身でそれをやる時間がない・他にもっと付加価値の高いToDoが上司は他にある」と言った問題解決のためにアサインしているのである。

で、何か作業をアサインした場合、「この作業は、何の問題解決・ゴールのためにやっているのか」と言うのを考えて仕事をしているか否かと言うのは上司から見ると非常によく見える。

例えばコピー取りでも、出来る人は「社内会議が直ぐに迫っていて見栄えはソコソコでもとにかく早く欲しいと言うのがゴールなのか、顧客に見せる資料でこれで顧客が取れるか否かの分かれ目だから、自信を持って外部に提供出来る見栄えの美しさやプロフェッショナルな雰囲気が出ているか等が重要なゴールなのか」と言った点を判断してそれに応じた対処・工夫をするだろう。そう言う事を考えて仕事しているか否か、ゴール・ニーズ・受け手の事情等を考えて仕事をしているのか、ただコピー取りをやれと言われたから嫌々やっているのかと言うのは上司から見ていると非常によく分かる。(コピー取りのほか、Word、Excel、パワーポイント等による文書作成やスプレッドシート・グラフ作成等、昨今のオフィスワークにおいて必須の業務でもこの辺の事を考えて仕事しているか否かは顕著に出るように思う)。勿論、「問題解決・ゴール」を意識・理解して作業をやっている人との方が仕事がし易いし評価が高くなる。

若手社員でよくありがちなのは、与えられた・言われた作業をただやって、何の結論・要約もなしにその旨伝えるだけ、と言うケースである。つまり、言われた通りにどこそこに連絡を取りました、この調べものをしろと言うので調べたらこう言う事が書いてありました、Excelに数字を入れました、と何の結論もなしに五月雨的に報告するだけと言うパターンである。これは言ってみれば餓鬼の使いである。意思決定・判断の部分を完全に上司に丸投げしてしまっており、高い付加価値を出す事を放棄している事に等しい。

こう言う人ほど「給料安い」「もっと金持ちになりたい」とか述べている傾向が得てしてあるが、自ら高い付加価値を出す事を放棄している以上、こう言った人が高給取りになる可能性は何の分野でどんな仕事をしていても先ずもって殆どない。資本主義において「良い場所」に立ち、「棚からぼた餅を享受し得る立場」になるためには、「ゴール・問題解決」を意識して、「結論・問題解決のための次のアクション」まで提案する、と言うのは重要な点である。

最初のうちはゴール設定がずれていたり、次のアクションがやや不適切だったりして注意・修正される事もあるかも知れない。しかしそう言った努力をしている事は(ブラック企業・ブラック上司ではなく見る目のあるある程度まともな上司なら)少なくとも評価はしているし、それを繰り返しているうちに的を得た提案への精度も上がって来るだろう。そうしているうちに、「この人には雑用だけでなく、もう少し責任を与えて踏み込んだ所まで・直接顧客の問題解決に関わる所までやって貰おう」と言う運びになるだろう。勿論、そうなれば顧客の問題解決への貢献度は上がる訳で、ペイの配分も良くなるだろう。


・結論・回答を一言で返す。

質問に対して回答をずばっと返す人、報告の際に結論を先に返す人は一緒に仕事をしやすい。
株の銘柄推奨なら、先ず買いなのか売りなのか。一般事務等の仕事でも先ず回答・結論をずばっと回答。こう言う人と仕事をしているとやはり歯切れがよくて心地よいし、安心感があるのである。

質問のポイントからずれて居る事を長々述べられては時間のロスだし、残念感が募ってしまう。面接の際の志望動機だとか、入社後なら現場で作業をしている過程で色々なドラマや脳裏をよぎった事柄が沢山あるのは分かるが、それを整理して、結論・回答を一言でアウトプットする訓練を常日頃していると良いだろう。

ごちゃごちゃした過程を結論に整理するには頭を使う必要がある。ごちゃごちゃした過程をすっきりと分かり易い一言の結論に集約するには上述の通り「ゴール・問題解決」を考えて仕事をする必要がある。こう言った所に付加価値があるのである。上司はこう言った小さな所から、「この人は採用する価値があるだろうか、一緒に働き易いだろうか」「この人はゴール・目的を考えながら頭を使って仕事をしているかどうか」「雑用以上の事を任せても自身で考えて適切に仕事をしてくれそうか」と言った点を判断しているのである。


・結論の後に理由・背景を、重要性の高い順に3点までで説明する。

また、結論の後に解説する理由や背景詳細のポイントは3点までに収める癖を付けると良い。株の推奨なら、こんな感じだ。

結論:これこれの銘柄は買い。

背景・詳細解説:
1.概要説明。これこれの銘柄はxxの分野で国内シェアx割、○○に強みを持つ会社だ。
2.現在割安である事の説明。xxの理由(業績下方修正、悪材料等)で株価が下落し、Valuation(PER、PBR、DCF等)で割安だ。
3.割安感を訂正する将来のキャタリストの説明。xxのキャタリストがあり、xヶ月位のタイムホライゾンで○割程度のアップサイドが期待出来る。

結論の確認:以上、結論の通り買い。

…と言った具合である。また、述べる順序は重要度の高い順である。

上記の例で言えば、まずは買いか売りかだ。株を買ったり売ったりしてリターンを稼ぐのがゴールであり、余計な御託は聞く暇がないのであるから、最初にこれを結論として明示するのは極めて重要である。

次に買い/売りのその銘柄がどういう企業なのかは誰でも最初に知りたいだろう。事業内容の概略を知らずにValuationが安いだのキャタリストはこれだの述べられても訳が分からない。なので事業概要の説明が解説の最初に来る。

次に、買いだと言うからには株価が安い方が魅力的でパンチがあるだろう。勿論株価やValuationが既に高いけどもっと買いだと言う場合もあるけれども、基本的には安いから買いで高いから売りで検討するのが株だ。だから次に割安感の説明。

3点目として、株価が安くても安いままの会社、株価が高くてももっと高くなる会社もあり、安ければ必ずしも買い、高ければ必ずしもショートではない。安い会社の株価が上がる契機・キャタリストが必要だ。だから3点目にキャタリスト。

まあ上記の例ならValuationとキャタリストは説明順序が逆でもいいかなとも思うし、もっと細かい事を言えば、コンサルのMECEだのクリティカルシンキングだの色々あるのだろうが、そもそもそれ以前のレベル感である人も少なくないように見受けられる。また、多くの業種では厳密に物凄くロジカルである必要まではなく、結論+説明を重要度の高い順に3点まで、と言った習慣がある程度でも(たとえ説明が厳密にはMECEやらロジカルシンキングやらに適ってはいなかったりしても)十分に「ロジカルだ」と言う評価を貰えるだろうとも思う。これは受け手の事情を考えて仕事をしているか、受け手の問題解決(=ここでは何の株を買えば/売ればいいのか)を考えた仕事をしているか、と言う事でもあろうかと思う。

なので先ずは「結論+説明を重要度の高い順に3点まで」と言ったテンプレートで報告する癖を付けると良いだろう。また、そうする事でゴールを意識して、頭を使いながら作業も出来るようになるだろう。

(*因みに株のレポートについては、1分で口頭で述べる際も上記テンプレートだし、何十ページもあるフルレポートを書く際も基本線上記テンプレートは使える。詳細のレポートを書く際は上記の各項目をより詳細に調べる・書くと言う事であり、どこまで掘り下げるかはその時の調査に使える時間、取れるポジションサイズとタイムホライゾン(小さいポジションで短いタイムホライゾンでダメなら直ぐ損切りするつもりなら詳細に調べても投入する時間・手間に対して余り得るものがないが、大きなポジションを長期でがっつり取るなら詳細に調べる価値がある)、等で加減する事になる。こう言った基本的なテンプレートを持っておくと、長いレポートを書く際もスッキリした構成のものが書ける。)


・言い訳を長々述べない。出来ない理由をぐだぐだ述べていないでどうやったら出来るか考える。本当に出来ない場合は謝罪+出来ない旨を端的に述べた上で埋め合わせ案を提示して相手に配慮する。

男女のデート等で遅刻した際に言い訳から長々述べられると気分が悪いだろう。
言い訳と自己弁護から入る人間と接していると良い気分がしないものである。
仕事でも一緒である。言い訳を述べる癖がある人は注意して言い訳を減らす・無くすようにすると良いだろう。
これも、「結論から端的に述べる」の変形であるが、重要な点だろうと思う。

遅刻した場合は先ずは「すいません、遅刻しました」と謝罪から述べて、必要があれば理由なり今後の改善策なりを述べる。

何か仕事をアサインされた場合に出来ない理由を長々考えて延々述べるのはよして、先ずやってみる、引き受けてみるのが大事だろう。顧客に貢献して対価を頂く、結果を出す事がゴールなのであり、上司は出来ない理由など長々聞きたくはない。特に若手だとこう言った態度で先ず周囲に好感を持って貰う事は重要である。

残業等を依頼されて既に用事が入っている場合はもじもじしていないで「申し訳ないですが先約があります」とずばっと述べる。知識・技術面・時間の制約上本当に出来ないなら「申し訳ないですが出来ません」と、謝罪+出来ない事の表明、をずばっと述べると良いだろう。

その上で、「明日なら出来ます」「この人に聞けば分かると思います」「この位調べる時間があれば出来ます」「この位の負荷・完成度で妥協すれば時間内に出来ます」と言った「埋め合わせ」を示す事で相手に配慮を示す。こうすれば、トゲトゲしくならずに円滑に職場も回るだろう。

ここで若手が良くあるのが、以下である。

1.無茶な事も「出来ない」と言えずに断りきれずに安請け合いして結局延々時間をかけた挙句にやっぱり出来なくて皆に迷惑がかかったり、あるいは面倒な仕事のゴミ箱化していじめ等に遭ってしまうケース。

2.やれば出来そうな事なのに「出来ません」と拒否だけしておしまいで、「謝罪」「埋め合わせ」を提示しないケース。

上記はどちらでも良くない。

1だと信用を失う。本人は良い人だから断れないんであって自分は悪くない等と思っていたりするが、周囲からすると迷惑である。自身の能力を冷静に把握出来ていないと言う事でもある。また、無茶な依頼を断れない人・こう言う所で意思が弱い人は、得てしていじめ等のターゲットにもなってしまい易く不幸でもある。こう言う人は、上手い断り方を学ぶと良いだろう。ブラック企業・ブラック上司でなければと言う注釈はつけないといけないが、「”出来ない”の判断に妥当感があり」「埋め合わせを提示するなど配慮が感じられる」のであれば大概の場合は問題にならない場合が多いだろうと思う。

2だと仕事を貰えなくなる。あるいは本当にただの雑用しかアサインされなくなる。それと同時に社内の人間関係が上手く行かなくなる可能性がある。若手が仕事を貰えない、成長に繋がるような仕事を貰えなくなると言うのは生命線を断たれるも同然である。ブラック企業・ブラック上司でない限りにおいてではあるが、通常の場合は「上司の視点からするとこの位の仕事はこの人に出来そうだ」と思って仕事を振っているものである。こう言った類いの人は、短絡的に断らないで「まずはやってみる」、「本当に出来そうにない場合も簡単な謝罪の言葉を述べた上で、埋め合わせを提示して配慮を示す」と言う事を意識してみると良いだろう。

こう言う事をやれる人とは仕事がやりやすい。上司からの評価も高くなるだろう。また、本人も円滑な人間関係の中で適切な難易度の仕事を貰い易くなり、成長し易いだろう。

…他にも勿論、優秀な若手の要素と言うのは沢山あると思うが、今回はこんな感じで。上記はいずれも、「手持ちに何のスキル・資格・知識・英語等の語学力等もなくても、Day 1から今すぐ意識さえすればやれる事柄」である。そう言った意味で新卒や第二新卒位の若手のかた等が、円滑なキャリア序盤戦を過ごす基盤を確立しようとする際に意識すると良い点だと思われる。多少なりとも参考になれば幸いである。

因みに、所々に「ブラック企業・ブラック上司でなければ」と言う注釈が付いているが、これはこう言う所に当たってしまうと幾ら若手が適切に行動しても無駄なのでそのように注釈している。この点については、上記はあくまで「一定レベルを満たしたまともな職場・上司」における若手の心得であり、ブラック企業・上司に当たらないように頑張ってください、当たってしまった場合は幾ら頑張っても多分報われないと思うので頑張って良い場所を先ずは見つけてください、と言う事になる。